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吉田恵理子

フランス在住/ライター・エッセイスト

ライター・エッセイスト。フランス、パリ在住。 HEG(美食に関する最先端研究機関)卒、WSETアドヴァンスト、SSA酒ソムリエ。著書『ランチタイムが楽しみなフランス人たち』(産業編集センター)、『ワインを飲めばすべてうまくいく 仕事から恋愛まで起こる10のいいこと』(インプレスICE新書)。

2018.07.02
column

大七酒造とル・コルドン・ブルーによる「日本酒とフランス料理のセミナー」

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フランスでも人気が高まりつつある日本酒。最近では日本料理だけでなく、フランス料理のレストランでもオンリストされることが増えてきた。ソムリエや料理人などが日本酒に興味をもつケースも多いが、まだまだ試飲の機会は少ないのが現状だ。そんな中、今年2月1日にパリのル・コルドン・ブルーで行なわれた大七酒造と共同主催のプロ向けマスター・クラスには、有名ホテルのソムリエやジャーナリストなどが参加。酒とフランス料理のマリアージュについての知識を深める貴重な機会となった。

福島県二本松市に本社を置く大七酒造は1752年の創業。「生酛造り」を頑なに貫く老舗で、現在の杜氏2名は「現代の名工」に選ばれている。同社の日本酒5種にそれぞれフランス料理の皿を合わせる趣向。担当したのは、ル・コルドン・ブルーのエグゼクティブ・シェフであり、MOF(フランス国家最優秀職人)の称号をもつエリック・ブリファールだ。大七酒造の太田英晴による日本酒の解説を交えながら、マリアージュの検証が進められた。


ブリファールによると、「日本酒は海産物のヨード感、とくにカキとの相性がよい」とのこと。コースも生ガキから始まった。当日のメニューと日本酒のラインナップは以下の通り。

1)生牡蠣 マンダリンのパール ヨードのジュレ 
真桜 生酛 純米吟醸(提供温度 12度)

2)帆立と海藻バター 野生海老とサリコルヌ
妙華闌曲 グラン・キュヴェ 生酛 純米大吟醸(提供温度 12度)

3)玉子のパルフェ アーティチョークと乾燥させた鴨 クリームと熟成コンテ
宝暦(生酛、純米大吟醸、提供温度12度)

4)キノコのブイヨン 栗とフォアグラ 砕いたカカオ豆
自然酒生酛 1992(生酛、純米、提供温度42度)

5)洋梨とプロヴァンスのドライ・イチジクのロースト パン・デピスのアイスクリームと柑橘
生酛 貴醸酒(生酛、貴醸酒、提供温度12度)



料理に使われた食材・調味料は、すべてフランス料理で多用されるもの。とくに日本を意識したメニューは一品もなかった。それにも関わらず、すべてが素晴らしくマリアージュしており、日本酒のもつヨードを受け止める力の強さ、まだバターなど乳製品とも好相性であることなど、多くの事実が確認できた。
参加者の中には42度で提供される「燗酒」を初めて体験した人もおり、「燗酒は温かい料理と合わせるものなのか?」といった質問も聞かれた。貴醸酒を初めて飲む人も多く、そのユニークな存在に「まるでソーテルヌのようだ」いった声も。また、1990年〜2010年に造られた酒をブレンドした「妙華闌曲」は熟成感とマルチヴィンテージならではの複雑味があり、豊かで上品な味わいに感嘆の声が上がった。

Text:Eriko Yoshida