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吉田恵理子

フランス在住/ライター・エッセイスト

ライター・エッセイスト。フランス、パリ在住。 HEG(美食に関する最先端研究機関)卒、WSETアドヴァンスト、SSA酒ソムリエ。著書『ランチタイムが楽しみなフランス人たち』(産業編集センター)、『ワインを飲めばすべてうまくいく 仕事から恋愛まで起こる10のいいこと』(インプレスICE新書)。

2023.06.19
column

ポルトの最新スポットWOWは、ワイン好きのための遊園地!

海外旅行に行くチャンスが戻ってきたいま、次の旅先をどこにしようかと日々リサーチしている人も多いだろう。すばらしい候補地はいくつもあるだろうが、ぜひそこにポルトガルのポルトを加えてほしい。ワインラバーならぜひ訪れたい、最旬のポルトをリポート。

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■いま行くべきは、ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア地区

大西洋に面する、ポルトガル第2の都市ポルト。一年を通して温暖な気候と明るい太陽の光、新鮮な魚介類とドウロ地方のワインは、ヨーロッパのみならず世界中のツーリストたちを引きつけてやまない。ポルトは世界遺産の「ポルト歴史地区」で有名だが、いま注目したいのは、その対岸にあるヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア地区だ。

いうまでもなく、ポルトは酒精強化ワインであるポートワインの産地であり、ポルトの街の歴史はこの酒なくしては語れない。ドウロ川沿いの丘陵地で育ったブドウで造られたポートワインは、川を下ってポルトまで運ばれ、ここで熟成され、出荷を待つ。ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア地区は、そのための倉庫(「ロッジ」と呼ばれる)が並ぶエリアだった。

ポートワイン用の倉庫が立ち並ぶヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア地区。
有名ポートワインのワイナリー見学施設が複数ある。
エリア自体がコンパクトなので、1日に数軒を巡ることもできる。
カフェや土産物屋が並ぶドウロ川沿いを、そぞろ歩きするのも楽しい。

ポルトを訪れても、ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア側に行かない人もいる。なぜなら、これまではポートワインの倉庫、そしてそれを使ったワイナリー巡りの場でしかなかったから。いや、それも充分すぎるほどの価値ある場所ではあるが、ポートワイン好き以外へのアピールは、少し小さかったかもしれない。しかしいま、新しくできた「WOW」を中心に、街は大きく生まれ変わってきている。

■ポルトガルのワインと食の魅力満載、注目スポットWOW

もともとポートワイン用貯蔵倉庫の立ち並んでいたヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア地区だが、貯蔵倉庫が別の場所に移ったため使われず、廃墟化したエリアもあった。それらを開発したのが、今回紹介する「WOW(通称ワウ)」である。ワインをテーマにした、総合カルチャースポットだ。手がけているのは、ポートワインのテイラーズ、フォンセカなどをもつフラッドゲート・パートナーシップ。2009年から始まったプロジェクトで、3万8500平方メートル(サッカー場4つ分に相当)と広大だ。

建物はほぼすべて建て替えられているが、もともとの倉庫に使われていた資材を有効活用し、
歴史的景観を変えないよう工夫。施設内はとても広く、まるでひとつの街のようだ。©WOW

WOWを構成するのは、7つのミュージアム&体験施設、2カ所の企画展ギャラリー、12のレストラン&カフェ、ファッションから食品までポルトガルメイドのアイテムのみを扱うショッピングエリア、そしてワインスクールなどだ。同じエリアにはワインがコンセプトのホテル「ザ・イエットマン・ホテル」もあり、滞在から食事、カルチャーまで、ひとつの場所ですべて楽しめる。盛りだくさんなので、すべてご紹介できないのが残念だが、いくつかをピックアップしてお届けする。

