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西田恵

日本在住/ワインライター

アカデミー・デュ・ヴァンで学んだのち1989年よりインポーター勤務。レストランや百貨店を経て2000年よりフリーランスで執筆を開始。ワイン産地訪問25カ国。数カ国の国際ワインコンクールの審査員も務める。

2022.01.17
column

美食と知識をともに楽しむ、ローズホテル横浜「グルメサミット2021」中編

ホテル主催のワインディナーは数あれど、ここまでワイン本気度の高いものがかつてあっただろうか? 美食家だけでなく、コアなワイン愛好家をも大満足させるイベント、それがローズホテル横浜主催で2021年11月15日(月)から3日間にわたり開催された「ROSE HOTEL YOKOHAMA GOURMET SUMMIT 2021」。その様子を3回にわたって紹介する。

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2日目のテーマは、「サントリー椎名敬一氏を招き Château Lagrangeの復活の歩みと 重慶飯店 陳一明総料理長の特別コース」

元シャトー・ラグランジュの副会長で、2020年8月に帰国し、現在サントリーワインインターナショナルのチーフエノロジストを務める椎名敬一氏による、まるで専門家相手のワインセミナーのような解説が、食事の合間をぬって行なわれた。


ディナーでサーブされたワインは次のとおり。

レ・フルール・ドゥ・ラック2018
Les Fleurs du Lac 2018

グーズベリーや白桃の軽快な香り。レモンやグレープフルーツの果実味に、グーズベリーのほろ苦いアクセントが効いた、フルーティで爽やかな味わい。
ソーヴィニョン・ブラン58%、セミヨン34%、ソーヴィニヨン・グリ8%。2011年から造られるレ・ザルムのセカンドワイン。
「特製前菜五種盛り合わせ」とともに。

レ・ザルム・ド・ラグランジュ2018
Les Arums de Lagrange 2018

熟した洋梨や白桃、レモンピール、ほのかなバニラの香り。緻密な洋梨の果実味に、しっかり高いシトラス系の酸、濡れた白い石の鉱物感が調和。ソーヴィニヨン・ブラン71%、セミヨン20%、ソーヴィニヨン・グリ8%。新樽比率は40%。
「活ホタテ貝のXOソース蒸し」とともに。

シャトー・ラグランジュ 2016
Château Lagrange 2016

プラム、ブラックベリー、リコリス、インク、レザーの香り。凝縮したブラックベリーの果実味、なめらかなタンニン、黒系ハーブがキレイに調和した、力強くも華やかな味わい。カベルネ・ソーヴィニヨン70%、メルロ24%、プティ・ヴェルド6%。「2016年はステージが変わった年」と椎名氏。ブドウの実が小粒で茎も熟した良年だという。
「海老のカダイフ巻き揚げ」とともに。

シャトー・ラグランジュ2015
Château Lagrange 2015

ブルーベリー、プラム、濡れた下草、カカオの香り。ブラックチェリーの果実味に、高めの酸がフレッシュさを与えた、緻密かつやさしい味わい。シルキーなタンニン、下草やレザーのアーシーな風味が奥行きを与える。カベルネ・ソーヴィニヨン75%、メルロ17%、プティ・ヴェルド8%。椎名氏いわく、「数年ぶりの偉大な年と話題になったヴィンテージ。10月の雨がなければパーフェクトだったでしょう」。
「揚げ豆腐と引きに行く入り辛子煮込み」とともに。

シャトー・ラグランジュ2005
Château Lagrange 2005

ドライイチジク、レザー、ドライフラワー、腐葉土、コーヒーの香り。厚手のシルクのようになめらかな密度感のある、こなれたイチジクの果実味とタンニン、腐葉土やスパイス、シガーの風味が一体となったエレガントな味わい。カベルネ・ソーヴィニヨン46%、メルロ45%、プティ・ヴェルド9%。椎名氏が初めて手掛けた年で、「シーズンを通じて天候が完璧だったグレートヴィンテージ」だそう。
「国産豚スペアリブ揚げ 黒酢炒め」とともに。

スライドを用いた解説では、一粒あたりの重量がどう変わってきたか(グラフ1)、ヴェレゾンから収穫までの期間の移り変わり(グラフ2)、使用品種構成の変換(グラフ3)が示された。品種構成においては、90年まではカベルネとメルロはほぼ半々、90年以降は85年に植樹したプティ・ヴェルドが加わり、06年からは、サントリーがシャトーを買収後に植え替えしたカベルネ・ソーヴィニヨンの樹齢が高くなったことで使用比率が増えたことがうかがえる。

(グラフ1)一粒あたりの重量の変化。



(グラフ2)ヴェレゾンから収穫までの期間の変遷。



(グラフ3)使用品種構成の推移。



椎名氏が着任してからの進化は次のとおり。

2007年 熟度に合わせてピンポイントに収穫を開始。
2009年 光学式選果機の導入。
2014年 区画のさらなる細分化。

この会は当初80名定員で予約が開始された。しかし椎名氏直々の解説とともに、シャトー・ラグランジュが3ヴィンテージも重慶飯店の特別コースと楽しめるとあって予約が殺到。急遽120名まで枠を増やしたそうだ。

Text & Photo:Megumi Nishida