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松原摩子

イタリア在住/ライター、通訳、AIS公認ソムリエ、JSA 公認酒エキスパート

1992年よりイタリア在住。イタリアソムリエ協会公認ソムリエの資格を取得後、07年にミラノからワイン産地、オルトレポー・パヴェーゼへ移住。ワイン塾の主催や、ワイン輸出、食のイベントなども手がける。趣味は、ワイナリー巡り。

2019.08.08
column

ワインラバーへおすすめ、イタリアで人気のワイナリー ウェディング

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結婚式は人生の一大イベント。家族の絆を重んじるイタリアではなおさらですが、ホテルでの披露宴は少数派。教会で挙式後、貸切レストランで丸一日大宴会が続く、というのが伝統的スタイル。ただ、最近は自由な気風も生まれ、趣向も多様化してきています。そのひとつが、ブドウ畑に囲まれたワイナリーでの結婚式。イタリアには、元お城や貴族の館のワイナリーもあり、見晴らしのよい素敵なロケーションに、人気が集まっています。

私の住むCasteggio市は、人口6800人のワイン産地。市もワイナリーでのウェディングを推奨していています。じつは、先月、私自身も地元で結婚式を挙げましたので、体験談を書いてみたいと思います。

イタリアでは、役所に届けを出すだけでは婚姻は成立せず、結婚の意思を公にする「公示」を行ない、異議申し立てがないことを確認後、教会か市役所で挙式を執り行なう義務があります。

まずは、市役所に手続きの詳細を聞きに行き、一通りの説明を受けてから、ワイナリー・ウェディングのパンフレットをもらいました。ワイナリーへの挙式出張サービスも可能とのこと。地元の魅力を最大限に活用してもらおうという、取り組みのひとつのようです。

私の場合は、市役所で挙式後、ワイナリーで内輪の披露宴、というシンプルなスタイルに。ケータリングの食事では味気ないので、レストラン併設のワイナリーを披露宴会場に選びました。オーナーと日頃から親しくしていたおかげで、休業日の月曜にもかかわらず、貸切営業を快く引き受けてもらえました。

衣装は、母の強い希望により白無垢、新郎はイタリア人ですが紋付袴。ミラノ在住の着付士の友人に、白無垢のレンタルと着付をお願いし、衣装合わせのために前日から来てもらうことに。お色直しは、自前の桜柄の訪問着に決めました。じつは、紫色の訪問着も候補だったのですが、紫は縁起の悪い色として結婚式にはタブーであることを知り、却下。

披露宴の食事のメニュー作り、ワインのセレクト、座席表、花束、美容院、写真館、ボンボニエーレ(引き出物のお菓子)など、すべての手配を自分で手掛けたのですが、とてもスムーズでした。というのも、小さな町なので、どこへ行くにも車で10分以内。何かあれば、すぐに直接出向いて打合せができるのです。ミラノのような都会では、なかなかこうは行きません。

当日は、市役所の見晴らしのよい部屋で挙式。役所とはいえ、歴史的な建造物なので、どことなく味わいがあります。町の人達が白無垢姿を見に来てくれたのも、田舎ならではの嬉しい出来事。

列席者全員が部屋に入ったところで、演奏家の友人が、バイオリンでウェディングマーチを奏で、花嫁入場。続いて日本とイタリアの国家の演奏。市長代理が式を司り、新郎新婦の宣誓後、ふたりの証人とともに用意された書面に署名をして、晴れて婚姻が成立。

その後は、車で10分ほどの披露宴会場のワイナリーへ移動。新郎新婦が写真撮影をしている間、ゲストの方々は、ワイナリーのオーナーの案内で醸造所見学。

続いては、ビュッフェスタイルの食前酒タイム。ミシュラン星付シェフで、鮨職人の友人にミラノから来てもらい、その場でお鮨を握ってもらいました。華麗なパーフォーマンスに、イタリア人達は大喜び。サラミやチーズなど、イタリア式のおつまみも用意したのですが、ほとんど手つかずでした。乾杯用の泡は、もちろんワイナリーのメトド・クラシコ、マグナムボトル。お鮨に合わせて日本酒も用意しました。

グラス片手にゲスト同士が談笑するなか、友人が、トラビアータの乾杯の歌などを、バイオリン演奏。

引き続き、着席式のフルコース・ランチが始まったところで、ゲスト全員を紹介。和気あいあいとした雰囲気の中、ブドウ畑と青空に映えるモンテローザの山を眺めながら、ゆったりと食事が進みました。

各料理にはソムリエの私がワインをマリアージュ。最後の赤ワインは、新郎新婦が出会った2004年のヴィンテージ。親交のある別のワイナリー「Frecciarossa」のオーナーが、結婚祝にプレゼントしてくれた、Pinot Noir Giorgio Odero 2004。プロソムリエの友人が、抜栓とサーブを引き受けてくれました。

さらに、ゲストのイタリアソムリエ協会の重鎮が、このワインの講評やヴィンテージについて語ってくれ、一同、耳を傾けながら、エレガントに熟成したワインを堪能しました。

最後のウェディングケーキも、新郎の友人の手作り。著名なミシュラン三つ星シェフの従兄弟だけあって、とても手のこんだ美味しいケーキでした。ケーキカットの後は、デザートワイン、モスカートのスパークワインで再度乾杯。ボンボニエールは、NPO法人に寄付をして焼いてもらった手作りのクッキーで、手書きカードを添え、ゲストとワイナリーのスタッフ全員にプレゼント。

手作り感あふれるワイナリーでの披露宴に、ゲストの方々も口々に「とてもよい一日だった」と感想を述べてくれました。

自然に抱かれ、時間に追われることもなく、自分流にオーガナイズできるワイナリーの結婚式。とてもオススメです。この感動を多くの方に味わっていただくために、現地のウェディング・プランナーとして、お役に立ちたいという思いまで沸いてきました。新婚旅行の旅先で、グラス片手にワイナリーでふたりだけの結婚式だなんて、ロマンチックではありませんか! 私自身も思い出すたびに、ブドウ畑の景色が目に浮かび、ウットリとした気分になります。

ワインラバーの皆さん、いかがでしょうか? 心を込めてお手伝いいたしますよ。
お問合せはこちらへ:matsubaramako@gmail.com

Text:Mako Matsubara
Photo:Hironobu Odaka