スポット1
大人の知識欲を満たす「ザ・ワイン・エクスペリエンス

ワインに関する基礎から、ポルトガルのワイン文化までを楽しみながら学べる施設がこちら。ポートワインに限らず、ワイン一般について知れるので、すでに知識のある愛好者にとっては学び直しのチャンスにもなる。とくにポルトガルワインについての展示は詳しく、各ワイン産地の風景や土壌構成などを比較して見ることができる。原寸大のポートワイン樽や、ポルトガルの各産地の街のレプリカもあり、ワインの世界を身近に感じられる。

ブドウ果実の巨大な模型。ブドウの概念を変える、美しいデザイン。


ポルトガル各産地のブドウ畑に関する展示では、風景、土壌などを比較して見られる。
実際に産地を訪れているかのようだ。


実際に使われたポートワインの樽を展示。大きな樽は驚愕のサイズ。
中に大人が普通に居られるほど天井が高く、面積も広い。©WOW


スポット2
現地でワインレベルをアップ。「ザ・ワイン・スクール

WOW内にあるスクールだが、スケジュールが決められた一般のスクールとは違い、受講者に合わせて内容を決めるテイラーメイド。まったくの初心者から、「70年代のビンテージポートワイン比較試飲」といったマニアックなテーマを希望する人まで、誰でも受講可能だ。ウェブサイトから申し込み可能だが、スクールに直接立ち寄っての申し込みや、またタイミングがよければその場での受講もOK。価格は20ユーロ〜。ポルトガル語、英語が選べる。テーマ別や、生産者を招いたワークショップも随時開催。

少人数の場合は、カジュアルに小さなテーブルで講義を受ける。
この日は、「ドウロ地方のライトなワイン」をテーマにリクエスト。
今回の講師は、マネージャーでもあるジョゼ・サー。
前職は機械工学の専門家で、ポートワイン用ブドウ踏みマシンを開発していたという。


WSET取得コース、ワイン業界向けソムリエ講習なども行なっている。
「このスクールを通して、ポルトガルワイン業界全体を盛り上げていきたい」(ジョゼ・サー)。


スポット3
新ポルトガル・ガストロノミー体験、「Mira Mira By Ricardo Costa

WOWには、伝統的なポルトガル料理の店からステーキハウスまでさまざまなレストランがあるが、中でも注目なのはこちら。ザ・イエットマン・ホテルのエグゼクティブ・シェフで、ミシュラン二つ星をもつリカルド・コスタが手がける、新感覚のポルトガル・キュイジーヌ。アヴェイロ出身のシェフが、ポルトガル全土の料理に新たな解釈を加え、軽く鮮やかでクリエイティブな「新感覚のポルトガル料理」を提供。出汁など日本の素材も用いられており、洗練された皿にも、どこか親しみを感じられる。もちろん合わせるのは、ソムリエによってポルトガル全土から厳選されたワインたちだ。

モダンと温かみが調和するインテリア。
テラスからは、ポルト歴史地区が一望できる。©WOW


アマランテのカーサ・ダ・カルサーダ・ホテルでミシュラン一つ星取得。
2011年よりザ・イエットマン・ホテルのエグゼクティブ・シェフ、ミシュラン二つ星。©WOW


左から、フィッシュ&チップス。クモガニ、発酵させたキュウリ、ハラペーニョ。バカリャウ、豆のシチュー、エビ、チョリソーのオイル。


▼今回宿泊したホテルはこちら!
The Yeatman Hotel (ザ・イエットマン・ホテル)

©WOW

ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイヤ地区の高台に経つ、「ワインホテル」をコンセプトにしたラグジュアリーホテル。ルレ・エ・シャトー会員。全109室がドウロ川に面し、部屋からは対岸のポルト歴史地区を一望できる。ワインセラーは1300銘柄、3万本のコレクションを誇り、96%がポルトガル産。ホテル内のレストランとバーでは、常時約100種類のグラスワインを楽しめる。毎週木曜にワインディナーを開催(100ユーロ/食事込)。宿泊者の希望に応じて、ホテルにてワインのマスタークラスを開催。ワインツアーのアレンジも可能。

ワインディレクターのエリザベト・フェルナンデス(左)と
PRマネージャーのクレール・オーケット。


ワインセラーではマスタークラスも行なわれる。