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岩本順子 Junko Iwamoto

ドイツ在住/ ライター・翻訳家

ライター・翻訳家。ドイツ、ハンブルク在住。1999年にドイツの醸造所で研修。2013年にWSETディプロマ取得。現在ドイツの日本語新聞「ニュースダイジェスト」に「ドイツワイン・ナビゲーター」「ドイツ・ゼクト物語」を連載中。 http://www.junkoiwamoto.com

2021.06.08
column

知られざる北イタリアのチーズ、PIAVE(ピアーヴェ)〜ドイツ・ハンブルク発 世界のワイン情報 vol.34

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(ヴェネトのチーズ、ピアーヴェDOP)

1月下旬、イタリアチーズのウェビナーに参加した。ピアーヴェ・チーズ協会(Consorzio per la tutela del fomaggio Piave)が、EUの支援を得て行なっているキャンペーン活動のひとつで、 事前に3種類の「ピアーヴェ」が届いた。

当日のナビゲーターは、ウィーンでイタリアン・バー&ビストロ「カフェ・アルテンベルク(Caffè Altenberg)」を経営し、自らシェフを務めるミルコ・バンディーニさん。アンコーナ出身のミルコさんはアーティスト・写真家としてもよく知られている。ウェビナーは、アート作品であふれるミルコさんの店で行なわれた。

イタリア北部のチーズといえば、ポー川流域で作られるグラナ・パダーノ、おもにエミリア・ロマーニャ州で作られているパルミジャーノ・レッジャーノなどがまず思い浮かぶが、ピアーヴェの産地はその北東に当たる、ヴェネト州北部のベッルーノ県だ。一帯はイタリアン・アルプスと呼ばれる山岳地帯で、オーストリアと国境を接する。

チーズの名称となっている「ピアーヴェ」は川の名前だ。その源流はドロミーティ山地のモンテ・ペラルバという標高2694メートルの山にある。川はヴェネチア北東部を流れ、アドリア海に注ぐ。ベッルーノ・ドロミーティ地域とも言われる川沿い一帯が、ピアーヴェの産地だ。

同地域の伝統的なチーズに「ピアーヴェ」という名称がつけられたのは、1960年のこと。当時は生産量が極めて少なく、ほとんどが地元で消費されていたが、いまでは、年間生産量が35万台に伸び、ベッルーノ県外でも消費されるようになっている。1985年にはピアーヴェ・チーズ協会が設立され、2010年にDOP(保護原産地呼称)を取得した。

乳牛は固有種、熟成は5段階

生産者は乳業大手のラッテ・ブスケ(Latte Busche)一社だ。同社は1950年代に、地元の小規模酪農工場を統合して効率化を図り、現在400軒の農家と提携している。同社はピアーヴェDOPのほかに、アシアゴDOP(Asiago DOP)、モンタジオDOP(Montasio DOP)グラナ・パダーノDOPも生産している。

チーズに使われる牛乳の産地は、ベッルーノ県を中心に、その周辺地域であるヴェネチアの北部、トレンティーノ・アルト・アディジェ州の一部とフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の一部の山岳地域に限定されている。地域固有種であるブルーナ種(Bruna)、ペッツァータ・ロッサ種(Pezzata Rossa)、フリソーナ種(Frisona)から得られる牛乳を最低80%使用することが条件となっている。

ピアーヴェDOPの熟成は以下の5段階。

フレスコ(Piave DOP Fresco)熟成期間20~60日
メッツアーノ(Piave DOP Mezzano)熟成期間61~180日
ヴェッキオ(Piave DOP Vecchio)熟成期間6カ月以上
ヴェッキオ・セレツィオーネ・オーロ(Piave DOP Vecchio Selezione Oro)熟成期間12カ月以上
ヴェッキオ・リゼルヴァ(Piave DOP Vecchio Riserva )熟成期間18カ月以上

サイズは熟成度により、直径27〜32cm、高さ7〜8cm、重さ5.5〜7kg。

試食したのは、メッツアーノ、ヴェッキオ、ヴェッキオ・ セレツィオーネ・オーロの3種類。いずれも、スイスの山岳地帯のチーズを連想させる、まろやかで品のよい、透明感のある優雅な味わい。12カ月年熟成のヴェッキオ・ セレツィオーネ・オーロも、風味は控えめで、繊細かつ上品。強く主張しないチーズなので、和食にも抵抗なく取り入れられそうだ。

ミルコ・バンディーニさんは、メッツアーノはミルクの風味がしっかりと感じられるので、シンプルにパンにのせて味わうのがベストだという。ヴェッキオは、オーストリアでヤウゼ(Jause)と呼ばれるコールドミートの間食とともに、ときにはフルーツやタマネギなどのコンフィチュールをつけて楽しみ、ヴェッキオ・オーロは削ったりおろしたりして、カルパッチョや牛のタルタル、煮込み料理やポレンタなどにたっぷり使うという。

合わせるワインは、メッツアーノにはプロセッコ・ヴァルドッビアデーネ、ヴェッキオにはピノ・ネーロ、ヴェッキオ・オーロにはヴァルポリチェラ産のアマローネなどがしっくり調和するとのことだ。

ミルコさんがピアーヴェ・ヴェッキオ・オーロを惜しみなく使った「ポレンタとソーセージとアンズタケのレフォスコ・ソース」の作り方は、以下の動画で。

https://www.youtube.com/watch?time_continue=3&v=DmpdhSEUNnE&feature=emb_logo

ピアーヴェ・チーズ協会
http://www.formaggiopiave.it

ピアーヴェのプロモーションサイト
https://www.nicetoeat.eu/ricette

カフェ・アルテンベルク
https://www.cafealtenberg.com

Photo : ©Consorzio Tutela Formaggio Piave DOP/Blancdenoir Communication
Text : Junko Iwamoto