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上田太一

日本在住/編集者・ディレクター

1982年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。番組ディレクターを経て、カフェやコミュニティスペースなど場のプロデュースに携わるgood mornings(株)に参画。2017年より知人らと共同でwelcometodoを設立。編集の視点を活かした様々な空間づくりを軸に、各種メディアで企画や執筆なども手掛ける。趣味は映画、スペイン、クラフトジン。 https://www.welcometodo.com/  instagram(@teaueda

2018.06.14
column

新たなカルチャーの芽生えを体感した 国内初のクラフトジンの祭典

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国内で初となる、クラフトジンの祭典「GINfest TOKYO 2018」が6月9日(土)〜6月10日(日)の2日間にかけて、天王洲アイル及びその周辺施設で開催された。1日目は真夏日のような快晴、2日目は生憎の雨天であったが、最高のロケーションのもと、延べ3500人近くの“ジンラバーズ”が来場し、思い思いにクラフトジンに酔いしれた。

クラフトジンとは、スモールバッチ(少量生産)で造り手の思いや個性がダイレクトに反映され、複数のボタニカルや果実で豊かな香りをまとったジンのこと。そのデザイン性の高いボトルも魅力のひとつだ。ここ10年間で、ヨーロッパを軸に世界中でクラフトジンの造り手が急増。感度の高い若者らを中心に多くのファンが惹き付けられ、すでに新たなカルチャーとして定着している。

近年では、東京都内のバーやカフェを中心に、国内でも一部のお酒好きの間でクラフトジンの存在が徐々に浸透しつつあったが、大型イベントという形式でクラフトジンがより幅広い層に向けてお披露目されるのは、今回が初めてである。


イベントは、クラフトジンを軸に「味わう、知る、繋がる」というコンセプトのもと、大きく分けてふたつの会場で開催された。

メイン会場は、天王洲Canal Sideの運河に浮かぶ船舶「T-LOTUS M」。
こちらの会場では、船内のスペースに造り手やインポーターがブースを出展。国内外から100銘柄以上のジンが集結し、来場者はすべてのジンを10cc/100円で飲み比べることができ、お気に入りが見つかれば、その場でボトルを購入することもできる。

開場するやいなや、入り口付近には長蛇の列が出現。人混みをかき分け、お目当てのブースに辿り着くにはひと苦労ではあったが、その場にいた誰もが、まだ飲んだことのない未知なるジンとの出会いに心を踊らせ、船内は終始お祭り状態であった。


中でも存在感を示していたのが、国内産のジン。海外産に遅れを取っていたが、一昨年あたりから国内でもクラフトジンの作り手が現れ始め、現在、北は北海道から南は沖縄まで、国内のクラフトジンの造り手は18社(2018年6月現在)にまで増えた。その内の11社が今回のイベントに参加。各地の特産品を活かした地域色の強いジンの味わいに、多くの来場者が感嘆の声をあげ魅了されていた。

「私たちには、長い歴史の中で培った酒造りの経験と蒸溜技術があります。ボタニカルで香り付けする前のベーススピリッツのクオリティでは海外のものに負けてない。日本のジンのポテンシャルはじつはかなり高いと思いますよ」。

とは、九州は宮崎県で170年の焼酎造りの歴史を誇る京屋酒造有限会社代表の渡邊眞一郎さん。昨年から焼酎造りで培った知見と技術を転用し、宮崎県産のユズや日向夏など9種類のボタニカルを使用したクラフトジンを開発。今回のブースでも試飲した方から大きな反響があり、さらなる自信を得たという。

イベントのもうひとつの会場は、「B&C HALL」。
こちらの会場では、同時開催であった「TENNOZ HARBOR MARKET」内にジンにフォーカスした“スペシャルバー”が登場。ユニークだったのがその仕掛け。バーカウンターの前に積まれたクラフトジンのボトルの山から、来場者が、香りやキャプションを手掛かりにお気に入りのジンを探し出し、バーテンダーのもとに持って行くと、好みのトニックウォーターと合わせて、ジントニック(1杯500円)を作ってくれるのだ。脇に並べられたボタニカルを自由に選んでアレンジすることもでき、各人各様にジンのカスタマイズを楽しんでいた。


また、全国で活躍する人気バーテンダーが1時間毎に交互に登場し、指定されたクラフトジンを使ったスペシャルカクテルを振る舞う企画も大好評であった。


来場者の平均的な年齢層は30代〜40代。中でも目立っていたのが女性の姿だ。

「ジンに、こんなにたくさんの種類があることを知らなかった。香りもボトルもどれも個性的で、宝物探しのような楽しさがありました。どれもおいしくてびっくりしました」と、今回のイベントで初めてクラフトジンを飲んだという会社員30代女性の方は、興奮を隠しきれない様子であった。


イベントの主催者で、国内でいちはやくクラフトジンを世に紹介したカフェ「グッドミールズショップ」代表の三浦武明さんは、予想以上の盛況ぶりに大きな手応えを感じたと語る。

「クラフトジンの存在を多くの人に知ってもらいたいという思いはもちろんのこと、今回のジンフェスの目的はほかにもあって、ひとつが、ジンは夜のバーやクラブで飲むイメージが強いので、そうではなくて、もっと気軽に、昼間に屋外でジンを楽しんでもらいたかったということ。そしてもうひとつが、クラフトジンを通じて、和酒と洋酒が、バーテンダーも含めて、ひとつに繋がること。これまで接点のなかった者同士がコミュニケーションを取り、情報交換することで、国内でのお酒の楽しみ方やバーカルチャーがもっと豊かになって欲しいなと。終わってみれば、見事に思い描いていた風景が広がって、本当によかったです」。

国内におけるクラフトジンの華々しい“船出”をジンラバーズが盛大に祝い、成功裏に終わることになった今回のジン・フェスティバル。これからも国内産のジンのリリースが次々と控えていることもあり、ますます活気を帯びるであろうクラフトジンの世界に今後も目が離せない。

Text:Taichi Ueda

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