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岩本順子 Junko Iwamoto

ドイツ在住/ ライター・翻訳家

ライター・翻訳家。ドイツ、ハンブルク在住。1999年にドイツの醸造所で研修。2013年にWSETディプロマ取得。現在ドイツの日本語新聞「ニュースダイジェスト」に「ドイツワイン・ナビゲーター」「ドイツ・ゼクト物語」を連載中。 http://www.junkoiwamoto.com

2017.12.20
column

ドイツ・ハンブルク発 世界のワイン情報 vol.07 「ワインの旅へと誘うWein Tour ドイツの13生産地域を網羅したイベント」

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去る11月11~12日、ハンブルク港の豪華客船ターミナルのひとつ、アルトナ地区のクルーズ・センターでWein Tour(ワインツアー)というイベントが開催された。ドイツ・ワインインスティトゥートがハンブルクで定期的に開催している、ワインとツーリズムをテーマとする一般消費者向けイベントで、今年で4回目を迎える。ドイツの13のワイン生産地域から、生産者、生産者団体、各地域の観光局など81社が参加。入場者は年々増加傾向にあり、今年は3200人に達した。

13生産地域がすべて網羅されているのが、このイベントのよさ。2日間で80社は、快適に回れる規模でもある。特設舞台ではワインに合う料理の実演と試食会のほか、ワイン産地を巡るハイキング指南講座も行なわれた。ドイツではハイキングやウォーキングが盛ん。どのワイン産地にも、ブドウ畑を眺めながら歩けるハイキングコースが整備されている。ワインを試飲しながらアウトドア情報が得られるイベントは、健康志向の時代にふさわしいユニークな試みだ。

Wein Tourのコンパクトな出展者カタログ。テイスティングワインのリストのほか、各醸造所が勧める近郊の宿泊施設、レストラン、お祭りや観光スポットなどが網羅されている。

好評だったのが、ワインクイーンのカタリーナ・シュターブ、ワインプリンセスのシャーロッテ・フライベルガーが自ら会場を案内するWine Walk(ワイン・ウォーク)。約半時間でクイーンたちのお勧めブースを4カ所ほど回り、生産者の話を聞きながらテイスティングするもので、13回にわたって実施された。プロの案内でブースを回れるため、1回15人の定員はいずれも事前予約で一杯となった。

今回会場で初めて出会った生産者のうち、以下の3醸造所がとくに印象に残った。

伝統種グートエーデルの可能性

バーデン地方はブルグンダー種のワインで知られるが、フランス・スイス国境地帯のマルクグレーフラーラント地域ではグートエーデル(シャスラ)が生産されている。今回、唯一グートエーデルをサービスしていたエルンスト醸造所(Weingut Ernst)のブースを訪れた。

エルンスト醸造所のマルクス&レギーナ・エルンスト夫妻。

醸造家マルクス・エルンストが1993年に立ち上げた、まだ若い醸造所だ。グートエーデルのゼクトもワインも清らかな味わい。

父マルクスが造るグートエーデルと息子ドミニクが造るシャスラ。

現在、父親とともにワイン造りに取り組んでいる長男のドミニクは、高品質のシャスラで知られるスイス、ヴォー州の名門ドメーヌ、ルイ・ボヴァールでの修業を終えたばかり。樹齢30年のグートエーデルをオークの小樽で仕立て、スイス風に「シャスラ」の名称でリリースしている。ドイツとスイスのワイン造りの知恵を継承するユニークな醸造所の今後が楽しみだ。

着々と進化するピーヴィ種

ビオワインの最新動向を知りたくて訪れたのが、ビオ生産者団体ビオランドに所属するファルツ地方のガラー醸造所(Weingut Galler)のブース。

カチア・ガラー夫人。ピーヴィ種がコレクションの中心。

醸造家アンスガー&カチア・ガラー夫妻は、カビ菌耐性品種(ドイツ語でピーヴィー/PiWi種と言う)をコレクションの中心に据えている。90年代にスイスで交配されたカベルネ・ブラン(白)は、カベルネ・ソーヴィニヨンとカビ菌耐性種等の交配。樹齢を重ね、味わいが洗練されてきている。ただ、カベルネ・ブランは花震いが起こりやすく、収量が安定しないのだそう。代わりにガラー醸造所が注目しているのが、まだ品種名がないVB-CAL 6-04(白)とVB 91-26-29(赤)だ。

ガラー醸造所では、VB-CAL 6-04にフェオドラ、VB 91-26-29にクニグンデとそれぞれ名前を付けた。品種名の決定はこれからだ。

VB-CAL 6-04はソーヴィニヨン・ブランとカビ菌耐性種等の交配で完全無農薬が可能、VB 91-26-29はカベルネ・ソーヴィニヨンとカビ菌耐性種の交配で、カベルネ・ブラン以上の低農薬栽培が可能。いずれも伝統種を思わせる落ち着いた風味。ガラー夫妻の試みはピーヴィー種の可能性を感じさせてくれた。

ハウアー醸造所のアンドレも、ピーヴィー種に力を入れている。

同じくファルツ地方のハウアー醸造所(Weingut Hauer)のカベルネ・ブランとカベルネ・ミトス(赤)も好感度の高い味わい。3代目のアンドレ・ハウアーは、カビ菌耐性種が醸造所の売れ筋商品になっていると言う。とくにカベルネ・ブランは外食産業において需要が高まっているそうだ。ピーヴィー種は知名度が低く、風味において伝統種にかなわないという先入観があるが、それは過去の話になりつつあるようだ。