• Top
  • Column
  • YOSHIKIの豊かな感性が生み出す至極のワイン、再び。

杉本 多恵

日本在住/ライター

ワインや料理、アートや茶道など、幅広いジャンルで編集、執筆。JSA公認ワインエキスパート、SSI公認唎酒師。イタリア好きが高じて、イタリアでホームステイをしながらイタリア家庭料理を学び、料理教室も主宰。スパークリングワインが大好き。

2019.09.09
column

YOSHIKIの豊かな感性が生み出す至極のワイン、再び。

X-JAPANのYOSHIKIが、自身のプロデュースワイン「Y by Yoshiki」のリリースに合わせ、新商品発表会に登場。すでに売り切れのショップが続出するほどの人気ワインについて、同席したワイン醸造家ロブ・モンダヴィJr.とのYOSHIKIが交わしたトークの様子をお伝えしよう。

  • facebook
  • twitter
  • line

かつてレオナルド・ダ・ヴィンチがそうだったように、優れたアーティストは多彩な才能を多方面で発揮する。音楽の分野では世界中で称賛を浴びるX-JAPANのYOSHIKIもまたそのひとりだろう。11年前からワイン造りに取り組み、2009年にYOSHIKIプロデュースの「Y by Yoshiki」を初リリース。その第3弾19年版新作の発表会が発売当日の8月9日、YOSHIKI本人と醸造担当のロブ・モンダヴィJr.が登壇して行なわれた。

YOSHIKIプロデュースのワイン、11年の経緯

YOSHIKIがワイン造りに取り組んでいることを、すでにご存知の方も多いだろうが、今年リリースのワインを紹介する前に、これまでの経緯を振り返ってみよう。
1990年代、YOSHIKIはロサンゼルスに拠点を移すと、カリフォルニアワインに惹かれていった。最初はワインのことをまったく知らなかったというが、ナパ、とくにオークヴィルのスクリーミング・イーグルやハーラン・エステートなどを飲む友人に囲まれていたこと、また世界中のワインを飲む機会が多かったことなどが後押しをしたのか、YOSHIKIがワインの世界に引き込まれていったのは自然の流れだったのかもしれない。

YOSHIKIはワイン輸入会社マイケル・クーの紹介で、カリフォルニアワインの父と呼ばれるロバート・モンダヴィの一族、マイケル・モンダヴィ・ファミリーと出会う。ナパ・ヴァレー、オークヴィルに本拠地を置くワインの名門一族だ。そして11年前、ロバート・モンダヴィの孫、ロブ・モンダヴィJr.をパートナーにワイン造りに取り組み始めた。
ワイン醸造はロブが担当し、YOSHIKIはロブとともに多くの原酒をテイスティングしてブレンディングを決定する。彼は曲を作るとき、頭のなかで聞こえる旋律を五線譜に落とし込んでいくそうだが、ワインも同様。頭のなかに描くワインのハーモニーをブレンディングしながらYOSHIKIのワインに仕上げていく。

そうして誕生した「Y by Yoshiki」は09年に初リリースされた。シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨンともに2008ヴィンテージ。彼の好みの味わいやフレーバーを投影したワインに仕上がった。

第2弾はそれから7年ののち。ナパ・ヴァレーのブドウだけで造るプレミアムワインで、シャルドネは2012年、カベルネ・ソーヴィニヨンは2011年ヴィンテージ。発売から1年後には完売という快挙を遂げた。

このことがきっかけで、YOSHIKIはもっと多くの人に、気軽でカジュアル、リラックスして飲んでほしいと、18年には「スマートカジュアル・ワイン」とうたい、第3弾として「Y by Yoshiki California」をリリースした。シャルドネ2017が1万5000本、カベルネ・ソーヴィニヨン2016が3万本。これも気づけば、本人の手元にすら1本も残っていないという状況だった。そして同じ年の年末、YOSHIKIが「最高傑作」と自負する10th Anniversary Special Edition「Y by Yoshiki Oakville Napa Valley 2016」もリリースされた。

“アンコール”は、第3弾の2019年版

さて、今年のリリースはといえば、第4弾ではなく第3弾スマートカジュアルスタイルの19年版。第3弾のワインがあっという間に完売したことで、今年は白赤あわせて、昨年の倍の約10万本を発売。白は第3弾と同じ2017ヴィンテージを2つ目のブレンドとして発売するので、その名も‟アンコール”。いかにもアーティストらしいネーミングだ。また赤も2017年ヴィンテージが発売となった。
発表会で登壇したふたりは、ブドウ畑やワイナリーでの彼らの様子がスクリーンに映し出されるなか、こんなトークで19年版を紹介した。

