
岩本順子 Junko Iwamoto
ドイツ在住/ ライター・翻訳家
ライター・翻訳家。ドイツ、ハンブルク在住。1999年にドイツの醸造所で研修。2013年にWSETディプロマ取得。著書に『おいしいワインが出来た!』(講談社)、『ドイツワイン・偉大なる造り手たちの肖像』(新宿書房)、ドイツワイン・ケナー資格試験用教本内のテキスト『ドイツワイン・ナビゲーター』などがある。 http://www.junkoiwamoto.com

ブドウ栽培と地域発電は両立可能か ガイゼンハイム大学が実験中〜ドイツ・ハンブルク発 世界のワイン情報 vol.48
ブドウ栽培・ワイン醸造分野でドイツをリードするラインガウ地方のガイゼンハイム大学で、「アグリ・フォトボルタイク(APV)」の実証実験が始まっている。ブドウ畑で太陽光発電を実施するもので、プロジェクト名は「VitiVoltaic4Future」。この実験では、同一の土地で、ブドウ栽培と地域発電の二重利用が可能かどうかを検証すると同時に、気候変動による畑の環境変化にも対応した、持続可能なブドウ栽培実現の可能性を探る。
今年3月、ブドウ栽培研究所所長であるマンフレッド・シュトル教授の案内で現場を視察した。実験用の区画は1,650平方メートル、植えられているのはリースリングで、植栽密度は1ヘクタールあたり5,000本だ。地上から3.5メートルの高さに、屋根のように畑を覆う太陽光パネルが設置されている。小さめのセルが間隔を空けて配置されたモジュールで、透過率50%を確保しており、畑には木漏れ日のような柔らかな光が射しこんでくる。パネルは、太陽の位置に合わせて東西方向に向きを変えることも可能だ。
実験畑に設置された太陽光パネルによる年間発電量は96.99 MWh(1ヘクタールあたり587.8 MWh/haに相当)。発電で得られる電力を、フェンスに設置したヒーターケーブルにつなげば、放熱によって霜害を防ぐことも可能だ。モジュール自体に雨水を集める機能をもたせ、地下の水槽に溜め、灌漑用水を確保することもできる。

この実験畑では、大学の複数の研究チームが、太陽光パネルがブドウの成長にどのような影響をもたらすか、またシステム自体が経済的に見合うかどうかを調査中だ。太陽光パネルは日陰を作り、ブドウを直射日光による日焼けから守る。ほかにも土壌の温度を下げたり、土壌の水分の蒸発を減らすなど、ミクロクリマをある程度調節する。さらに、雨よけとなって、カビ菌の発生を抑えたり、モジュールが充分に頑丈であれば、雹害をからブドウを守ることも期待できる。
今回見学したのは固定式のモジュールだったが、すでに可動式で折りたたみ可能なモジュールも開発されているという。夜間や強風時、あるいは換気をしたいときにたたんで片付けておくことができる優れもので、若木の畑などに短期導入するといった活用法がある。また、畑ではAPVプラントから自動的に充電、排出ガスゼロで無人走行が可能な作業車の稼働実験も行なわれている。将来、こうした無人車が畑作業を担当するようになれば、醸造家たちの作業負担は大幅に軽減されるだろう。
最先端のブドウ畑を見学する際に、シュトル教授は、ノンアルコールドリンクをふるまってくれた。

ガイゼンハイム大学の学生たちが開発した「Grape T」(4.90€)という商品で、ブドウ果汁をベースとして、緑茶、マンダリンオレンジ、レモンバームで風味づけした爽やかな味わいの炭酸飲料だ。現在、大学付属醸造所の人気商品となっているという。ガイゼンハイム大学醸造所は、研究所創設時の1872年からワインを生産しており、1995年よりVDPプレディカーツヴァイン醸造所協会のメンバーとなっている。
Text & Photo : Junko Iwamoto

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