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岩本順子 Junko Iwamoto

ドイツ在住/ ライター・翻訳家

ライター・翻訳家。ドイツ、ハンブルク在住。1999年にドイツの醸造所で研修。2013年にWSETディプロマ取得。現在ドイツの日本語新聞「ニュースダイジェスト」に「ドイツワイン・ナビゲーター」「ドイツ・ゼクト物語」を連載中。 http://www.junkoiwamoto.com

2019.06.10
column

ドイツ・ハンブルク発 世界のワイン情報 vol.18「Wein am Dom ファルツ・ワインにどっぷりと浸かる2日間」

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4月13日(土)、14日(日)の両日、ファルツ地方シュパイヤー市で恒例の「Wein am Dom(ヴァイン・アム・ドーム)」が開催。ファルツ地方限定のワイン・テイスティング・イべントで、今年で7回目を迎えた。今回の出店醸造所は170社、うち160社がファルツ地方で、10社がゲストであるオーストリア、ブルゲンランド地方の醸造所だ。提供されたワインは約1000種類、うち550種類が2018年ヴィンテージ。今年の訪問者数は約3600人だった。

「Wein am Dom」は、テイスティングのロケーションがユニークだ。人口5万人の古都、シュパイヤーの文化財、観光スポット、文化施設を総動員しているのである。今回の会場は、ファルツ歴史博物館、ギャラリー・クルトゥアラウム、聖霊教会、ハウス・トリニタティス 、旧市庁舎、クルトゥアホーフ・フラッハガッセの6カ所。いずれも街の中心部にあり、徒歩で行き来できるのも魅力。

会場のひとつ、ファルツ歴史博物館

ファルツ歴史博物館では、ラインラント・ファルツ州農業会議所が実施する、伝統あるワイン・ゼクト・コンクールに入賞した43社が出展。最近では民間のワインコンクールも多数あるが、昔もいまも、州の農業会議所が授与する金賞、銀賞、銅賞は、基本となる評価であり、未知のワインを発掘する際には、とても参考になる。同コンクールには、ファルツ地方だけで、毎年400醸造所、7000本のワインがエントリーする。歴史博物館内にはワイン関連の展示室もあり、テイスティングの合間に見学することも可能だ。

ファルツ歴史博物館に出展していたツィマーマン醸造所のヘルゲ・ロイターさん。同醸造所のコレクションは今回の発見のひとつ。

ギャラリー・ クルトゥアラウムでは、若手が率いる19醸造所が結集、18世紀初頭に建てられたプロテスタント系の聖霊教会では、VDPファルツ支部の会員醸造所が25社出展していた。同教会は、1980年代からイベント会場として活用されている。

プロテスタント系教会の集会所であるトリニタティス・ハウスでは「ワイン・チェンジス」というタイトルのもとに、おもにダイデスハイムを拠点とする、オリジナリティあふれるワインの造り手13社が集まった。ビオワインの生産者団体、エコヴィンの醸造所6社もここに出展。旧市庁舎の由緒ある大広間では、ビオ農法の生産者団体ビオラントの会員醸造所12社のほか、バリックの使い手である生産者団体「バリック・フォーラム・ファルツ」から14社が集まり、アートスペース、クルトゥアホーフ・フラッハガッセには、ファルツ協同組合醸造所協会から11社、ワインビジネスに関わる女性の団体「ヴィニッシマ」の会員醸造所から22社、今回のゲストであるオーストリアのブルゲンラントの10醸造所が出展していた。

現在、ドイツでは世代交代を機に醸造所が刷新され、品質が向上している。とくにファルツ、ラインヘッセン両地域は、ともにドイツ最大のワイン産地であることから、世代交代する醸造所数が他地域に比べて圧倒的に多く、まるで新しい醸造所が急増しているような活気を感じる。

「Wein am Dom」も活気に満ちており、テイスティング会場はどこも大変な混雑ぶりだった。主催者によると、若い世代の訪問者が年々増えているとのこと。両日は市内のホテルやレストランでもワインをテーマとする様々なイベントやパーティが繰り広げられ、人々はみな、ワイングラスを手に、会場から会場へと街歩きをしていた。

聖霊教会への通路。みな、ワイングラスを手に街を闊歩。

会期中、とくに訪問者に人気があったのが、リースリングとソーヴィニヨン・ブラン、ロゼとブラン・ド・ノワールだった。ソーヴィニヨン・ブランは、近年ファルツ、ラインヘッセン地方で栽培面積が増加中だ。主催者はドイツ・ソムリエ協会と共同で出展されたソーヴィニヨン・ブラン62本、ロゼ58本を審査し、それぞれの最優秀賞(本年の発掘賞)を選んだ。各々の最優秀賞に輝いたのは、フォルストのルーカスホーフ(Weingut Lucashof)のソーヴィニヨン・ブランとランダウのゲアハルト・ホッホデルファー(Weingut Gerhard Hochdörffer)のシュペートブルグンダーのロゼ。いずれも若手が運営する醸造所だ。

「WEIN AM DOM」は出展醸造所数、訪問客数において、毎年マインツで開催されているVDPのワイン市(Mainzer Weinbörse/マインツ・ワイン取引市)とほぼ同規模だが、こちらは一般対象で、ファルツ地域のワインのファンに、同地のワインの傾向を広く、深く知るための絶好の機会を提供している。世界遺産であるシュパイヤーの大聖堂の懐に抱かれながら、市内の観光スポットで味わうワインの味は格別だった。

Text & Photo:Junko Iwamoto

Wein am Dom
https://www.wein-am-dom.de/de