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立花峰夫

日本在住/ワインライター/翻訳者

ワイン専門翻訳・執筆サービス、タチバナ・ペール・エ・フィス代表。欧米ワイン本の出版翻訳、ワイン専門誌への記事執筆を精力的に行う。翻訳書(共訳含む)に『ほんとうのワイン』パトリック・マシューズ著、『アンリ・ジャイエのワイン造り』ジャッキー・リゴー著、『シャンパン 泡の科学』ジェラール・リジェ=ベレール著、『ブルゴーニュワイン大全』ジャスパー・モリス著、『最高のワインを買い付ける』カーミット・リンチ著などがある。

2020.01.14
column

カリフォルニアワイン協会 オナー・コンフォート国際部長が語るカリフォルニアワインの明日

2019年11月中旬、カリフォルニアワイン協会(California Wine Institute、略称CWI)より、オナー・コンフォート国際部長が来日し、記者会見が行なわれた。この協会はどんな団体で、実際には何をしているのだろうか?

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カリフォルニアワイン協会(CWI)とは?

 
当団体日本事務所の公式ウェブサイトを見ると、以下のように記されている。

「カリフォルニアワイン協会(本部・カリフォルニア州サンフランシスコ)は、1000 社を超えるカリフォルニアのワイナリーおよびワイン関連企業から構成される非営利団体で、ワインの生産や流通や消費に関する政策的な提言を行なっています。
CWIの輸出プログラム(California Wine Export Program)では、世界15の国と地域に事務所を置き、重要な市場情報の提供およびプロモーションを支援しています。138カ国にワインを輸出する175 以上のカリフォルニアのワイナリーが毎年当プログラムに参加しています。
CWI日本事務所(東京都新宿区)は、カリフォルニアワインの普及促進、日本市場における関税、非関税障壁の監視などを目的に1985 年に設立され、25年の歴史をもつバイ・ザ・グラス・プロモーション(料飲店向け販売促進プログラム)やワイン業界関係者・メディア・消費者向け試飲会の実施、またカリフォルニアワインの教育プログラムの展開など、活発な活動を行なっています」。

要するに、カリフォルニアのワイン生産者の利益のため、国内外で政治的なロビィ運動や各種の調整、そして広報・宣伝活動を行なう団体ということだ。本部の設立は、アメリカで禁酒法が廃止された直後の1934年。その後のカリフォルニアワインの発展を語る上で、CWIの存在と活動は欠かせない。日本の地で、我々が日頃から美味しいカリフォルニアワインを多銘柄楽しめるのも、CWIの努力があってこそだ。

 

日本市場の重要性と自由貿易支持のポリシー

 

前任のリンジー・ギャラガー氏に代わり、2019年4月に国際部長に就任したオナー・コンフォート氏は、笑顔が素敵でチャーミングな女性。世界に15ある支部を統括し、138カ国への輸出・販売促進戦略を立てる重要なポジションにある彼女は、記者会見の冒頭で次のように述べた。「日本のみなさんが、カリフォルニアワインに対してワクワク感を覚えてくれていることを、今回の来日で学びました。日本市場には長いあいだ働きかけていますが、アジアの市場のリーダー的市場で、いまその重要性がより高まっています」。

日本市場は、カナダ、ヨーロッパ(イギリス含む)に次ぐ3番目の輸出市場である。近年は、中国への輸出量が大きく伸びていたが、トランプ政権下での米中貿易戦争の中で、中国がアメリカ産ワインに高い報復関税を課したため、2018年以降、中国への輸出は急激に減少してしまっている。その埋め合わせのために、カリフォルニアワインの生産者たちは日本を含むほかのアジア諸国への輸出を増やそうと目下努力しており、政府からも助成金が出ているそうだ。また、2020年1月1日発効の日米貿易協定(FTA)により、日本におけるアメリカ産ワインへの関税が段階的に引下げられ、2025年にはゼロになることも追い風である。コンフォート氏の上述の発言の裏には、こうした事情がある。

