
芦谷日菜乃
日本在住/フリーランスライター
レストラン、ワインバー等飲食店勤務を経てライターとして活動開始。飲食店や日本茶専門店を中心に取材活動中。2024年に日本茶インストラクターを取得。

秩父産ワイン×チーズで埼玉県のガストロノミー文化を発信 ヴィラ・デ・マリアージュさいたま
2024年11月、埼玉県さいたま市にある結婚式場「ヴィラ・デ・マリアージュさいたま」で、ディナーイベント「埼玉を旅する on the table」が開催された。食事を通じて秩父を旅するというテーマで、秩父の食材を使用したディナーが提供された。その準備と、イベント当日の様子をレポートする。

「ヴィラ・デ・マリアージュさいたま」は、株式会社プリオホールディングスが運営するフレンチレストランを併設した結婚式場。今回のイベントはヴィラ・デ・マリアージュさいたまの総料理長である井村貢によって企画された。井村は、前任地である東京都八王子市の店舗でも地元食材を積極的に仕入れ、地産地消を提唱してきた。今回は秩父でイベントに使用する食材を選定した。
■準備は食材選びから、秩父へ
埼玉県西部に位置する秩父市は、標高1000~2000m級の山々が連なる秩父山地に囲まれた自然豊かな地域。この恵まれた風土を活かし、果樹や野菜、蕎麦の栽培が盛んに行なわれている。また、ミネラル豊富な水に恵まれた秩父市では、江戸時代から続く酒造りの伝統が根付いており、現在ではビール、ウィスキー、ワインといった多様な酒類の生産地としても知られている。
イベントの準備のため、ヴィラ・デ・マリアージュさいたまの一行がまず訪れたのは、埼玉県秩父市にある兎田ワイナリー(秩父ファーマーズファクトリー)。自社畑と契約農家から原料を仕入れ、秩父市産ブドウを主としてワイン造りを行なっている。味わいや香りにこだわり、高品質なワインを生産しているだけでなく、特筆すべきはその多彩なラインナップ。ミズナラのオークチップを浸けた独自のワインや、近隣地域で作られるウイスキー「イチローズモルト」の樽で熟成させたワインなど、個性豊かな種類が揃う。

兎田ワイナリー代表取締役の深田和彦による案内で醸造所を見学。
続いて向かったのは、秩父ワイン。現在、日本国内には500以上のワイナリーが存在しているが、同社はまだワイン造りがほとんど行なわれていなかった1930年代からワイン造りを始めている。創業者は日本で洋食化が進むことを見据え、その料理を引き立てるためワイン造りに情熱を燃やしたという。ヴィラ・デ・マリアージュさいたまの面々は、日本ワインコンクール「JWC」で何度も受賞歴がある銘柄も試飲し、そのおいしさに感嘆していた。

秩父ワインの自社畑を醸造家・村田道子が案内。
さらに、チーズ生産者、秩父やまなみチーズ工房の原料を生産している吉田牧場も訪問した。吉田牧場では乳牛にストレスを与えないよう、一頭一頭の体調に日々目を配ることで牛乳の品質向上につなげているという。
ヴィラ・デ・マリアージュさいたまの一行は各生産者の意見を聞き、それぞれの食材の魅力を感じながら食事会の案を膨らませた。
■埼玉県食材の魅力感じるコース
そして迎えた当日。兎田ワイナリー(秩父ファーマーズファクトリー)、秩父ワインと秩父やまなみチーズ工房、さいたま市岩槻を拠点とするヨーロッパ野菜の生産者チーム、さいたまヨーロッパ野菜研究会による新鮮な野菜を中心に、全6品のフルコースが提供された。
コースの一部をご紹介する。
〔2品目〕
里芋とラングスティーヌのテリーヌ トマトと胡桃のサラダ添え
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兎田ワイナリー「秩父ブラン」(品種:セイベル9110、甲斐ブラン)
前菜は、コク深くしっとりした舌触りの里芋とラングスティーヌのテリーヌ。そして、秩父市で収穫された「セイベル9110」と「甲斐ブラン」からつくられた兎田ワイナリーの白ワイン「秩父ブラン」は、テリーヌのうまみをひき立てるようなほんのり舌に残る甘みと程良い軽さが心地よい。
〔3品目〕
チーマ・ディ・ラーパのグリエと天使の海老のソテー レザバソース添え
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秩父ワイン「源作印 GKT 白」(品種:甲州)
イタリアの菜花チーマ・ディ・ラーパを大胆にグリエしたひと皿。フレッシュな青い香りとどっしりした苦みのあるチーマ・ディ・ラーパは、うまみたっぷりの海老のソテーと相性抜群。日本ワインコンクール2024金賞受賞の秩父ワイン「源作印GKT 白」がキリっとした酸味で全体をまとめていた。
〔5品目〕
アシェットフロマージュ×秩父秩父やまなみチーズ工房 ~フロマージュブラン・リコッタサルーテ・スカルモツァの燻製・ルビ ー~
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秩父ワイン「源作印 GKT 赤」(品種:マスカット・ベーリーA、カベルネ・ソーヴィニヨン)

