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塚本悦子

日本在住/ワインライター・コーディネーター

ワインライター・コーディネーター。ワインスクール講師を経て、現在はフリー。ワイナート本誌では8号より執筆。産業能率大学通信講座「ワイン資格受験コース」監修。著書に「30日間ワイン完全マスター」(美術出版社)など。

2018.07.23
column

Roccia d’Oro 神楽坂によるイベント”島根食材で彩るサルデーニャ島の伝統料理”

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神楽坂の坂の途中、スタイリッシュなビルの3階に、2015年12月オープンしたRoccia d’Oro 神楽坂。コンセプトは、シェフ金川琢磨の故郷、島根から直送される本物食材をまっすぐに表現した、ここでしか味わえない「島根イタリアン」だそう。
失礼ながら、少々地味なイメージを抱きがちな山陰の島根県……。しかし、白イカ、松葉ガニ、ノドグロ、アジなど豊富な魚介類、宍道湖の大粒シジミ、石見銀山和牛・銀山赤どり・石見ポークなどの肉類、こだわり生産者が作る有機島根野菜など、素晴らしい食材の宝庫なのだ。
そんな島根食材を知り尽くしたシェフ金川がこの日のために特別につくるサルデーニャ伝統料理を、サルデーニャワインとともに味わおう、という魅力的なイベントが、6月末に開催。9月5日発売号「ワイナート」が奇しくもサルデーニャ特集ということで、こちらのイベントにお邪魔した。

左:マネージャーの岩崎絢太郎、中央:金川琢磨、右:ワイン輸入元の原田大輔

暑い日差しが照りつけたイベント当日、まず最初に喉を潤してくれたのは、サルデーニャの地場品種トルバートのスプマンテ! ほのかな甘さと酸のバランスがとれ、軽やかで清々しい素直な味わい。後味のほろ苦みが、アミューズに供されたマクワウリや2種の大根など、農家直送の新鮮野菜に心地よく馴染む。添えてあるバーニャカウダソースには、サルデーニャを意識して、ペコリーノチーズを使用。サルデーニャ伝統の薄焼きパン、パーネ・カラザウのミニサイズも、もちろん自家製だ。

前菜は「どんちっち鯵のクルード セロリとピスタチオ、サルデーニャ産カラスミのサラダ仕立て」。”どんちっち鯵”とは、島根県西部浜田港で水揚げされる脂の乗ったアジのブランド名で、脂の含有量が規定以上でないと名乗れないとか!
合わせたワインは、トルバートの白ワイン。脂が乗ってまろやかなアジやカラスミの後味のほろ苦みと、柔和で優しいトルバートの風味が融和し、安心感あるバランス。ワインの産地は、サルデーニャ北西部海沿いの小洒落た街アルゲーロの周辺。トルバートはこのエリアのみの地場品種で、現地でも魚介類や野菜とともに楽しまれている。

プリモには、サルデーニャ伝統のパスタと島根食材のコラボ料理がふた皿登場!
米粒型パスタのフレーグラは、宍道湖産の大粒シジミとアゴだし汁で。シジミとアゴの強烈なうま味をたっぷり吸ったフレーグラは、絶品! アサリのフレーグラは現地で食べたことがあるけれど、日本ならではの食材でもこんなにおいしくなるなんて。目から鱗のひと皿で、お代わりが欲しいくらいだったなあ。
ワインは、鉱物感とほのかな塩味を感じる、すっきりとしたヴェルメンティーノの白ワイン。

ふた皿目は、ニョッキ型の小さい手打ちパスタ、マッロレッドゥス。石見ポークのサルシッチャと、ウイキョウの甘苦みやサフランの香りが効いたエキゾチックなソースのパスタには、オリエンタルなニュアンスをもつボヴァーレのミディアムボディ赤ワインが、ばっちりはまる。

そしてメインの「出雲鹿の炭火ロースト サルタナレーズンと松の実のアグロドルチェ ミルトの香り」。ワインは、地場品種カリニャーノの聖地として有名な南西部スルチスより、凝縮感たっぷりの「シャルダーナ 2009」。カリニャーノ85%、シラー15%のブレンドで、ステンレスタンク発酵、フレンチオーク樽熟成12カ月。料理のソースに使ったサルデーニャのリキュールワイン、ミルトの甘やかさと、果実味やスパイシーさが融合したワインの熟成感とのバランスがじつに見事なペアリングだった。

最後のデザートは、もちろんサルデーニャ伝統菓子の「セアダス」。小麦粉とセモリナ粉の生地にペコリーノチーズを詰めて揚げたもので、仕上げには島根県産カルダモンのハチミツを。マルヴァジアから造られる華やかで繊細な甘口ワインとともに、サルデーニャ気分の余韻に浸った。

まだまだあまり知られていないサルデーニャの伝統料理、島根食材の奥深さ、そしてサルデーニャワインの多様性。しかし、今回のイベントでは、シェフとインポーターのコラボによって、それらを充分に満喫できた。これを機に、サルデーニャの魅力をもっと感じてほしいなあ。

今回ペアリングに供されたサルデーニャワインは、ワインショップ・ヌラーゲのネットショップでも購入可能。この夏は、地中海に浮かぶサルデーニャ島を思い浮かべながら、サルデーニャワインを楽しんでみてはいかが?

<今回の料理とペアリングワイン>

バーニャカウダ&パーネ・カラザウ
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Spumante Brut “Centogemme”/Poderi Parpinello

どんちっち鯵のクルード セロリとピスタチオ、サルデーニャ産カラスミのサラダ仕立て
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Algero Torbato 2016/Poderi Parpinello

宍道湖産大粒シジミとアゴ出汁のフレーグラ
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Vermentino di Sardegna 2016/Poderi Parpinello

サフラン香るマッロレッツドゥス 石見ポークのサルシッチャとウイキョウのビアンコ
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Isola dei Nuraghi “Bovale“ 2015/Cantina Melis

出雲鹿の炭火ロースト サルタナレーズンと松の実のアグロドルチェ ミルトの香り
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Valli di Porto Pino “Shardana“ 2009/Cantina Santadi

セアダス
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Malvasia di Bosa “Alvarega“ 2015/Cantina Giovanni Battista Columbu

Text:Etsuko Tsukamoto