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吉田恵理子

フランス在住/ライター・エッセイスト

ライター・エッセイスト。フランス、パリ在住。 HEG(美食に関する最先端研究機関)卒、WSETアドヴァンスト、SSA酒ソムリエ。著書『ランチタイムが楽しみなフランス人たち』(産業編集センター)、『ワインを飲めばすべてうまくいく 仕事から恋愛まで起こる10のいいこと』(インプレスICE新書)。

2022.07.28
column

パリで「シャンドン シャン デ シガル」の世界を体験

1959年のアルゼンチンでのスタートから、カリフォルニア、ブラジル、オーストラリア、中国など、世界中でスパークリングワインの新天地を求め、新たなアイテムを送り出してきたシャンドンに、フランスから生まれた「シャンドン シャン デ シガル」が加わった。発売に合わせ、5月18日にパリのモエ ヘネシー社にて行なわれたテイスティング セミナーとグローバル ローンチ パーティに参加した。

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「シャンドン シャン デ シガル」は、南フランス コート・ド・プロヴァンス産の8種類のブドウ(グルナッシュ、サンソー、シラー、ロール、カベルネ・ソーヴィニョン、ムールヴェードル、ティブーラン、カリニャン)を使用したブリュット ナチュールのロゼ スパークリングだ。

醸造技術責任者のオードリー・ブルジョアは、生物科学・食品工学のエンジニア。

アロマティックなスパークリングワインを開発する、というアイデアをもとに、完成まで5年の年月を費やした。醸造チームのアドバイザーとして、元ドン ペリニヨンの醸造最高責任者リシャール・ジェフロワ、元クリュッグ最高醸造責任者で現クリュッグ副代表兼取締役のエリック・ルベルが参加。醸造技術責任者のオードリー・ブルジョアと、経験豊かなふたりは何度もテイスティングを重ね、自由に意見を交換し、いまのワインができ上がった。

使用するブドウはすべてオーガニック、そして醸造段階で一切の動物性タンパク質を使用しないヴィーガンワインでもある。「プロヴァンス地方でのオーガニックブドウ栽培量は非常に少ないが、品質の高いブドウを生み出す信頼できる農家との契約により、すべてオーガニックのブドウを使用することができました。ベースワインは、醸造時にできるだけ化学的な手を加えないよう、自然な造りを心がけています」(ブルジョア)。

パッケージにもエコロジーを意識しており、非常にシンプルなデザインで、栓のまわりのメタルカバーも不使用。ボトルは560グラムと一般のスパークリング用ボトルに比べると30パーセントも軽量で、CO2排出軽減に貢献する。ノベルティのバッグはウォッシャブル・ペーパー製で、そのまま入れるだけで1時間ワインの温度を保つという。

(左)モエ ヘネシー パリ本社の、シャンドン用テイスティングルーム。
「シャンドン シャン デ シガル」のイメージが映し出され、南仏を思わせるデコレーション。
(右)ブルジョアと、シャンドン グローバル ブランド カルチャー ディレクターのモーガン・ポン=ブリュワン。
2種のカナッペを試食し、ワインの味の変わり方を比較。

二次発酵にはシャルマ方式を採用。「シャンドンでは、シャルマ方式、トラディショナル方式ともに行なってきた経験とノウハウがあります。どちらも開発時に試した結果、より印象的なフルーツの香りとフレッシュ感を残すシャルマ方式を選んだのです。トラディショナル方式は長期熟成に向き、酵母の香りやワインの厚みが出ますが、今回はブドウ品種それぞれがもつフローラルやフルーティな特徴をより残したかったのです」(ブルジョア)。

ロゼはブレンドが非常にむずかしいワインだと言われるが、「シャンドン シャン デ シガル」は品種を8種類も用いている。「ブドウはそれぞれに味わいと香りの特徴があるので、どのように長所を引き出していくのかが課題でした。色の決定にもこだわり、あまりピンクが出すぎないよう工夫し、また薄くなりすぎないように研究を重ね、エレガントでほどよい濃さのサーモンがかったピンクを出すことに成功しました」(ブルジョア)。

サーモンがかったピンクは、まるで夕日のような色合いだ。

「シャンドン シャン デ シガル」の味のいちばんの特徴は、ブリュット ナチュールであるため非常にドライなこと。一般的にプロヴァンスのロゼは多かれ少なかれ甘みを感じることが多い。しかし、このワインは糖度が1リットルあたり3グラム以下とほぼ甘みを感じない。華やかな香りなどにより、味を辛く感じすぎないのは、プロヴァンスのブドウの為せる技だろう。

白桃や赤いサクランボ、甘すぎないイチゴの香りから、キレのよいフレッシュなオレンジとレモンの酸、アプリコット、ピンクグレープフルーツの苦み、かすかな塩気が続く。ワインだけよりも、何か食事をしながら飲みたいワインだ。泡は細かく美しい。

「シャンドン シャン デ シガル」では、氷を加えるロックスタイルも推奨している。氷を加えると、ミネラル感が際立ち、さらに爽やかな飲み心地に。ワインそのものの構成がしっかりしているので、氷を加えたあとも安心して飲み続けることができる。蒸し暑い日本の夏、テラスで飲むワインには最適ではないだろうか?

(左)パーティのケータリングを担当したのは、ヴィーガン・アフリカンで人気のシェフ、グローリー・ガベ。
(右)本社屋上で行なわれたパーティには、当日は多くのインフルエンサーが招かれ、華やかな雰囲気だった。

訪れたこの日、パリは30度にもなる季節外れの夏日だった。“シャン デ シガル”とは、フランス語で「セミの歌」の意味。まるでセミの歌声の洪水が聞こえるプロヴァンスがパリにやってきたみたいな暑さの中、パリの夕景を眺めながら味わうロゼ スパークリングワインが格別だったのは、言うまでもない。

「シャンドン シャン デ シガル」スペシャルサイト
https://www.mhdkk.com/brands/chandon/special/chantdescigales/

■商品情報
アルコール:12.5%
容量:750ml
価格:3,905円(税込)
※日本では4月中旬に発売済み。

Text & Photo:Eriko Yoshida