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岩本順子 Junko Iwamoto

ドイツ在住/ ライター・翻訳家

ライター・翻訳家。ドイツ、ハンブルク在住。1999年にドイツの醸造所で研修。2013年にWSETディプロマ取得。現在ドイツの日本語新聞「ニュースダイジェスト」に「ドイツワイン・ナビゲーター」「ドイツ・ゼクト物語」を連載中。 http://www.junkoiwamoto.com

2017.11.23
column

ドイツ・ハンブルク発 世界のワイン情報 vol.06 「Generation Riesling 若手醸造家が主役! 11年目を迎えたユニークなワイン・プロモーション」

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2006年にドイツ・ワインインスティテュートの発案でスタートした、若手醸造家団体「Generation Riesling(ゲネラツィオーン・リースリング)」の活動が成果をあげている。Generation Rieslingは、ドイツの全ワイン生産地域の、35歳以下の意欲的な若手醸造家が結集したグループ。名称に「リースリング」とあるのは、同品種がドイツを代表する白ワイン品種であるため。リースリングの造り手だけに限定されてはいない。

ドイツの次世代のワインの造り手たちの多くは、国内外での豊富な研修経験をもち、大学で醸造学やワインマーケティングを学ぶ者も多く、グローバルな視点をもち、トレンドに敏感だ。彼らは栽培・醸造法を改良し、商品構成を改め、エチケットをわかりやすくし、新たな販路を開拓するなど、親世代が積み上げた土台に革新をもたらしている。

昨年行なわれた「Generation Riesling 10周年記念イベント」に参加したメンバーたち。©Generation Riesling

現在、約530人の造り手がGeneration Rieslingに参加し、ドイツ国内や世界各地でさまざまなプロモーションイベントを開催するほか、ワイン関連見本市で共同ブースを設置している。ドイツワインの主要マーケットである、英国、米国、カナダ、スイス、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、日本でもプレゼンテーションが行なわれ、ドイツの主要都市での定例イベントには毎回約30人の造り手が出張する。毎年行なわれている「Generation Riesling フォーラム」は約80の醸造所が参加する大規模なワークショップだ。

Generation Rieslingは、若手世代がいるすべての醸造所に参加のチャンスがある。年齢の上限があるため、毎年メンバーが部分的に入れ替わり、毎回のプレゼンテーションの参加醸造所は流動的だ。このダイナミズムが成功の秘訣なのかもしれない。

参加醸造所のワインの多くは、それまで地元で消費されていたケースが多く、大都市においてはほぼ無名。コストパフォーマンスのよさもあり、都市部では彼らのプレゼンテーションを心待ちにしているワイン関係者が多い。

ドイツ・ワインインスティトゥート広報部のエルンスト・ビュシャー氏は「Generation Rieslingは、いまや世界最大の若手醸造家団体。他国でも、販促活動において若手醸造家にスポットをあてようとしているが、500名以上の若手醸造家が、ひとつのブランド名のもとに結集している全国的な組織活動は世界に類がない」と語る。

Generation Rieslingが15年からハンブルク、ベルリン、ミュンヘンで定期的に行なっているワイン・ピクニックは、ライブ音楽を聞きながらピクニックスタイルでテイスティングができる人気イベント。©Patrick Runte

Generation Rieslingの影響力は大きく、同類の団体がドイツの各地方に誕生しており、相乗効果をもたらしている。「Generation Pfalz(ゲネラツィオーン・ファルツ)」はファルツ地方の40歳以下の醸造家組織でメンバーは20名、「Generation Pinot(ゲネラツィオーン・ピノ)」はピノ種が多く栽培されているバーデン地方の39歳以下の造り手54人が結集した組織だ。中にはGeneration Rieslingの活動と掛け持ちしているメンバーもいる。