左手前から時計回りに、スカルモツァの燻製、ルビ ー、リコッタサルーテ。
スプーンにはフロマージュブランがのっている。バケット、ドライフルーツが添えられている。
「秩父やまなみチーズ工房」のフロマージュ盛り合わせ。秩父やまなみチーズ工房は、ウイスキーやワインなど酒造りが盛んな秩父の風土を活かしたチーズ作りを行っている。たとえば、熟成後にイチローズモルトを使いウォッシュしたルビーチーズ。また、ミズナラのウイスキー樽チップを使い燻製した、スカルモツァの燻製。長く口内に残る香り良さともっちりとした質感が魅力的だった。リコッタの表面に胡椒をまぶし熟成させた、スパイシーなリコッタサルーテも印象深い。
チーズを選定したのは、チーズ専門店勤務10年以上のプロフェッショナル、牛山満里恵だ。「国産チーズの多様さを知ってほしい」と話した。
コース全体のほとんどで埼玉県産食材が主役となっており、まさにガストロノミー文化が確かに表現されていると感じる内容だった。当日のコース内容はこちら。
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1品目
さいたま市岩槻産カリフローレのヴルーテ
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La Belle EXTRA BRUT(品種:ピノノワール、ピノ・ムニエ、シャルドネ)
2品目
里芋とラングスティーヌのテリーヌ トマトと胡桃のサラダ添え
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兎田ワイナリー「秩父ブラン」(品種:セイベル9110、甲斐ブラン)
3品目
チーマ・ディ・ラーパのグリエと天使の海老のソテー レザバソース添え
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秩父ワイン「源作印 GKT 白」(品種:甲州)
4品目
牛肉の黒胡椒風味焼き5種のヨーロッパ野菜と香ばしくソテーしたカチョカバロ添え
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兎田ワイナリー「秩父ルージュ」(品種:マスカット・ベーリーA、メルロ)
5品目
アシェットフロマージュ×秩父やまなみチーズ工房 ~フロマージュブラン・リコッタサルーテ・スカルモツァの燻製・ルビ ー~
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秩父ワイン「源作印 GKT 赤」(品種:マスカット・ベーリーA、カベルネ・ソーヴィニヨン)
6品目
秋田県産西洋梨のコンポート赤ワイン風味 戸田乳業”ホエイのきもち”のソルベを添えて
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田中製茶園「狭山和紅茶」
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会場では生産者も食事をともにした。兎田ワイナリー(秩父ファーマーズファクトリー)代表取締役の深田和彦は、「ヴィラ・デ・マリアージュのみなさまが熱心に話を聞く姿勢に感銘を受けました。秩父にはワインもジビエもあるので、今後も応援していただきたい」と語った。
また、総料理長の井村貢は「料理人は生産者の声を代弁する役割を担っています。おいしいものをさらに魅力的に伝える使命があると改めて感じています」と、熱い思いを述べた。
ヴィラ・デ・マリアージュさいたまは今後も埼玉県で地産地消を呼びかける。2025年2月27日には「埼玉を旅する on the table」の第二弾として、埼玉県産イチゴ「あまりん・かおりん」とチーズ、野菜生産者集団「さいたまヨーロッパ野菜研究会」の地元野菜をつかったランチコースが提供される。
◆ヴィラ・デ・マリアージュさいたま
住所:埼玉県さいたま市浦和区上木崎2-4-24
TEL:048-814-4122
◆2025年2月27日(木)限定 ランチイベント「埼玉を旅する on the table」
詳細はこちら!