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岩本順子 Junko Iwamoto

ドイツ在住/ ライター・翻訳家

ライター・翻訳家。ドイツ、ハンブルク在住。1999年にドイツの醸造所で研修。2013年にWSETディプロマ取得。現在ドイツの日本語新聞「ニュースダイジェスト」に「ドイツワイン・ナビゲーター」「ドイツ・ゼクト物語」を連載中。http://www.junkoiwamoto.com

2017.09.16
column

ドイツ・ハンブルク発 世界のワイン情報 第3回
「グルナッシュ・デュ・モンド・2017」サルデーニャ島で開催!

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(グルナッシュ・デュ・モンドの看板。)

イタリア・サルデーニャ島で2月上旬に開催された国際ワインコンクール「グルナッシュ・ デュ・モンド」に審査員として参加した。2013年にスタートした同コンクールは、数ある品種別国際ワインコンクールのひとつ。エントリー可能なのはグルナッシュ種(グルナッシュ・ノワール、グルナッシュ・グリ、グルナッシュ・ブランの3種)を60%以上使用したワイン。主催者はルーション・ワイン・インタープロフェッショナル・カウンシル(CIVR)。第5回目となる今回は、イタリアでグルナッシュがもっとも多く栽培されているサルデーニャ島が開催地に選ばれ、現地の農業・農村開発機関ラオーレ(Laore)の協力を得て実現した。

(中央がCIVR会長ファブリス・リュー氏。講演会のオープニングで)

欧州で実施されている品種別国際ワインコンクールには、フランス開催の「シャルドネ・デュ・モンド」(1993年創設/以下同)、「ミュスカ・デュ・モンド」(01年)、「シラー・デュ・モンド」(07年)、「コンクール・モンディアル・デュ・ソーヴィニヨン」(10年)、スイス開催の「モンディアル・デ・ピノ」(97年)と「モンディアル・デュ・シャスラ」(12年)、ドイツ開催の「ベスト・オブ・リースリング」(06年)などがある。

国際ワインコンクールは通常、審査に終始するが、「グルナッシュ・ デュ・モンド」では、学術講演、現地の生産者を動員したワインの試飲会もあり、審査終了後には全エントリーワインの試飲会も行なわれた。各国から集った100人の審査員のほかに、世界各地の約50名のグルナッシュの生産者がビジターとして参加し、グルナッシュのプロたちの情報交換の場にもなっている。エントリーワイン684本のうち、213本が受賞(金賞104、銀賞87、銅賞22)。入賞ワインは4月中旬にヴェローナで開催されたイタリア最大のワイン見本市「ヴィン・イタリー」で公式発表された。

(審査員は約100名。エノログ、ジャーナリストらが15カ国から集った。©CIVR)



(アルゲーロで行われた講演会。©CIVR)

グルナッシュの栽培面積がもっとも広いのがスペイン。同地では「ガルナッチャ」と言い、北部のアラゴン州、カタルーニャ州とその周辺地域で約10万ha栽培されている。次いで多いのがフランス、南ローヌ地方、ランゲドック・ルーション地方にトータル約9万 haの畑がある。シャトーヌフ・デュ・パプ、コート・デユ・ローヌの主要品種であるのは周知の通り。南仏のリバサルテやバニュルスといった甘口の酒精強化ワインにも使われる。

イタリアでの総栽培面積は7800ha。うち97%に相当する7600haがサルデーニャ州にあり、カンノナウ(Cannonau)の名称で知られる。このほか、ヴェネト州でも少量栽培され、タイ・ロッソ(Tai Rosso, 06年まではトカイ・ロッソ)と呼ばれる。

コンクールにはレバノン、マケドニア、オーストラリア、南アフリカからもエントリーがあり、種類も赤、ロゼ、ブラン・デ・ノワール、スパークリングワイン、酒精強化ワインとバラエティ豊か。スペインのガルナッチャのレベルの高さが印象的だった。

(最終日のパーティでは入賞ワインの全リストが配布され、全エントリーワインが試飲に供された。©CIVR)



(最終日の試飲風景。サルデーニャ・ワインのコーナーにて。)

主催者の粋な計らいで、コンクールと講演は北部のアルゲーロ、最終日のパーティは南部のカリアリで行なわれた。現地ワイナリーのカンノナウ・コレクションの試飲会は、北部、中部、南部と地域別に3日間に分けて、それぞれアルゲーロ市会議場、ヌーオロ民族学博物館、世界遺産であるバルーミニのヌラーゲ考古遺跡のビジターセンターで行なわれた。ヌラーゲとはサルデーニャ島独自の、青銅器時代の巨石文明の建造物のことだ。

(世界遺産「スー・ヌラージ・ディ・バルーミニ」ヌラーゲ考古遺跡。サルデーニャはヌラーゲ文化の島だ)



(「スー・ヌラージ・ディ・バルーミニ」遺跡上部からの眺め)

長寿島としても知られるサルデーニャでは、古来から野生ブドウが生育し、ギリシャ文明の伝播以前からワインを生産していたという。土壌は地域ごとに変化に富むが、花崗岩が多く、痩せており、ワイン造りと牧羊が発展した。ペコリーノチーズの種類が豊富で、島では成人の9割が日常的にワインを飲んでいるという。

グルナッシュはアラゴン王国(スペイン北部)からフランスへ伝播した品種だと言われるが、サルデーニャのカンノナウの遺伝子は、最新のDNA分析によるとスペインやフランス、イタリア半島のものとは異なり、アルメニア辺りのブドウに似ているという。プラムのムースのような風味の素朴で気取らない味わいだ。おもに赤とロゼが造られているが、近年は、スパークリングワインも登場している。一方、ヴェネト州のタイ・ロッソは、カンノナウと対照的な線の細い、精緻な味わいが魅力だ。

(サルデーニャ北部ドルガーリにあるカンティーナ・ドルガーリの「ホルトス」(Isola dei Nuraghi IGT)はカンノナウにシラーをブレンド。金賞を受賞した)



(サルデーニャ北部アルツァケーナにあるスラウ社の100%カンノナウの伝統製法スプマンテ、ロゼ、ブリュット。銀賞を受賞。サルデーニャではシャルマ製法が主流で伝統製法はまれ。ゼネラルマネジャーのファビオ・マゴン氏)



(同じグルナッシュでも、カンノナウとは対照的な味わい。ヴェネト州アルクニャーノにあるファットリア・レ・ヴェグレのタイ・ロッソ(Tai rosso DOC)が印象的だった)



(カリアリ空港には、サルデーニャのトップワイナリー、アルジオラス社のワインバーがある)

主催者である CIVR会長のファブリス・リュー氏は「5年前にスタートしたとき、じつはカンノナウのことを知らなかった」と白状する。コンクールを重ねるうちに情報交換が盛んになり、カンノナウと出会った。「グルナッシュ・ デュ・モンド」は単なるワインコンクールに留まらず、ワイン文化発見の契機としても機能している。記者会見では、2年後を目標とするグルナッシュ国際会議の開催計画が発表された。


Photo:コピーライト表記のないものは著者撮影