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M氏 (えむし)

日本在住/編集者

飲食を中心とした出来事の取材・編集を業務とするフリー編集者。ワイン系としてはWinartのほか数誌に関わるも、いずれもクレジット等は明記しない裏方気質。ただ、実際は「こんな所でも仕事しやがって」とバレるのを恐れている単なる臆病者。モータースポーツ誌の編集経験もあり、その取材等もあって欧州の造詣は浅くはないが言語がからきしダメという微妙に使えない50代。

2018.12.19
column

獺祭デザインアワード授賞式に行ってきた

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獺祭(だっさい)といえば、山口県岩国市にある酒造メーカー 旭酒造が造る日本酒の銘柄。徹底したデータ管理から造られるそのお酒は高品質で、以前ほどではなくなったものの入手困難な日本酒のひとつだ。その獺祭が、さらなる進化を遂げるため「新しい“ゆらぎ”が欲しい」という旭酒造桜井博志会長の発案から、主力商品である「純米大吟醸二割三分」の化粧箱デザインを「DASSAI DESIGN AWARD 2018」として若手クリエーターたちに提案。その最高賞・獺祭賞、優秀賞を発表する「獺祭デザインアワード授賞式」が去る12月17日(月)に東京・銀座の獺祭ストア銀座10階のSpace Ginzaで行なわれた。


ので、行ってきた。

授賞式開場直後の様子。記者会見っぽい雰囲気との当方の予想を覆す、いきなり立席パーティー状態。

振る舞われるお酒はもちろん獺祭。しかも期間限定商品の、磨き二割三分の発泡にごり酒ですよ! もちろん飲み放題ですよ! まだ授賞式開始前ですよ!

ケータリング各種。ほんのり甘い発泡にごり酒はフルーツサラダとの相性が抜群!

桜井会長(手前)の挨拶の後、審査員の画家であり女優でもある蜷川有紀氏の乾杯で授賞式が開始。

二杯目。お酌をしていただくのは、通常は一階の獺祭ストアに勤務するスウェーデン出身のエリクソン・リチャード・マーティン氏。

賞の発表が粛々と行なわれるなかで……(写真は優秀賞の福本正氏と共同制作者の福本靖子氏)

三杯目。チューリップ型グラスでいただく獺祭は香りが素晴らしく、すっといくらでも飲めてしまう(危険)。

そうこうしているうちに、優勝賞5作品が発表された後、いよいよ大賞の発表!

デロデロデロ(←ドラムロール。開場には実際には流れてはおらず脳内自動再生)

ジャン!

最高賞は岡島凱氏と共同制作者、金澤コーリすみれライト氏、岡島琳氏らによる作品!

桜井会長から賞状、賞牌、賞金100万円を受け取る岡島凱氏、金澤コーリすみれライト氏、岡島琳氏。

審査員と最高賞、優秀賞を受賞した方たち。(https://dassai.sendenkaigi.com/history/#finalist

こちらが最高賞作品。「獺祭という楽しくも面白味のある場面を想定してみました」。

帰り際にもう一杯だけ!(まだ飲むのかこの人たち)(ええ飲みますとも)

すべてのプログラムを終え、外に出るととっぷりと暮れていたが、一階の獺祭ストアはまだ営業中。磨き二割三分などの獺祭三種40mlずつがテイスティングできる利き酒セットが500円で飲めるですと! ちょっと仕上げに飲んで行きますか!

ちなみに「二割三分」とは米の精米歩合です。日本酒の原料となる米は、中心部の心白(しんぱく)という部分で造られる酒ほど雑味が少なく、高級酒になるほど多く削られた米を使うのです。高級日本酒の代名詞である大吟醸の場合、半分である50%以上削ったものでないと大吟醸と呼んではならぬ、という決まりすらある。

で、獺祭の「磨き二割三分」は大吟醸の50%を遥かに超える精米歩合23%だ、という意味なのであります。精米歩合をそのまま商品名にしちゃったわけですね。ワイン的に例えると、シャルドネ100%で造られたワインのみが名乗れるブラン・ド・ブランに近いノリ。

これ(↑)は会場で配られた精米歩合を示したカード。左が100%のお米ですが、それを23%まで削ると(右)こんなに小さくなる。原料の23%しか造りに使わない、ものすごく贅沢なお酒だというのがよくわかる。

そんな贅沢な日本酒を造る旭酒造ですが、いちばんの特徴は精米歩合50%以下の日本酒しか造っていない点。しかも醸造アルコールは無添加。つまり、純米大吟醸しか造っていないということ。

しかし、純米大吟醸は造りがむずかしく、どこの酒造メーカーも少量しか造らない……ところを旭酒造は徹底したデータ管理を元にして大量生産。多くの人が純米大吟醸のおいしさを楽しめる、というのが人気のヒミツ。日本酒造りには醸造最高責任者である杜氏(とうじ)の経験と感が重要とされているが、それすらもデータ化し杜氏自体を廃止。米農家の農閑期の労働力を使って造りを行なうスタイルも止め、冬しか造られないことの多い日本酒を、通年で醸造する新しい造り酒屋なのだ。

新しいスタイルの造り酒屋、旭酒造の代表的銘柄「磨き二割三分」の新パッケージは化粧箱として50,000本作成し、日本国内だけでなく世界中に展開する計画とのこと。これは絶対に買いでしょう!

オマケ。

式の途中で獺祭グラスに☆マークがついているのに気が付く。香りを楽しむ場合、グラスの中のお酒は量が重要だ、というのはワインと同じ。☆は、このグラスに注ぐ場合はここがちょうどいい量だという印なんだそうだ。約90ml。誰ですか、ハイサワーみたいだなんて思った人は!

Text & Photo:M-shi

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