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柳忠之

日本在住/ワインジャーナリスト

ワインジャーナリスト。ワイン専門誌記者を経て、1997年からフリー。専門誌のほか、ライフスタイル誌にもワイン関連の記事を寄稿する。ワイナート本誌ではおもにフランス現地取材を担当。

2018.07.18
column

ファインワイン4ブランドのワインをチーフワインメーカーと味わう

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ペルノ・リカール・ジャパンは既存ブランドの「ジェイコブス・クリーク」(オーストラリア)と「ブランコット・エステート」(ニュージーランド)に、新しく「ケンウッド・ヴィンヤーズ」(カリフォルニア)と「セント・ヒューゴ」(オーストラリア)を加え、ファインワインのポートフォリオを拡充。5月14日(月)から新規に8銘柄を発売した。

これに合わせて3名のチーフワインメーカーが来日。5月23日(水)、恵比寿の「ロウリーズ・ザ・プライムリブ 恵比寿ガーデンプレイス」でワインメーカーズ・ディナーが開催された。

「ブランコット・エステートがニュージーランド南島のマールボロに、初めてソーヴィニヨン・ブランを植えたのは1973年」と語り始めたのは、ブランコット・エステートのチーフワインメーカー、パトリック・マターマン。「その後、急速に成長し、いまでは輸出量の85パーセントをソーヴィニヨン・ブランが占めている」。

セント・ヒューゴとジェイコブス・クリークのチーフワインメーカーを兼任するダン・スウィンサーは、「セント・ヒューゴはクナワラとバロッサヴァレーにブドウ畑をもち、力強さと優雅さを備えたワイン造りが持ち味」とのこと。

ケンウッド・ヴィンヤーズから来たのはチーフワインメーカーのパット・ヘンダーソン。「ソノマ・カウンティは丘の連なる美しいワイン産地。西に太平洋、東にナパ・ヴァレーがあり、場所によって気候が大きく異なる。涼しい太平洋側でシャルドネやピノ・ノワール、温かな内陸でカベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデルを栽培している」と語った。


この日のメニューとワインのラインナップは以下のとおり。

兵庫県産フレッシュオイスターとアトランティックサーモンのスロークック
ハーブサラダ添え
×
ジェイコブス・クリーク スタインガーテン バロッサ リースリング 2017
ブランコット・エステート レター・シリーズ B マールボロ ソーヴィニヨン・ブラン 2017

”なつみ”オレンジとブラータチーズ、プロシュートのカプレーゼ仕立て
×
ブランコット・エステート チョーズン・ロウ マールボロ ソーヴィニヨン・ブラン 2013
ケンウッド・ヴィンヤーズ シックス・リッジズ ロシアン・リバー・ヴァレー シャルドネ 2016

フォワグラのラビオリ
鴨肉とアスパラ、マッシュルームの軽いラグー
×
ブランコット・エステート レター・シリーズ T マールボロ ピノ・ノワール 2016
ケンウッド・ヴィンヤーズ ジャック・ロンドン ソノマ・マウンテン ジンファンデル 2013

ローストプライムリブ “TOKYO”カット
マッシュドポテト&ミックスソテードマッシュルーム
×
ケンウッド・ヴィンヤーズ ジャック・ロンドン ソノマ・マウンテン カベルネ・ソーヴィニヨン 2014
セント・ヒューゴ バロッサ シラーズ 2015

ダークチョコレートのムース
Mixベリーのソースとヘーゼルナッツのプラリネ
×
セント・ヒューゴ 1970 トーニィ

まず印象に残ったワインは、ジェイコブス・クリークの「スタインガーテン バロッサ リースリング 2017」。バロッサとあるが、実際には同地区の中でも涼しいイーデン・ヴァレー産。「石の庭」の名前のごとく岩だらけの土地で、62年にダイナマイトで崩して畑にした。現在はこの畑のみではなく、イーデン・ヴァレーから良質のブドウを集めて醸造。柑橘系の爽やかなアロマをもち、シャープな酸味を備えたボーンドライのリースリングに仕上がっている。

このワインと合わせたのは「兵庫県産フレッシュオイスター」、つまり生ガキだ。カキのヨード香とワインのミネラル感がぴったりマッチ。生ガキが1ダースであっても、このワインが1本あれば、ぺろりとたいらげてしまうだろう。


もうひとつ挙げるならケンウッド・ヴィンヤーズの「ジャック・ロンドン ソノマ・マウンテン カベルネ・ソーヴィニヨン 2014」。作家のジャック・ロンドンが愛したソノマ・マウンテンの牧場にあるブドウ畑産。標高730メートルのソノマ・マウンテンは太平洋に近くても霧がかからず、特殊なミクロクリマを形成する。水はけのよい火山灰土壌の影響も加わり、力強くエレガントなカベルネ・ソーヴィニヨンが生み出される。口当たりはしなやかだが、骨格はしっかり。凝縮した黒系果実の中にほのかに香るミント香がフレッシュ感を誘う。

そのお相手はローリーズ名物の「ローストプライムリブ」。柔らかな肉質としなやかなワインのテクスチャー。咀嚼するたび肉のうま味が浸み出し、キメ細かなタンニンと絡み合う、絶妙なマリアージュであった。

Text:Tadayuki Yanagi