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綿引まゆみ

日本在住/ワインジャーナリスト

会社員を経て、フリーランスのワインジャーナリストへ。ワイナート本誌のほか、ライフスタイル誌、オンラインメディアなどに執筆。ビアソムリエ(JBSA)、チーズプロフェッショナル(CPA)、コーヒー&ティーアドバイザー(ADRJ)。公式ブログ:https://blog.goo.ne.jp/may_w/

2020.09.24
column

カ・デル・ボスコ ZOOM クラウド・テイスティング

イタリアはロンバルディア州エルブスコのワイナリー、カ・デル・ボスコ社が、イタリアと日本をオンラインでつなぎ、マウリツィオ・ザネッラ社長のリードで、スペシャルテイスティング「Ca‘del Bosco ZOOM Cloud Tasting」を7月に開催した。

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地元に根差した
ワインを造る

フランチャコルタのメッカと呼ばれるエルブスコの中心地にワイナリーを構えるカ・デル・ボスコは、フランチャコルタ屈指の生産者として知られているが、この地域伝統の白ワインや赤ワインも生産し、高い評価を受けている。その知名度の高さから、歴史の長いワイナリーかと思いきや、「我々の創業は1964年で、まだ50、60年の若いワイナリー」と、ザネッラは言う。しかし、半世紀で名を上げた実力者であることは間違いない。

フランチャコルタは、瓶内二次発酵による発泡性のあるDOCGワインで、世間的には、イタリア最高峰のスパークリングワインとして認識されているが、ザネッラは、「フランチャコルタは単なるスパークリングワインではない」と言う。

この地域では、非発泡性のワインもフランチャコルタと呼ばれていた時代がある。67年に承認されたDOCピノ・ディ・フランチャコルタは、ピノ・ビアンコを自然発酵させた白ワインで(ピノ・グリージョとピノ・ネロも使用可)、非発泡性のワインと発泡性のワインが存在していたのである。その中のスプマンテが独立し、95年にDOCGフランチャコルタに昇格し、非発泡性ワインはDOCクルテフランカ(白ワイン、赤ワイン)となった。

こうした背景から、フランチャコルタは単にスパークリングワインではない、とザネッラは捉えている。

カ・デル・ボスコ社 マウリツィオ・ザネッラ社長



ピノ・ディ・フランチャコルタ時代の60年代から70年代初頭は、のちのフランチャコルタにつながるルネッサンス期だったという。醸造方法の研究が進み、瓶やタンクで自然発酵させていたものから、タンク内での二次発酵、さらには瓶内二次発酵が増えた。醸造方法の進歩で品質が向上していく中で、80年代には、ブドウ畑にも目が向けられるようになっていく。

徹底した品質管理

カ・デル・ボスコでは畑も重視する。ザネッラいわく、「畑がワインを造る。ブドウのジュースが、フレッシュでミネラルにあふれたワインになる」、「ワイングローワーは農夫。だから、我々はブドウもワインも買わない」。

カ・デル・ボスコでは、現在、土壌の特性ごとに小さく区分けされた245ヘクタールの自社畑を所有している。ブドウの樹齢は平均40年。08年にオーガニック栽培に転換し、ケミカルなものは一切使っていない。オーガニック栽培に取り組むために、ブドウの病気や対処方法も丹念に調べたという。

ブドウ畑は区画ごとに管理され、収穫後のブドウはコンピューターで計量、冷蔵室で22時間保冷される。ユニークなのは、丁寧な選果をした後、水温11度の水でブドウを洗い(「ベリースパ」と彼らは呼ぶ)、しっかり乾燥させる作業である。この作業によって、クリーンな味わいのワインになるのだという。このwash & dryは08年からスタートし、13年からはすべてのワインで実施している。

フランチャコルタ
第4の品種に注目


DOCGフランチャコルタに使用される認可ブドウ品種は、シャルドネ、ピノ・ビアンコ、ピノ・ネロの3種である。しかし、17年にイタリア農水省の承認を経て、第4の品種エルバマット(Erbamat)が加わった。エルバマットは古くからある土着の白ブドウ品種で、サテンを除くすべてのスタイルで10パーセントを上限に使用することが可能になったのである。

