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吉田恵理子

フランス在住/ライター・エッセイスト

ライター・エッセイスト。フランス、パリ在住。 HEG(美食に関する最先端研究機関)卒、WSETアドヴァンスト、SSA酒ソムリエ。著書「ランチタイムが楽しみなフランス人たち」(産業編集センター)。

2018.10.19
column

チェコを訪れたら試したい、ナチュラル系生産者団体“Autentisté”のワイン

現在発売中の「ワイナート」92号でもご紹介したチェコワイン。チェコでも、ナチュラルワインのムーブメントは注目トレンドのよう。その様子をレポート!

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チェコでワインが造られているというと意外に思われるかもしれない。なにしろピルスナータイプのビールの生まれ故郷であり、国民一人あたりのビール消費量が世界一というビール大国。しかし、歴史を紐解くとローマ時代からワインが造られていたというワインの国でもある。

チェコ共和国の首都プラハにあるワインバー&ショップ Veltlin(ヴェルトリン)の壁には、各国の名産品が描かれた中央ヨーロッパの地図が飾られている。試飲の際には、この地図で生産国の位置や特徴についてレクチャーしてくれる。

ワインの生産地はモラヴィアとボヘミアの2地方に存在するが、大半にあたる96%が比較的温暖なモラヴィア地方で造られている。総栽培面積は1万7678ヘクタール。長い歴史のなか、共産主義時代には質より量を求めて生産がなされたため、残念ながら品質は落ちてしまったという。しかし、自由化以降には栽培家、醸造家ともに品質の向上に努めるようになり、現在は国際的にも認められるワインも出てきた。なお、総栽培面積のうち69%が白ブドウ品種。国際的な冷涼地ワイン人気に伴い、酸を高めに出しミネラル豊富なキリッとしたワインが多く生産されるようになってきた。

チェコの自然派ワイン生産者団体Autentistéのウェブサイト。栽培・醸造に関するマニフェスト(憲章)が書かれている(チェコ語のみ)。© AUTENTISTÉ, všechna práva vyhrazena

さて、ここまでが一般的な知識だが、今回ご紹介したいのはチェコの自然派ワインムーブメント“Autentisté”である。現地を訪れて初めて知ったのだが、世界的なナチュラルワイン人気の波はチェコでも健在であった。ただし、“Autentisté”とはただの自然派ワインのことを示すのではない。“Autentisté”とは、チェコ共和国の自然派系ワイン生産者によって作られている生産者グループの名前であり、同時に「チェコの自然派ワイン」であることのトレードマークともなっている。

グループには「マニフェスト(憲章)」があり、それを守ってワインを造ることが必須条件となっている。ほかの団体によるオーガニック認証を取得しているかどうかは問われないが、除草剤や合成殺虫剤、合成肥料の不使用が定められており、遺伝子組換えされた材料を使わない、低収量の徹底、自生酵母のみ使用可、SO2の使用量も規定があるという。ここまで書くと味まで厳しいように思えてくるが、あくまで「自然な味」を追求した結果のルールだ。

Veltlinで試飲した“Autentisté”のワインたち。白も赤も概して酸が高く、ミネラルが豊富な印象。飲み口は比較的柔らかい。レモンのようなキレのよい酸をもつ白は、ボリュームのあるチェコの豚肉や鶏肉料理などによく合いそうだ。

“Autentisté”のワインは、チェコの若い世代で人気を集めており、話題のレストランやバーではこの団体のワインのみを扱うという店も少なくない。現地で出会ったワイン関係者のなかには「あんなものはワインではない」という伝統派(?)も数名いたが、若いソムリエたちが目をキラキラさせながら“Autentisté”ワインの説明をするのを聞いていると、このムーブメントがこの国の食文化の新たな刺激となっているのを感じざるを得なかった。

「(共産主義時代を通して)これまで言われたままに造ってきたワインを、やっと好きなように造れるようになったんです。“Autentisté”というのは、自分の畑とワインに責任と誇りをもつということなんですよ」とチェコ第2の都市ブルノで出会ったソムリエは語っていた。

店のあるカルリーン地区は、元倉庫街を開発したトレンディな注目エリアで、ハイセンスなカフェやレストランが並ぶ。静かなテラス席でワインを楽しむのもいい。

チェコで“Autentisté”を飲むならぜひ訪れたいのが、プラハのVeltlin(ヴェルトリン)。“Autentisté”のワインバー&ショップの先駆けであり、リーダー的存在だ。

というのも、この団体の創始者のひとりであるBogdan Trojakさんがこの店のオーナーだから。8年前にオープンした同店で取り扱うワインは、約2000種類。ワイナリーは50軒ほどだが、小ロットのワインが多いため種類が多くなるそうだ。貴重なものも多いが、だいたいのワインは300〜600チェコ・コルナ(日本円で約1,500〜3,000円)とリーズナブル。「ワインは毎日飲むものだし、価格は抑えめな方がいい」とソムリエのトマスさんは言う。

ソムリエのトマスさん(右)と当日同店を訪れていたカナダのワイン関係者(左)。有料試飲では、リクエストに応じてアイテムをセレクトしてくれる。

細かなマニフェストのある“Autentisté”だが、マルチ・ヴィンテージもの、オレンジワイン、クヴェヴリを使ったワインなど、それぞれ造り方は個性豊か。バーで飲むのに加えて有料試飲もほぼ毎日行なわれており、気に入ったワインを購入し持ち帰ることも可能だ。

<店舗情報>
Veltlin (ヴェルトリン)
Křižíkova 488/115, 186 00 Praha 8
TEL:+420 725 535 395
OPEN:月〜土 17:00〜23:00
http://www.veltlin.cz/autentiste-6

取材協力:チェコ政府観光局
Photo & Text : Eriko Yoshida