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近藤さをり

日本在住/ライター、ワイン&グルメ PRスペシャリスト

日本ソムリエ協会認定 ソムリエ、ジャパンビアソムリエ協会認定 ビアソムリエ。大学卒業後に渡独し、日本企業現地法人でのワイン仕入販売担当を経てワイナリーに転職。帰国して洋酒メーカー及びPR会社に勤務した後、独立。カリフォルニアワインのPRに15年以上携わる間、様々な分野の執筆活動も行い、いまに至る。

2024.09.27
column

「カリフォルニアワインの日」に体験、小枝絵麻のペアリングメソッド

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カリフォルニアワイン協会は昨年、9月9日を「カリフォルニアワインの日」に制定。先日、1周年を記念し、メディア及び一般消費者を対象としたイベントを開催した。その一環として、来春カリフォルニアワインと食の書籍を出版する小枝絵麻氏のペアリングメソッドを体験する機会を設けた。

小枝氏の編み出したオリジナルのペアリング方程式に基づくワークショップは、これまでも何度か実施されてきたが、今回披露したのは、ひとつの料理にソースの違いのみで白・ロゼ・赤の3種のワインに合わせる手法。オーブン焼きした銀ダラに、異なる風味の3つのソースでワインペアリングのバリエーションを楽しむという、誰もが手軽にトライできる初級編レシピだ。素材に銀ダラを選んだのは、白身魚でありながら脂質があり、鶏肉同様幅広いタイプのワインと合わせやすいから。調理法は、オーブンでグリルしただけのシンプルなものとした。

1)
塩麹レモンソース
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白ワイン「クライン セブン・ランチランズ・シャルドネ 2022」

塩麹を入れることで短期間の熟成でできるソース。このソースと銀ダラの脂質が合わさると、マロラクティック発酵したシャルドネと相まって、口の中にクリーミーさが生まれる。マロラクティック発酵や一部樽発酵によるワインのキャラクターは、ワインのみ飲むよりも、ペアリングによって顕著になる。

〈ソースのレシピ〉
レモン(1kg)に塩(80g)と麹(30g)を混ぜ合わせて常温で発酵させる。25℃~30℃の環境なら5日間、それより寒い季節なら1週間程度が目安。

2)
梅肉ベリーソース
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ロゼワイン「バターカップ ロゼ 2020」

甘酸っぱくフルーティなラズベリー・イチゴ・ブルーベリーに、梅干しをたっぷり加えることで、ロゼの奥深さを出す。発酵食品であるところの梅干しが、フルーツと塩だけのソースでは感じられないワインの深みを引き出す。ワインのみ飲むとロゼの明るさに隠れて気づけない味わいの層にまでたどり着くことができる。

〈ソースのレシピ〉
冷凍ミックスベリー(100g)と梅干し(20g、塩分8%)、ゆかり(5g)、ロゼワイン(大さじ1)を鍋に入れ2分ほど加熱しジャムに。オレンジピールと紫蘇をトッピング。

3)
味噌モーレソース
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赤ワイン「ウォーターストーン メルロ 2018」

メルロにはカカオを合わせたく、いまはやりのモーレソースを思いついたが、カカオ単体ではワインの余韻か伸びない。豆味噌とダークチョコレートを合わせ、ショウガで辛みを入れることでワインがよりふくよかに感じられるようにした。品種がカベルネ・ソーヴィニヨンであれば、叩いたクルミをソースに加えるとタンニンが柔らかく感じられて、よく馴染む。白身魚でも赤ワインと合わせておいしい、という満足感が得られるペアリング。

〈ソースのレシピ〉
鍋で赤ワイン(60g)、ショウガ(5g)、ニンニク(3g)を加熱。これに豆味噌(70g)、卵黄(20g)、チョコレート(15g)、醤油(15g)、コショウを加え、ひと煮立ちさせる。

小枝氏の方程式は、食材、調理工程、味付けをライトボディからフルボディまでの3段階に分け、総合点数でワインを合わせてバランスを取るというもの。これに今回のペアリングを当てはめて復習すると、下図のようになる。

共通する銀ダラ(食材)2点+オーブン焼き(調理法)2点までで計4点。塩麹レモンソースと梅肉ベリーソースは塩(味付け)1点が加点され計5点となるから、ミディアムボディの白・オレンジ・ロゼワインが合う。味噌モーレソースだと、豆味噌・チョコレート(味付け)3点が加算され計5点となるから、フルボディの赤が合う。

小枝氏がナパヴァレー・ヴィントナーズ駐日代表として、このメソッドを展開していた頃は、ワインはブドウ品種別に分類していたが、今回はそれを発展させ、アロマやスタイルに基づくものとした。

書籍では、こうしたペアリングの理論やレシピのみでなく、カリフォルニアの食やライフスタイルをも紹介する。今日のカリフォルニアでは、プラントフォワードな食生活が重視され、料理も野菜や豆を中心のものに変わってきている。カリフォルニアのトレンドは発酵で、日本の発酵食品への注目も高まっている。いまのカリフォルニア料理は和の素材が多いため、そうしたアレンジも多く盛り込んだという。

小枝氏は、アメリカの名門料理学校であるザ・カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカを卒業。チョークヒル・エステートでワイナリーシェフとして働いた経験ももつ。「ワインは会話を膨らまし、料理とともに飲めば体にもよい。このような書籍の出版は長年の夢だった」と語った。

■ペアリングに使われたワイン

左から
白:クライン セブン・ランチランズ・シャルドネ 2022
ロゼ:バターカップ ロゼ 2020
赤:ウォーターストーン メルロ 2018