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吉田恵理子

フランス在住/ライター・エッセイスト

ライター・エッセイスト。フランス、パリ在住。 HEG(美食に関する最先端研究機関)卒、WSETアドヴァンスト、SSA酒ソムリエ。著書『ランチタイムが楽しみなフランス人たち』(産業編集センター)、『ワインを飲めばすべてうまくいく 仕事から恋愛まで起こる10のいいこと』(インプレスICE新書)。

2018.09.21
column

ブルーのワインはフランスに受け入れられるのか?

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私の知る限り、フランスは食に関して非常に保守的な国である。

もちろん好奇心旺盛な若者や、フーディーと呼ばれる食マニアが新しいものを探し求め、それをSNSにアップするのは他国と同様。しかし、基本的には保守的であまり変わったものを食べない。とくに家族の集まりなどでは、ローストチキンやコート・ド・ブッフなど、いわゆる昔ながらの家庭料理を好んで食べる。

当然のように、ワインに関しても保守的である。よほどの勉強好き、またはワイン関係者以外はフランスワインしか飲まない(外国の良いワインが手に入りにくいという事情もあるが)。赤、白、スパークリングが基本で、大人気のロゼすら未だに若干地位は低い。

そんななか、今年のバカンス期間中に、鮮やかなブルーが特徴的なワイン “Vindigo(ヴァンディゴ)”の販売が始まった。手がけているのはラングドック・ルーションにある販売業者。代表者のルネ・ル=バイユが7月26日に放送された地元ラジオ局 France Bleu Heraultの番組でインタビューに応えた。

“Vindigo(ヴァンディゴ)”は、スペイン アンダルシア地方にあるワインメーカーの商品。よって、フランスワインではなくスペインワインである。品種はシャルドネ。まず白ワインを作った後に黒ブドウの果皮を使って長時間醸すことでアントシアニンが抽出され、真っ青な色が生まれる(“第2醸し”と称されている)。

これまでにも2016年から販売されているスペイン カタルーニャ地方産の“Gik”というブルーのワインが輸入販売されたが、このワインには食用着色料などが使われていたため、フランスの法的にはワインとは認められず、さらにラベルがワインであるように見えて問題があるとのことで販売は一時中止された。一方、“Vindigo(ヴァンディゴ)”は着色料は一切使用していない100%天然素材で、そこが売りにもなっている。

販売会社では今回35000本を仕入れ、1本12ユーロで販売するという。代表のル=バイユが語ったところによると、「チェリー、ブラックベリー、パッションフルーツの味わいで非常にフルーティ。アルコールは(11%と)弱め。女性の好きな味」とのこと。

しかし、仏パリジャン誌の記事ではベテランのワインショップ店主が「プロの意見として、このワインは商業的に成功しないし、お客様にわざわざ勧めるものではない」と語っていたり、また天然とはいえ着色に疑問を投げる声もあり、『20 minutes』誌で質問された匿名のワインメーカーは「技術的には可能だが、フランスで販売するには法的に問題があるのでは?」と答えるなど、すでに物議をかもしている。

リゾートの美しい海や空を思わせる美しいブルーのワイン。ただの物珍しさと批判で終わるのか、新たなトレンドとなり得るのか。

Vindigo
https://www.facebook.com/vindigomediterraneen/

Photo : Vindigo Facebook
Text : Eriko Yoshida