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谷宏美

日本在住/フリーランス ライター

エディター/ライター、ワインバー「ローディ」ソムリエール。ファッション誌の美容エディターを経て、2017年よりフリーに。店の仕入れや現場でのサービスをやりつつ、ワイン&ビューティの分野で取材・執筆を行なう。J.S.A.認定ワインエキスパート。

2018.12.20
column

サステイナビリティとペアリング「グランドテイスティング 2018」に見るカリフォルニアワインの新たな展望

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2018年10月29日(月)、カリフォルニアワイン協会日本事務局が主催する「カリフォルニアワイン・グランドテイスティング」が開催され、業界関係者向けの試飲会のほかセミナーやディナーが催された。

WSET Diploma取得者でジャンシス・ロビンソンの記事翻訳などを手がける小原陽子さんを講師に迎えたセミナーテーマは「カベルネ・ソーヴィニヨンを通じて知るカリフォルニアワインのサステイナビリティ」。

アメリカ合衆国最大の農業地域であるカリフォルニアではワイン産業の成熟と同時に、限られたリソースを有効活用し、環境や社会的視点で持続可能な事業を推進する必要に迫られた。この動きは急速に推進され、現在カリフォルニアではさまざまなプログラムに基づいてサステイナブルなワイングローイングが実践されている。

カリフォルニアワイン協会では、「環境に優しい」「経済的に実現可能」「社会的に公正」の3点をクリアし、かつ持続可能な活動をサステイナブルなワイン造りと定義づけている。その指針となるのが、同協会とブドウ栽培者組合とのアライアンスが定めた『ザ・コード(California Code of Sustainable Winegrowing)』と呼ばれる農法規約だ。これには140もの栽培技術と104の醸造方法が紹介されているほか、ビジネス戦略に時始まり土壌や水、害虫・害獣、生態系の管理、化学物質や廃棄物、エネルギーや人材活用などに関して、409ページにわたってこと細かに記されている。

たとえば、「バランスのとれたブドウの樹のためのチェックポイント」として以下の4項目をはじめとした多くの規定を定め、ブドウ樹の健全な生育を促す。

・新梢の成長はヴェレゾン時にほとんどないこと
・新梢の長さは36〜54インチ
・北部では50%以上、セントラル・ヴァレーでは20〜40%の果実が外から見えること。ただし最も暑い時間帯である15:00〜16:00の間は長時間直射日光にさらされないこと
・空気や日光を通すため樹冠には20〜40%の隙間があること

達成と管理の度合いによって、各項目にカテゴリー1~4までの自己評価シートがあり、2以上がサステイナブルな運営をしているとみなされる。認証を受けるには85%以上がカテゴリー2以上である必要がある。

この活動を通して、カリフォルニアでは2017年時点でサステイナブル認証を受けるワイナリー数は20%増の127軒、認証を受けた畑数は46%増の1099に上る。ナパやローダイ、ソノマなどではローカルでの動きも活発で、ローダイのプログラムには海外からの参加があるなど、カリフォルニアにおけるサステイナビリティの取り組みは国際的にも高い評価を得ている。

サステイナブル認証のロゴとしては、「カリフォルニア・サステイナブル・ワイングローイング(CSW)」「ナパ・グリーン(ワイナリー、土地の2種類)」「サステイナブリー・ソノマ・カウンティ」「ローダイ・ルールズ」「フィッシュ・フレンドリー・ファーミング」「シップ・サーティファイド」など多数。ワインを探すときのヒントになるだろう。

セミナーでは、このほかカバークロップやコンポスト、益虫や益獣、灌がいやドライファーミング、リサイクル&リユースといったキーワードごとにその意味を解説。いずれも昨今耳にすることの多いワードだが、ワイナリーにおける具体的な事例を挙げることで、それらがなぜ必要か、どういった意味をもつのかが腑に落ちた受講者も多かったと思われる。

