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西田恵

日本在住/ワインライター

アカデミー・デュ・ヴァンで学んだのち1989年よりインポーター勤務。レストランや百貨店を経て2000年よりフリーランスで執筆を開始。ワイン産地訪問25カ国。数カ国の国際ワインコンクールの審査員も務める。

2022.01.14
column

美食と知識をともに楽しむ、ローズホテル横浜「グルメサミット2021」前編

ホテル主催のワインディナーは数あれど、ここまでワイン本気度の高いものがかつてあっただろうか? 美食家だけでなく、コアなワイン愛好家をも大満足させるイベント、それがローズホテル横浜主催で2021年11月15日(月)から3日間にわたり開催された「ROSE HOTEL YOKOHAMA GOURMET SUMMIT 2021」。その様子を3回にわたって紹介する。

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開業40周年記念となった2021年の第2回グルメサミット。初日のテーマは、
「自然・自由・大地に根差し 何ものにも縛られず」
西酒造 西 陽一郎×國領清貴シェフ~ 君嶋哲至のMYSTIC WA TERSライブの夕べ~

この日の主役はニュージーランドワインの「アーラー」。鹿児島県の焼酎作りのパイオニア、西酒造がマーティンボロのグラッドストーンに所有するワイナリーだ。

アーラーはスコットランド出身のアンガス・トムソンが04年に創立。19年に西酒造の8代目、西陽一郎氏が引き継いだ。「ワインと焼酎は畑こそ違うが同じ農作物で、品質は栽培から始まるというのは同じ。20年ほど前からワイン産地を訪ねるうちに新しい分野への挑戦に興味をもつようになり、世界中のワイン産地を視察していたところだった」と西氏は語る。

アーラーのオーナー、
西酒造の8代目、西陽一郎氏。

30ヘクタールの自社畑は、2000万年前に組成された礫を含む、水はけのよいシルト土壌。一枚畑だが、その中でも砂利や岩がちの土壌の区画ではピノ・ノワール、黒い土の多い区画ではソーヴィニヨン・ブランを栽培。ピノ・ノワールはディジョンやエイベルなどをクローンごとに植え、収穫や仕込みも分けて行なうという。

日本に住む西氏に代わり現地で指揮をとるのは小山浩平氏。リンカーン大学でブドウ栽培と醸造を学んだのち、カリフォルニアやニュージーランド国内のワイナリーで研鑽を積み、ネルソン近郊のパーマカルチャー・エコヴィレッジ内でワイン造りをしていた経歴をもつ。

「目指すのはテロワールのワイン」と西氏。発酵には天然酵母を用い、栽培は07年にオーガニック認証を取得。現在はビオディナミに移行中だ。

ディナーに提供されたワインは次のとおり。

アーラー ソーヴィニョン・ブラン2019
Urlar Sauvignon Blanc 2019

グレープフルーツやライム、白い花のフレッシュな香り。熟した白桃のリッチな果実味に、グーズベリーやジンジャーのはつらつとした風味がアクセントを与えた、メリハリのある味わい。
「金目鯛と帆立貝のソーヴィニョン・ブランのライムソース。ほのかな生姜の香り」とともに。

アーラー ピノ・ノワール2019
Urlar Pinot Noir 2019

ダークチェリー、ブルーベリー、ほのかなシガーやレザーの香り。熟したダークチェリーの果実味に、アーシーな風味が陰影を与えた、しっとり落ち着いた味わい。
「シャラン産鴨胸肉の低温ロースト カレンズ入りピノ・ノワールソース 彩り野菜添え」とともに。

アーラー ノーブル・リースリング2018
Urlar Noble Riesling 2018

良年のみリリースされる貴腐ワイン。赤みを帯びた明るいブロンズ色。アンズやカリンのコンポートの豊かな香り。口いっぱいにトロリと広がるフルーツコンポートのような凝縮感ある果実味。ほのかな鉄の鉱物感があり、酸も高く、全体のバランスがとてもいい。
「洋梨とキャラメルのムース 洋ナシのコンポートと季節のフルーツ」とともに。

そしてディナーの中盤にはなんと、横浜君嶋屋オーナーでソムリエ協会副会長でもある君嶋哲至氏率いる「MYSTIC WATERS」のライブも!

この日は西酒造が初めて手がけた日本酒、富乃宝山 天賦 純米吟醸 愛山も提供された。

Text & Photo:Megumi Nishida