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Winart

日本在住/

1998年創刊のワイン雑誌。話題の産地の現地情報や、ワインはもとよりお酒全般に関連するさまざまな情報を、美しいビジュアルとともに発信することがモットー。ワインイベントもときどき開催(各イベントの詳細はPeatixページにて)。本ウェブサイトでは、誌面ではお届けできない情報を盛りだくさんでお届けします。【Twitter】@WinartWinart

2019.01.29
column

ワインに続き、チーズが映画に。北海道シリーズ第3弾『そらのレストラン』が公開

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北海道・三笠市にある山﨑ワイナリーの山﨑亮一さん・太一さん兄弟のワイン造りをモチーフに製作された『ぶどうのなみだ』という映画をご記憶でしょうか? 寡黙ながらもひたむきにワイン造りに向き合う兄・亮一さんをモデルに、主人公アオを演じた大泉洋さんが、今度はチーズ生産者の役に挑みました。北海道が生んだスター大泉さんは、やっぱり北海道が似合う。1月25日(金)より公開となった映画『そらのレストラン』は、渡島半島の北西部にあるせたな町が舞台。海をいだくその風景は、どことなく、ワイン生産地として近年脚光を浴びる余市を思わせます。

今回の作品でモデルとなったのは、実際にこの町で生きる循環農業に取り組む自然派農民ユニット「やまの会」の生産者たち。彼らの手がける食材への想いと生産者どうしの絆、そして彼らの食材を見出して感動のひと皿に仕上げる料理人の存在が描かれています。

映画のなかに登場する生産者たちは、それぞれに苦悩を抱えています。有機農法という選択肢をとったがゆえの苦労、都会でのエリートサラリーマン生活に行き詰まった若者の苦悩。父から継いだ酪農を営む主人公の亘理(わたる)もまた、そのひとり。牛乳を納めているナチュラルチーズの職人・大谷に師事して、チーズ造りにも心血を注いでいるのですが……。発酵とはむずかしいもの、なかなか納得のいくチーズを造り出せずに苦悩しています。

そんな彼らの意識を変えたのが、札幌で活躍する一流シェフ・朝田の存在でした。せたなの食材を販売するマルシェに現れた朝田が、彼らの食材を絶賛しレストランで使ってくれることになったのです。朝田の言葉に勇気づけられた生産者たちは、“せたなのおいしさ”を広く届けるために一日限定のレストランを開くことに。

北海道のさわやかな空気感と、その心地よさの中で展開する悲喜こもごものストーリー。“せたなのおいしさ”をまるごと感じるなら、この作品は映画館のスクリーンで観ておきたいところです。主演の大泉さんの得意とするさじ加減の利いたコミカルな演技はもとより、チーズ職人・大谷を演じる小日向文世さん、その妻を演じる風吹ジュンさんの抜群の安定感ある演技もまた、ひとつの見どころ。ベテランの存在が、自然体な映画をさりげなく引き締めてくれています。

単なるご当地映画の域にとどまらず、物語に直面するわれわれ観客に、さまざまな場面で「食のあり方」を考えさせる余白があるのも興味深い。ワインにはかかせない存在でもあるチーズ。その奥深い「発酵食品」のもつ魅力の一端にふれるきっかけにもなりそうな作品です。

【公開情報】
映画『そらのレストラン』
全国にて公開中
監督:深川栄洋
出演:大泉洋、本上まなみ、岡田将生、風吹ジュン、小日向文世
https://sorares-movie.jp/

Text:Winart
Photo:(C)2018『そらのレストラン』製作委員会