なお、コンフォート氏が来日したのは、トランプ政権がフランス、スペイン、ドイツ、イギリス産の一部のワインに対し、25%の追加関税を発動(2019年10月)したばかりの時期。米国内では、EU産ワインに対するカリフォルニアワインの価格競争力が増して内需が拡大し、その分輸出量が減る予想図も描けるが、その点についてCWIはどう考えているか尋ねてみた。「世界中で、CWIは自由貿易と自由市場を支持しています。国の政策がどうあれ、そのポリシーは変わりません。これからも、世界中の国々でより多くのカリフォルニアワインが飲まれるように、マーケティング・プログラムを展開していきたいと考えています」と、あくまで輸出促進のポリシーが変わらないことを強調した。目先の10円を拾いに行かず、長期的視野に基づく活動を行なっていこうという姿勢は立派であり、日本の我々にとっても実にありがたい。

 

大きな成功を収めつつある、サステイナブル農法の推進

 

カリフォルニアでは21世紀に入って以来、栽培・醸造におけるサステイナブル・ワイングロウイング(持続可能なワイン生産)の推進に州をあげて取り組み、目覚ましい成果を上げてきた。2001年にCWIと、ブドウ栽培家の団体であるカリフォルニア・アソシエーション・オブ・ワイングレープ・グロワーズが協同で、行動指針を制定したのがそのはじまり。指針には、「環境に優しいこと」、「経済的に実現可能であること」、「社会的に公正であること」という3本の柱があり、具体的には土壌の管理、病虫害への対処といった畑での実践と、消費エネルギーの節約や工業排水の処理といったワイナリーでの実践に分かれている。

この指針は、全227項目、約500ページに渡る詳細な手引書として2002年にまとめあげられ、ブドウ栽培家、ワイン生産者に配布された。翌2003年には、このプログラムの推進主体として、前述の2団体を母体にカリフォルニア・サステイナブル・ワイングロウイング・アライアンスという団体も設立されている。2010年からは、第三者機関による認証プログラムもスタートした。

このサステイナブル・ワイングロウイング・プログラムは、意義のある第一歩からわずか20年弱のあいだに、カリフォルニア全土に広く浸透している。とりわけ、近年目覚ましいのは認証を受けたブドウ畑・ワイナリー数の増加である。2018年までの合計で、第三者機関による認証を受けたブドウ畑の数が1,398(面積にして15万エーカーで、全体の25%)、ワイナリーの数が143(生産量にして2.1億ケースで、全体の70%)と、認証開始からわずか9年で大きな達成が見られる(未だ認証を得ずとも、プログラムに参加しているブドウ畑、ワイナリーの数はもっと大きい)。こうした成果が世界的にも評価され、英国の酒類業界誌『ザ・ドリンクス・ビジネス』による「グリーン・アワード」を2016年に受賞した。

昨今、世界中のワイン産地でサステイナブル農法を促進する動きが広がっているが、農薬の使用などについて厳格なガイドラインがない点を突いて、「グリーンウォッシング」(うわべだけの欺瞞的な環境訴求)ではないかという批判も一般にある。その点についてコンフォート氏に尋ねると、次のような答えが返ってきた。「カリフォルニア州のプログラムで、第三者機関による認証を得るためには、とても厳しい基準があります。この第三者機関は独立したもので、その査定は厳しく最も透明性が高いということで国際的な認知を得ているのです。私たちは、カリフォルニアの中だけでこうした活動をしているのではなく、南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリアとの団体とも交流しているのですが、他国の団体はカリフォルニアの基準は厳しすぎると言っているぐらいですから」。なお、カリフォルニア州は現在、2045年までに温室効果ガス排出量をゼロにすることを政策目標として掲げており、ワイン業界もその目標を達成すべく、さらにエコロジカルな方向へ進むつもりだとコンフォート氏は付言した。

 

オナー・コンフォート Honore Comfort

アメリカでの国際ワインマーケティング、ワイン産業団体のマネジメント、ブランド戦略策定、ワイン輸出営業、ワイン教育などの領域で要職を歴任後、2019年4月より現職に。6代続く農家の出で、その精神でキャリアを積んできた。
 

Photo :Mineo Tachibana (portrait)

©California Wine Institute

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