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塚本悦子

日本在住/ワインライター・コーディネーター

ワインライター・コーディネーター。ワインスクール講師を経て、現在はフリー。ワイナート本誌では8号より執筆。産業能率大学通信講座「ワイン資格受験コース」監修。著書に「30日間ワイン完全マスター」(美術出版社)など。

2017.11.20
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実りの秋真っ只中の岩手県大迫町、エーデルワインへ

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日本列島を縦断した台風18号が東北を通過する直前の9月中旬、東北新幹線で新花巻駅へ。到着した駅周辺には田んぼが広がり、黄金色に輝く稲穂が美しい。のどかな田園風景を眺めながら車で約30分、北上山地の霊峰、早池峰山麓の大迫町へと向かった。

周囲を山に囲まれた大迫町天神ケ丘畑 にワイナリーを構えるエーデルワインは、昭和37年設立の岩手ぶどう酒醸造合資会社が前身の第三セクター。現在では、33軒の農家が栽培した岩手県産ブドウを用い、80アイテムものワインを生産している。

こちらは栽培農家のひとり、大迫町亀ケ森地区の高橋和子さん(と愛くるしいワンコ!)。今や大迫を代表する醸造用ブドウ品種、リースリング・リオンの栽培を始めたのは約20年前のこと。「田んぼの減反政策で他の農作物を育てていたけれど、エーデルワインさんの説明会で話を聞き、奮起したの。ブドウ栽培は初めてだったけど、毎月の指導会に20年間通い続け、頑張っているわ」。晩熟のリースリング・リオンの収穫は、10月中旬過ぎからだそう。

ワイナリーでは、ちょうどキャンベルとアーリー・スチューヴェンの醸造中。ケースに入ったブドウを見ると、とても健全!各栽培農家のモチベーションが高く、すでに選果した状態でブドウを持ち込んでくれるとか。こんなところからも、農家との良好な関係性がうかがえる。

醸造所内には一般客用の見学コースも設置。また、隣接する『レストラン ベルンドルフ』では、地元食材を使った料理とともにワインを楽しめる。花巻産ブランドポーク“白金豚”のソテーは驚きのおいしさ! 岩手県産食材とワインのマリアージュを、ぜひお試しあれ。

直売所の『ワインシャトー大迫』では、醸造するほとんどのワインを販売。もちろん多くのワインを無料試飲でき、まるでワインのテーマパークのよう。“おおはさまワイン祭り”が開催されたこの日は、多くの観光客で大賑わい! さらに、昨年新設された有料試飲コーナーでは、椅子に座り、ゆっくりとワイナリー限定ワインなどを堪能できる。

今回、さまざまなワインをテイスティングさせていただいたが、柔和な軽快さが心地よいリースリング・リオンはもちろん、大迫での可能性を感じられるツヴァイゲルトレーベやロースラーなどのオーストリア品種、メルロなども、素朴な野生味と上品さのコントラストがなかなか興味深い。

ところで、花巻市といえば、宮沢賢治ゆかりの地。新花巻駅近くの大自然の中に造られた「宮沢賢治童話村」は、子供はもちろん、大人でも思いのほか宮沢賢治の世界に入り込めて、ピュアな心が蘇る。

この辺りはいま、まさに秋が深まる頃。美しい山の紅葉を愛でながら、岩手産食材とワインと宮沢賢治を辿る旅など粋なのでは?

Text:Etsuko Tsukamoto