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谷宏美

日本在住/フリーランス ライター

エディター/ライター、ワインバー「ローディ」ソムリエール。ファッション誌の美容エディターを経て、2017年よりフリーに。店の仕入れや現場でのサービスをやりつつ、ワイン&ビューティの分野で取材・執筆を行なう。J.S.A.認定ワインエキスパート。

2018.08.07
column

難課題の決勝に5名が挑んだ、ボルドーワインのソムリエコンクール

「ボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン ソムリエコンクール 2018」取材リポート

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第2回ボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン ソムリエコンクールの決勝が、2018年7月24日(火)、フランス大使館 大使公邸にて開催され、予選を勝ち抜いたファイナリスト5名が出場。ボルドー&ボルドー・シュペリュールワインに関してのプレゼンテーション力やテイスティング能力、サービス、また提案力を競い、「オーベックファン神戸」の塚元 晃さん(写真中央)がボルドー&ボルドー・シュペリュールワインのオフィシャルアンバサダーの座を勝ち取った。

ファイナリストは以下の5名(出場順)。
千々和 芳朗さん(筥崎宮 迎賓館)
塚元 晃さん(オーベックファン神戸)
紫貴 あきさん(アカデミー・デュ・ヴァン)
佐々木 健太さん(L’AS)
中島 一希さん(アピシウス)

以下のタフな課題に取り組んだ。
■課題1
ボルドー&ボルドー・シュペリュールワインのオフィシャルアンバサダーとして、消費者向けのセミナーをどのような内容で開催するか、日本語でプレゼンしてください。
時間/4分

■課題2
4種類の赤ワインについて、品種とヴィンテージ、ワインのディテールに関してできる限りコメントしてください。
時間/3分

■課題3
ボルドーにあるワインミュージアムについて説明してください。
時間/2分

■課題4
ボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン委員会主催の30名の和食のディナーをコーディネートするように依頼されました。ゲストを楽しませるようなアイデアも入れ、できる限り多くのAOCを紹介できるよう、銘柄・生産者など詳細に提案してください。
時間/3分

■課題5
満席のレストランで、ボトルワインをオーダーし待っているゲストに対し、デキャンタージュをしてサービスしてください。グラスはセットしてあります。
時間/3分

出題及び審査委員長を務めたのは、一般社団法人日本ソムリエ協会(以下JSA)常務理事・技術研究部長 森 覚さん。さらに、JSA副会長の石田 博さん、JSA協会理事の佐藤陽一さん、JSA執行役員の岩田 渉さん、同じく執行役員で第1回優勝者の井黒 卓さんと、審査員も錚々たる顔ぶれ。

課題ごとに各選手のパフォーマンスを振り返ってみたい。

■課題1  プレゼンテーション
事前準備ができた唯一の課題。作成したパワーポイントの資料を操作しながら熱弁を振るう。ボルドー&ボルドー・シュペリュールワインの市場と消費動向を分析し、そこからどの層に向けてセミナーを開始するか、がポイント。
「ボルドーの逆襲」と題し、ボルドーワイン離れに待ったをかける狙いの塚元さんや、財布の紐を握る全国の家庭の主婦にターゲットとする佐々木さん、外観が美しく食事に合わせやすいロゼをプロモーションするという中島さんなど、各自ユニークな内容を披露。なかでも、クレマン・ド・ボルドーでの乾杯に始まり、座学とスタンドテイスティングを織り交ぜ、修了証まで発行するという、紫貴さんの具体的な提案が圧巻。ワインスクール講師として培ったハイレベルのプレゼンテーション力は説得力があった。

■課題2  ブラインドテイスティングとフラッシュコメント
用意されたのは2010年のやや熟成感のあるものやビオディナミのもの、複数のユニークな品種のブレンドなど、それぞれユニークネス、つまり語りどころがあるワイン。ルックスや品種の比率を詳細に説明するのではなく、そのワインの特徴と背景を端的に伝えることが求められたが、これらに言及した選手は少なかった。ワインの本質を捉え、ポイントのみを語るフラッシュコメントというスタイルは、今後もコンクールのテイスティングの主流となってくるだろう。

■課題3 シテ・デュ・ヴァンの説明
2016年にボルドー市郊外に設立された、ワインの博物館「シテ・デュ・ヴァン」について自由に答える課題。
千々和さんと塚元さんは「2016年6月1日」と正確な設立年月日まで含め、詳細に口述。だが「そこまでどうやって行くか」の質問に答えられた選手はゼロ。森審査委員長は総評で「公共の交通機関であるトラムや水上バスを案内するホスピタリティがほしい」と語った。

■課題4  和食ディナーのワインコーディネート
課題が読み上げられ、選手にメニューが手渡される。そこには、漢字テストかのような食材と料理名の羅列。「蓴菜(じゅんさい)」「唐柿(トマト)」など洋食の現場で仕事をする選手にとっては見慣れない食材も。また強肴の「黒毛和牛の焼きしゃぶ」は、メインの扱いだけに各選手濃厚なタイプの赤ワインを合わせていたが、よく見ると「柑橘おろしだれ」の記載。つまり牛肉を柑橘の風味でさっぱりと食べさせる趣向の主菜なので、必ずしもフルボディの赤ワインである必要はないという引っ掛けメニュー。
これらを瞬時に頭に入れ、具体的なワイン名を提案していくのは至難の技だ。千々和さんと塚元さんは、献立の味わいとともに具体的なアイテムのペアリングを提案、ボルドーならではのアペラシオンであるクレレも織り込み、健闘を見せた。

■課題5  サービス実技
シーンとしてもスピードが重要なことは承知の各選手。ホストにボトルを見せ、急いでボトルをオープンしようとすると不意にゲスト役の特別審査員ジェニファー・ジュリアンさんから「ボルドーの赤ワインは、私にはちょっと重たいように思うんだけれど」と英語で話しかけられ、対応を余儀なくされる。聞き取れなかったのかあえて答えない選手も。続いてホスト役のジョナタン・デュクールさんから「このワインに合う和食のメニューは?」と英語で質問が。
本コンクールはこの課題に至るまですべて「日本語で答えよ」との指示があったが、ここではその指示はない。しかし日本語で答えなければいけないものと、英語での質問に対してあえて日本語で答えた選手もいた。佐々木さんは「重たいと感じるならば少し冷やしてお持ちしましょう、印象が変わってくると思います」「このワインには、カツオなどの魚にバルサミコソースなどが合います」と返し、5名の中でただひとり、グラスにワインをサーブすることに成功した。

優勝した塚元さんは、「メニュー提案やサービスの課題では、思うようなパフォーマンスができたとは言いがたい。ボルドーの研修に行かせてもらい、よりレベルの高いアウトプットを目指してこれから一層研鑽を重ねる」とコメント。特別審査員としても参加した、本コンクール主催団体ボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン生産者組合代表のジョナタン・デュクールさんは、「ファイナリストのみなさんが私たちのワインの多様性を表現し、有意義な提案をしてくれたことに感謝したい」と述べた。

Text:Hiromi Tani

レセプションではデュクール氏のワインもふるまわれた