最後に、サステイナブルな取り組みを行なう代表的なワイナリーのカベルネ・ソーヴィニヨン6アイテムを試飲した。

1:カベルネ・ソーヴィニヨン 2014
/ランゲ・ツインズ (ローダイ地区)
2:チャールズ・ウェットモア カベルネ・ソーヴィニヨン 2015
/ウェンテ(リヴァーモア地区)
3:カベルネ・ソーヴィニヨン・ハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラ 2013
/スターレーン・ヴィンヤード (サンタ・バーバラ地区)
4:ラザフォード・カベルネ・ソーヴィニヨン 2014
/ボーリュー・ヴィンヤード (ラザフォード地区)
5:オークヴィル カベルネ・ソーヴィニヨン 2015
/ロバート・モンダヴィ・ワイナリー (オークヴィル地区)
6:カベルネ・ソーヴィニョン・エステート 2013
/リッジ・ヴィンヤーズ (サンタ・クルーズ・マウンテン地区)

イベントではカリフォルニアの食材を使ったワインディナーも開催された。ペアリングを監修したのは、フード&ワインスペシャリストでナパ・ヴァレー・ヴィントナーズ駐日代表の小枝絵麻さん。カリフォルニアワイン協会公認フードペアリング講師も務める小枝さんが考案したペアリングの方程式「カリフォルニア・フードペアリング・ベーシック・エデュケーション」のチャートに基づき、前菜からデザートまで6パターンがサービスされた。

1 秋刀魚のカルパッチョ 生姜と梨
→ グロリア・フェラー・ブラン・ド・ブラン N.V

2 ラディッキオとざくろのサラダ
→ シーグラス モントレー・カウンティ ロゼ 2017

3 アサリと栗のリゾット
→ ポール・ホブス シャルドネ ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2016

4 フォアグラとビーツのもなか
→ ダックホーン・ヴィンヤーズ メルロ ナパ・ヴァレー 2014

5 サーロインステーキ 3種のブリッジソース
→ シルヴァーオーク ナパ・ヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 2014

6 オリーブのチョコレートケーキ
→ ロバート・モンダヴィ マスカット・ドロ・ナパ・ヴァレー 2015

小枝さんのペアリングは、以下のようなルールで料理に点数をつけ、そこにワインを合わせていくもの。

まず、料理を「食材・調理法・味付け」の各項目でライトからフルボディに分類し、1〜3までのポイントをつける。
たとえば、食材でいえば野菜や甲殻類は1ポイント、根菜や青魚は2ポイント、霜降り肉や脂の乗った魚は3ポイント。塩やチリの味付けなら1ポイント、醤油やマヨネーズ、サワークリームなら2ポイント、濃口醤油やBBQソース、ココナッツミルクなどを使っていれば3ポイント、といった具合。

次に、チャートにあらかじめ設定された合計ポイントごとのブドウ品種とブリッジ食材をみて、それらのポイントからふさわしいワインを選んでいく。

これでみると、前菜の「秋刀魚のカルパッチョ 生姜と梨」というメニューは、

・食材:青魚なので2ポイント
・調理法:生食なので1ポイント
・味付け:塩なので1ポイント

計4ポイント。チャートの3〜4ポイントに設定されたワインは、スパークリング、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネの3種だが、このレシピには松の実やショウガが使われており、ブリッジ食材に「ナッツ、ショウガ」が入っているスパークリングワインを合わせるのが正解、というプロセスだ。

ペアリングのセンスがより重視される昨今、このように体系化されたペアリングチャートは、サービスの現場に立つソムリエやシェフたちにとって大きなサポートツールとなるだろう。小枝さんの解説を挟みながらのディナーは瞬く間に過ぎ、ペアリングされたワインの余韻を残しつつ、新生カリフォルニアワイン協会のイベントは盛況のうちに幕を閉じた。

Text & Photo:Hiromi Tani
Photo:California Wines