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岩本順子 Junko Iwamoto

ドイツ在住/ ライター・翻訳家

ライター・翻訳家。ドイツ、ハンブルク在住。1999年にドイツの醸造所で研修。2013年にWSETディプロマ取得。現在ドイツの日本語新聞「ニュースダイジェスト」に「ドイツワイン・ナビゲーター」「ドイツ・ゼクト物語」を連載中。 http://www.junkoiwamoto.com

2019.09.04
column

ドイツ・ハンブルク発 世界のワイン情報 vol.21「ラインヘッセン発 『MAXIME HERKUNFT』が始動」

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ドイツのワイン産地では、1990年代以来、おもに若手の醸造家を中心とする生産者団体がいくつも誕生している。規模は大小さまざまで、長年存続しているグループもあれば、解散したグループもある。現在活躍中のグループの中で、飛び抜けて規模が大きいのが、ドイツワイン・インスティテュートの主導で06年に活動を開始したゲネラツィオーン・リースリングだ。制約の少ない緩やかな繋がりゆえ、35歳までという年齢制限があるものの、600人近いメンバーを擁する。

生産者が結集すれば、情報交換が盛んになり、お互いのワインを率直に評価し合う機会が生まれ、ともに学び、成長することができる。存在感が増し、見本市などのビジネスの場に共同ブースを出展したり、共同でプレゼンテーションを行なったり、共同でワインをリリースするなど、マーケティング戦略に可能性が増える。

生産者団体の中で、規模が大きく、影響力が大きいのがドイツ・プレディカーツワイン生産者協会(VDP)だ。100余年の歴史を誇る、ドイツ最古の現役生産者団体で、会員は約200醸造所。独自の格付け制度を実施し、ドイツワインのイメージアップに貢献してきたことは周知のとおりだ。VDPが長年をかけて準備を行ない、実現したのは、グーツワイン、オルツワイン(村名ワイン)、ラーゲンワインの3段階の格付けだ。ラーゲンワインには、エアステ・ラーゲ(プルミエ・クリュに相当)とグローセ・ラーゲ(グラン・クリュに相当)の2段階があり、正確には4段階となっているが、基本は3段階であると考えてよいだろう。

17年2月、ラインヘッセン地方に、VDP同様に3段階の格付けを基軸としてワイン造りを行なう醸造所の新団体 「MAXIME HERKUNFT RHEINHESSEN(マキシーメ・ヘアクンフト・ラインヘッセン)」が誕生した。3段階の格付けは、すでにVDP会員以外にもかなり浸透している。糖度よりもテロワールを重視する現在のワイン造りの実態に沿っており、消費者にとっても解りやすく、受け入れやすい指標だからだ。団体の立ち上げは、VDPの会員醸造所と、独自に3段階の格付けを行なっているVDP非会員醸造所とが、共同で構想したもので、VDPラインヘッセン支部とラインヘッセン・ワイン協会も後押ししている。会員数は19年8月現在で約90醸造所に達している。

4月27日には、マインツ市で、団体結成のお披露目イべント「MAXIME. ORTSWEINPREVIEW(マキシーメ・オルツワイン・プレビュー)」が行なわれ 、オルツワイン約200アイテムが試飲に供された。同じくマインツで行なわれる、VDP恒例の商談イヴェント「VDP.Weinbörse(ヴァインベルゼ)」の前日の開催で、プレゼンテーションには絶好のタイミングだった。

「MAXIME HERKUNFT」は、このイべントで、オルツワインにフォーカスを当てた。オルツワインは、「オルト」すなわち村などの自治体の特徴を充分に表現しながら、手頃な価格で、気軽に楽しめることができる。オルツワインを通して、ラインヘッセンのそれぞれの村の風土や土壌の特徴に親しめば、その上のランクであるラーゲンワインへの関心も呼び起こされるはず、との狙いがある。

「MAXIME HERKUNFT」は、VDPラインヘッセン支部の、ほぼすべてのメンバーが会員となっているほか、「Message in a Bottle」のメンバーも加入している。「Message in a Bottle」はラインヘッセン地方の若手醸造家団体で、今年の3月もデュッセルドルフのワイン見本市「ProWein」にブースを構え、活動していたが、年内に解散することが決まった。メンバーのほとんどが「MAXIME HERKUNFT」に移行したためだ。

「MAXIME HERKUNFT」は、ラインヘッセン地方のトップクラスの生産者たちと、それに続こうとする次世代の造り手たちとで構成され、ラインヘッセン・ワインを対外的に広くアピールする、フレキシブルで力のある団体に成長していくことだろう。

右から会長のヨハネス・ガイル=ビアシェンク、副会長のフィリップ・ヴィットマンとシュテファン・ブラウネヴェル。
フィリップ・ヴィットマンはVDPラインヘッセン支部長でもある。


会長を務める、ヨハネス・ガイル=ビアシェンク氏は「現在、他の生産地からも入会の問い合わせがあるほど反響があり、非常に嬉しい。しかし『MAXIME HERKUNFT』は、ラインヘッセン地方の団体として活動していくと決めている。仮に、同じ志をもつ団体が、他の地方でも結成され、『MAXIME HERKUNFT』の名称やルールのもとに活動したいという要望があれば、ぜひ検討したい」と語る。始動したばかりの新団体の、今後の動きが注目される。

「MAXIME HERKUNFT RHEINHESSEN(マキシーメ・ヘアクンフト・ラインヘッセン)」
www.maxime-herkunft.de

Photo:Maxime Herkunft Rheinhessen, Rheinhessenwein
Text:Junko Iwamoto