YOSHIKI(以下、Y):前回売り切れたものについては、10年間やってきて自信はありました。今回もまた、超高級ではないラインですが、この値段でこれほどスムーズなワインが作れたことに自分でも感動しています。
ロブ(以下、R):このワインをワクワクしながら作ったので、今日のリリースを迎えられて本当にうれしいです。17年ヴィンテージは素晴らしい年だった。シャルドネも素晴らしい出来だったので、再度セカンドブレンドを作ることができました。いずれもカリフォルニアの太陽を浴びた完熟ブドウを使って、とてもバランスのいいワインに仕上がっています。それに、カリフォルニアのワイン造りはいろいろな意見に対してつねにオープンマインドな土壌があります。だから世界各国の優れたワインをテイスティングしてきたYOSHIKIのアイディアやイメージが、この「Y by Yoshiki」をクリエイトするうえでとても重要でした。個人的には、赤ワインの方が好きで、赤をよく飲んでいますよ。
Y:赤ワインにはポリフェノールがたくさん入っているからアンチエイジングにもいいしね。
R:僕のファミリーはそのおかげで長生きだね(笑)。スマートカジュアルというだけに、どこでもどんなシーンでも気軽に飲めるようなタイプに仕上がっています。11年間一緒にワインを造ってきて、スムーズネス&ハーモニーをとても大切にしてきました。しかし、これだけでは真のバランスの取れたワインとは言えません。テンション、一本筋の通ったものがないと本当の意味でバランスのとれたワインとは言えないと思います。デリケートなフレーバーとパワフルなフレーバーがあれば、お料理もデリケートなものからパワフルなものまで、あるいはアロマティックからスパイシーのお料理までいろいろ合うと思います。シャルドネは、フレッシュ感にあふれ、アロマティック。リンゴなどの果実のフレーバー。そして酸味、樽発酵熟成からくるオーク樽の風味。バランスがとてもよくとれている、とてもハーモニーが整ったワインです。僕はこれを「スマートカジュアルなモンラッシェ」と呼んでいます。これだけバランスのとれたワインだと、合わせられるお料理のジャンルがどんどん広がっていきます。軽くソテーやグリルをした魚、軽めのソースでいただく鴨などにもいいですね。きりっとした酸がタンパク質をカットしてくれる印象もあります。
Y:お寿司屋さんに持ち込んでもいいですよね。お造りにもよく合いますし。カベルネ・ソーヴィニヨンはお肉料理はもちろん、基本的になんでも大丈夫だと思います。赤も白もとてもスムーズなので、ロブが言った通り、食は選ばないと思います。

Y by Yoshiki Chardonnay “Encore” California 2017
品種:シャルドネ100%
アルコール度数:13.5%
醸造熟成:100%樽発酵、MLF、シュール・リー、フレンチオーク樽で9カ月熟成
青リンゴなどのフレッシュな香りとパイナップルなどのトロピカルな香りに、
ブラウンシュガーなど甘く香ばしい香りも加わりとても複雑。
酸味と果実のバランスがよく、樽のニュアンスが印象的でとてもふくよかで力強い。5,724円。

Y by Yoshiki Cabernet Sauvignon California 2017
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン100%
アルコール度数:13.5%
醸造・熟成:ステンレスタンク発酵、フレンチオーク樽(新樽45%)で12カ月熟成
赤から黒系果実に加え、ココアやバニラ、スパイスなど、凝縮感があり複雑な香り。
とてもなめらかな飲み口で、フルボディながらとてもフレッシュな印象。
5,940円(ワインの輸入元/ワイン・イン・スタイル)。

今冬も上級レンジを発売、素直に「おいしい」と言われるワインを造りたい

発表会冒頭、YOSHIKIの口から、前夜に開催された食事会のことが話題に上がった。その食事会ではレストランオーナーをはじめワイン業界関係者がゲストとして招かれ、Y by Yoshikiのワインが振る舞われたそうだ。
「とても評判がよく、3000ドルでもいいんじゃないかとおっしゃった方もいて、とても光栄に思いました」とYOSHIKI。そのワインとは「Y by Yoshiki Cabernet Sauvignon Oakville Napa Valley 2017」。3000ドルのワインといえば、同じオークヴィルで造られる有名ワイン、ストリーミング・イーグルやハーランに匹敵する値段だ。今回の発表会では、そのオークヴィルのワインが今冬発売するという告知もあった。
「Y by Yoshiki Cabernet Sauvignon Oakville Napa Valley 2017」はスマートカジュアルとは一線を画す上級クラスのワインである。
「このワインを造るのはとてもむずしかった。なぜならこのために素晴らしいブドウを見つけることが重要だったから」とロブは説明した。「2017年はナパで大きな山火事があり、カリフォルニアにとっては非常にハードで特別な年。火事後に収穫されたブドウはダメージが大きく、火事の後と前ではワインのクオリティにとても大きな違いがある。それだけに、この土地の自然のすばらしさをより実感できたのも事実。これはその自然を表現したいと思って造ったワインで、特別感が大きい」とも。
詳細は発表されたなかったが、2017ヴィンテージの生産量は4樽、約1200本弱。「僕たちふたりなら、あっという間に飲んでしまう量だ(笑)」とYOSHIKIが言うほどの量。希少なワインになることは間違いない。

最後にふたりはこれからの方向性や抱負を語ってくれた。

Y:僕は「どんなワインがいいワインだと思いますか?」と聞かれると、「女性に好まれるワインがいい」といつも答えます。女性は素直に「おいしい」とか「ヘン!」などのリアクションをしてくれうるのが僕はすごく好きで、こういう反応を指標にしています。男性は結構知識があって、蘊蓄を語る人が多いですが、それって面倒くさいじゃないですか。僕は最初、ほとんど知識なしからワインに入りましたが、いいワインを飲む友人がたくさんいたり、スクリーミング・イーグルやハーランなども年間に何十本も飲んだりしていましたから、ブラインドで言い当てるのも当然です。あとで値段を聞いてびっくりしましたが(笑)。そういう素直においしいと思うワインを造りたいと思っています。なんでもそうだと思いますが、理屈は後からついてきますよね。

R:すべてのアイテムに対し、すごい時間をかけてテイスティングを重ねます。それぞれのワインに30種類以上のブレンドを用意しテイスティング、話し合いを繰り返す。0.5パーセントの違いで味わいもアロマも変わるので、この緻密な作業に時間をかけています。ブドウは毎年違った味わいになるし、それによって選ぶ樽も変わってくる。だから毎年内容の違う作業になります。まさにアーティスティックな作業になりますが、情熱をもって、そしてYOSHIKIのアーティスティックな感性をもって、個性と情熱があふれるワイン「Y by Yoshiki」を造るチャレンジをしていきたいです。