カ・デル・ボスコでは、エルバマットを0.5ヘクタール未満と少量栽培しており、樹齢8、9年になる。すでにエルバマットはフランチャコルタとして仕込んでおり、24年にファーストヴィンテージがリリースされる予定だという。果たしてどんな味わいのフランチャコルタになるのか。少量なのでかなり厳しい争奪戦になりそうだが、非常に楽しみだ。

<カ・デル・ボスコ テイスティング>

今回のオンラインテイスティングでは、カ・デル・ボスコのブランドアンバサダー、ルカ・チナッキのリードの下、参加者も実際にカ・デル・ボスコのワイン3アイテムを試飲しながら進められた。

フランチャコルタ エキストラ ブリュット キュヴェ・プレステージ N.V.
Franciacorta Extra Brut Cuvée Prestige N.V.

オーガニック栽培に転換し、ベリースパを開始した08年、カ・デル・ボスコのマルチヴィンテージフランチャコルタが一新され、キュヴェ・プレステージとして日本にデビューした。印象的な透明ボトルに入り、紫外線防止のためのオレンジ色のUVフィルムで包まれた、カ・デル・ボスコの顔と呼ばれるフランチャコルタである。

シャルドネ75%、ピノ・ビアンコ10%、ピノ・ネロ15%。134区画もある自社畑の中から厳選されたブドウのみを使い、収穫ロットごとに仕込まれ、最高年のヴィンテージワインをリザーヴワインとしてブレンドしている。瓶内熟成は平均25カ月。

特徴的なイースト香とトロピカルフルーツの香りが魅惑的。透明感のあるピュアなフルーツに、フレッシュな酸味の心地よさと、リザーヴワインから来るコクとうまみが加わり、完璧なパランス。どんなシーンでも安心して楽しめる一本だ。(参考小売価格: 5,000円)

フランチャコルタ ヴィンテージ・コレクション ミッレジマート サテン 2015
Franciacorta Vintage Collection Millesimato Saten 2015

シルクという意味のサテンは、シャルドネをメインとし、ピノ・ビアンコを最大50%としたフランチャコルタのスタイルのひとつである。ミッレジマートを名乗れるのは、同一年のブドウを85%以上使用し、収穫から37カ月以上を経たワインのみ。

シャルドネ85%、ピノ・ビアンコ15%。瓶内熟成48カ月以上。ドザージュは、ほかのフランチャコルタより少ない1リットルあたり3グラム。甘みを抑えてはいるが、テクスチャーはクリーミーでソフト。繊細でいてシャープなキレのよい酸が、非常にエレガント。秘めた力強さがあり、この先も長く味わえそうなキュヴェ。(参考小売価格: 8,000円)

コルテ・デル・ルーポ クルテフランカ ロッソ 2016
Corte del Lupo Curtefranca Rosso 2016

コルテ・デル・ルーポは、16年が初ヴィンテージの赤のスティルワインで、原産地呼称はDOCクルテフランカ。メルロ38%、カベルネ・ソーヴィニヨン33%、カベルネ・フラン22%、カルメネーレ7%を使用し、熟成は最低2年以上。

チナッキによると、お勧めサービス温度は16~18度。夏場は少し冷やし気味がよいという。この温度で口にすると、最初は硬い印象だが、メルロがもたらすチェリーをはじめとしたベリー類のやわらかなフルーティさが、すぐにやってくる。カベルネ・フランからのエレガントさ、カルメネーレからの丸みのあるスパイシーさがあり、それらをカベルネ・ソーヴィニヨンの太い骨格が支え、安定感のある見事なバランスを生み出している。(参考小売価格:4,800円)


カ・デル・ボスコ ブランドアンバサダー ルカ・チナッティ



カ・デル・ボスコといえば、今回テイスティングした以外にもさまざまな素晴らしいフランチャコルタを生産している。しかし、スティルワインのDOCクルテフランカ「コルテ・デル・ルーポ」には驚かされた。素晴らしい赤ワインである。カ・デル・ボスコのほかの赤ワインも飲んでみたくなった。白のスティルワインにも興味を惹かれるラインナップが揃っている。

実力のあるワイナリーは、どのカテゴリーも安心してワイン選びができる、ということだ。

輸入元:(株)フードライナー
www.foodliner.co.jp/manufacturer/lombardia/post-2.html

Text & Photo:Mayumi Watabiki