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松原摩子

イタリア在住/ライター、通訳、AIS公認ソムリエ、JSA 公認酒エキスパート

1992年よりイタリア在住。イタリアソムリエ協会公認ソムリエの資格を取得後、07年にミラノからワイン産地、オルトレポーパヴェーゼへ移住。ワイン塾の主催や、ワイン輸出、食のイベントなども手掛ける。趣味は、ワイナリー巡り。

2018.09.04
column

イベント満載、ワイン産地の熱い夏

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ワイン産地に住む者にとって、夏はいちばん楽しい季節。
日に日にブドウが実っていく様子を眺めながら畑のあぜ道を散歩すると、期待で身も心も元気になります。

さらに、夏はワインにちなんだ野外イベントが、目白押し。
たとえば、ワイナリーで行なわれる野外コンサート。オペラ発祥の国だけあって、イタリア人はクラシック音楽が大好き。古城や歴史ある館を有するワイナリーは、土地興しのために会場を提供します。

Frecciarossaワイナリーでのクラシックコンサート

Frecciarossaワイナリーのオーナー夫妻と演奏者

なかでも、地元でいちばん美しいといわれるワイナリー、Frecciarossaでのコンサートはとくに人気。1860年に建てられた館がライトアップされ、幻想的な雰囲気のなかで奏でられる生演奏は、特別な趣があるからです。もともと、テレビのない時代には、日常的にこのような余興が楽しまれていました。古き良き時代にタイムスリップし、今年はハープとオーボエの音色に聴き入りました。
指定席や入場料に決まりはなく、受付で心づけを置いて、好きな席に座ります。数年前までは、コンサート後にワイナリーから、軽食とワインがふるまわれたのですが、最近は聴衆の数が増え過ぎて、見送られてしまったのが残念です。

別のワイナリーでは、庭で食事とワインを楽しみながら、寸劇とハープの競演が行なわれたり、アコーディオンのコンサートが催されたり。料理一品ごとに、ワインと短編映画を合わせる、という催しもありました。
ワイナリーの庭にテーブルが並べられ、前菜、プリモ、セコンドと料理が出てくるごとに短編映画を観て、計3本を鑑賞。最後の作品が、その生産者のドキュメンタリー映画だったのは、サプライズでした。1年を通して畑と醸造所の仕事を追い、造り手の情熱に迫った作品でした。映像を見ながら口にするワインは、また格別な味わい。食後には、皆で松明を持って畑まで歩き、映画の舞台となった畑の中でスプマンテを抜栓して乾杯も。

Casteggioの町で行なわれた「白の夕食」

「白の夕食」は、夏の定番。イタリア各地で催されています。
私の住む町でも、広場に白いクロスのかかったテーブルと白い椅子が並べられ、ピクニック形式の夕食会が行なわれました。誰でも参加できますが、唯一のルールは、身に着けるものから持参する料理に至るまで、白でコーディネートすること。帽子、洋服、靴、アクセサリーなどはすべて白色。食べ物は、たとえばホワイトソースのパスタや、ポテト、白身魚、鶏肉など。ドリンクはもちろん白ワイン。シンプルな催しですが、白一色に包まれた光景は圧巻です。

ワインとジャズの夕べ

そのほか、元修道院の中庭では、ジャズの生演奏をバックに、ワインの試飲会が行なわれました。入場料は10ユーロ(約1,300円)。ジャズをバックミュージックに、ワインのテイスティングに集中するのもよし。着席して、グラスをゆっくりと傾けながら、ジャズに聴き入るのもよし。ここでもとくに決まりごとはなく、各々が自由に楽しんでいます。

ほかにもさまざまな趣向のイベントがあり、夏の間はどこかで何かしらの催しが開催されていて、退屈することはありません。ミラノに住んでいたころは、毎年山へバカンスに出かけていましたが、ワイン産地へ移住してからの11年間は、遠出の必要がなくなりました。窓を開ければ美しいブドウ畑の景色が広がり、夏は地元でイベント三昧。お金をかけずに贅沢な時間を過ごすことができるのは、産地に住むメリットのひとつです。

Text : Mako Matsubara