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岩本順子 Junko Iwamoto

ドイツ在住/ ライター・翻訳家

ライター・翻訳家。ドイツ、ハンブルク在住。1999年にドイツの醸造所で研修。2013年にWSETディプロマ取得。現在ドイツの日本語新聞「ニュースダイジェスト」に「ドイツワイン・ナビゲーター」「ドイツ・ゼクト物語」を連載中。 http://www.junkoiwamoto.com

2017.10.17
column

ドイツ・ハンブルク発 世界のワイン情報 vol.05 「ブラジルで毎年開催!生産者と消費者をつなぐ、世界最大級のワイン・テイスティング」

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ブラジルワインの主要産地は、アルゼンチンとウルグアイに隣接する最南州、リオ・グランジ・ド・スル州だ。同州ではブラジルワインの約90%が生産されている。州都ポルト・アレグレの北西約120kmのところに、醸造所が集中するワインの首都、ベント・ゴンサウヴェス市がある。1875年からイタリア人移民が入植しはじめ、美食文化とワイン文化が華開いた、もうひとつの「イタリア」だ。

ブラジルらしさあふれるワイン・イべント

ベント・ゴンサウヴェス市と言えば、隔年開催のブラジル最大のワインフェア「フェナヴィーニョ(Fenavinho)」が有名だ。1967年から開催されているもので、会期は1カ月にもおよぶ。産業見本市とワイン・ミュージアムを合わせたような構成で、一般客をも対象としており、会場を一巡りしながらワインについての基礎知識を得ることができる。夜にはワインをテーマとするオペラなども上演され、家族連れも訪れるユニークなフェアだ。次回は19年に開催される。

同市では毎年、世界最大規模と言われるワインのテイスティング・イべント「国内ワイン品評会(Avaliação Nacional de Vinhos)」も行なわれている。主催者は醸造家団体であるブラジル醸造学協会(ABE Associação Brasileira de Enologia)。協会のテイスティングチームが、出荷前の新ヴィンテージのワインからブラインド・テイスティングで選んだベストワイン16点を、総勢約850人で同時にブラインド・テイスティングするものだ。

(©Associação Brasileira de Enologia / 生産者やワイン関連業者だけでなく、一般愛好家も多数参加)

市場に出回る前のワインをテイスティングできるとあって、チケットは毎年、発売直後に売り切れてしまうという。参加者は生産者のほか、新酒を心待ちにしている一般のワイン愛好家でブラジル各地から訪れる。

生産者と消費者をダイレクトに繋ぐ

同品評会は93年に18醸造所のワイン42種類、参加者160名でスタート。近年では、約60の醸造所から300種類以上のワインが寄せられる。参加者も06年頃から増加し、多い年は900人を数える。毎年入れ替わるコメンテーターは、ブラジル各地で活躍するジャーナリスト、ソムリエ、医者、醸造家らで構成され、海外からも数名が招聘されるほか、会場からもくじ引きで1名が選ばれる。

(©Associação Brasileira de Enologia / 第25回目を迎えた「国内ワイン品評会(Avaliação Nacional de Vinhos)」のコメンテーターたち。中央はブラジル醸造学協会会長エデガー・スコルテガニャ氏。右から3番目が筆者)


9月23日に開催された、17年ヴィンテージの品評会に、コメンテーターのひとりとして参加した。17年ヴィンテージは、6州の59醸造所から計327点が寄せられた。新ヴィンテージの品評会であるため、スパークリングワインのエントリーはすべてベースワイン。8月の事前審査段階ではボトリングされていないものがほとんど。実行委員会は、それぞれの醸造所に出向き、タンク、あるいは樽から直接ボトリングして集めている。

118人の醸造家が8日間にわたり、327点のワインをブラインド・テイスティングし、OIV方式で採点。品評会では、各々のカテゴリーでもっとも高く評価された16点のワインが供された。当日は90人のサービス担当者が、またたく間に850人のグラスにワインを注ぎ、聴衆と壇上のコメンテーターが 1点ずつ同時にブラインド・テイスティングを行ない、16人のコメンテーターが代わる代わるコメントを行なった。ワインの銘柄はイべントの最後に公表された。

(©Associação Brasileira de Enologia / スピーチをするエデガー・スコルテガニャ氏)

ブラジル醸造学協会会長のエデガー・スコルテガニャ(Edegar Scortegagna)氏は、「『国内ワイン品評会』は単に品質を競うコンクールではなく、生産者と愛好家が新しいヴィンテージの出来を祝し、ともに新酒を味わい、交流することが目的。ブラジルのワイン業界がもっとも大切にしている、造り手と飲み手をダイレクトに繋ぐイべントなのです」と語る。

主催者が知る限りでは「国内ワイン品評会」は世界最大のブラインド・テイスティングだそうだ。この日は、ワイン業界における貢献者に与えられる「ヴィーティス・トロフィー」の授与式も行なわれた。1984年から99年まで、ブラジル最大の協同組合アウロラ醸造所で醸造責任者を務めたマリア=ヘジーナ・フェレト=フローレス(Maria Regina Ferreto Flores)氏と『Bon Vivant』誌のジャーナリストでソムリエのアンドレイア・デボン(Andréia Debon)氏が受賞した。

今回テイスティングに供された16点のワインは以下の通り。
(品種名、醸造所名。カッコ内は醸造所所在地の順、RSはリオ・グランジ・ド・スル州の略称)

スパークリングワイン用ベースワイン
Chardonnay/Riesling Itálico – Chandon (Garibaldi – RS)
Chardonnay – Casa Valduga (Bento Gonçalves – RS)
Chardonnay – Domno do Brasil (Garibaldi – RS)

白ワイン、辛口、非アロマティック系品種
Riesling Itálico – Cooperativa Vinícola Aurora (Bento Gonçalves – RS)
Chardonnay – Vinícola Almadén (Santana do Livramento – RS)
Chardonnay – Vinícola Cave de Pedra (Bento Gonçalves – RS)

白ワイン、辛口、アロマティック系品種
Sauvignon Blanc – Vinícola Fazenda Santa Rita (Vacaria – RS)
Moscato Giallo – Cooperativa Vinícola São João (Farroupilha – RS)

赤ワイン、辛口
Cabernet Franc – Vinícola Salton (Bento Gonçalves – RS)
Petit Syrah – Luiz Argenta Vinhos Finos (Flores da Cunha – RS)
Merlot – Casa Perini (Farroupilha – RS)
Merlot – Miolo Wine Group (Bento Gonçalves – RS)
Cabernet Franc – Giacomin Indústria de Bebidas | Vinhos Hortência (Flores da Cunha – RS)
Malbec – Vinícola Almaúnica (Bento Gonçalves – RS)
Cabernet Sauvignon – Guatambu Estância do Vinho (Dom Pedrito – RS)
Tannat – Don Guerino Vinhos e Espumantes (Alto Feliz – RS)

国内ワイン品評会(Avaliação Nacional de Vinhos)
https://www.enologia.org.br/avaliacao-nacional-de-vinhos/