谷宏美
日本在住/フリーランス ライター
エディター/ライター。ファッション誌の美容エディターを経て、2017年よりフリーに。渋谷のワインバー「ローディ」で店の仕入れや現場でのサービスをやりつつ、ワイン&ビューティの分野で取材・執筆を行なう。J.S.A.認定ワインエキスパート。バタークリームとあんこは飲み物。
缶ワインのキーワードは“カジュアル、スタイリッシュ、そしてエコフレンドリー”!
スタイリッシュでどこでも飲める、そんな缶ワインの快進撃が止まらない。スペインのワイナリー、デ・ハーン・アルテスがリリースした「カンヴァス」は、缶ワインの中でも一歩先を行くアイテム。ローンチ時のウェビナーから、この画期的ワインのバックグラウンドと味わいをリポート。
ワインの楽しみ方に一石を投じる「缶ワイン」というカテゴリー。ボトルに入っているもの、という固定概念にとらわれなければこんなに気楽なワインはない。持ち運びが簡単で温度調整も容易。プルタップを開けるだけでどこでも飲めて、後片付けもラク。時間も場所も選ばず気軽にワインを楽しむことができる。そして缶ワインはいま、サステイナビリティの観点からも注目されている。
温室効果ガスの放出量削減の必要性が叫ばれる中、ボトルの重量の軽減に取り組むワイナリーも少なくないが、容器が缶になれば話は早い。
スペインのデ・ハーン・アルテスが造る「カンヴァス」はサステイナブルなスペックとともに本格的な味わいも追求した、アルミ缶入りのワイン。アルミは材質の特性を損なうことなく何度でも再利用ができる、100%リサイクルが可能な素材。かつ軽量で輸送時のCO2排出量を格段に軽減できる。さらに缶の内側のコーティングに、従来使われていた樹脂性に比較してより安全性が高い新開発の塗料を採用。缶自体にも独自の工夫を凝らした。
2006年にカタルーニャで設立されたデ・ハーン・アルテスは、地球環境に配慮した製品づくりを真摯に行なうワイナリー。すべての自社畑で有機とヴィーガン認証を取得、太陽光による自家発電100%や、カーボンニュートラルを掲げて数年以内にCO2排出量をゼロにする取り組みを進めている。また廃棄物から堆肥を生成したり、 浄水設備と貯水池を設置しワイナリーの用水を再利用できる環境を整えるなど、リサイクルにも注力。生物多様性を鑑みた活動も積極的だ。
こうした取り組みが評価され 、デ・ハーン・アルテスは19年にスペイン国内のワインコンクールでベストオーガニック賞を受賞。さらに気候変動に取り組む国際ワイナリー協議会(International Wineries for Climate Action =IWCA) への入会が認可されたという。IWCAはスペインのトーレスやアメリカのジャクソンファミリーなど大手ワイナリーがリードして立ち上げた国際団体で、デ・ハーン・アルテスのように歴史の浅く比較的小規模ワイナリーの入会は前例のない快挙だ。
「カンヴァス」はスティルの白、ロゼ、赤の3種類の展開。ガラス瓶で販売している商品と同じワインを詰めているという。だから缶のままでも、グラスに注いでも、いずれもその本格的な味わいを楽しめる。瓶入りのワイン同様、消費期限はない。
ビビッドな色使いが印象的なパッケージはイギリス人アーティストのマイケル・ハワードによるもの。缶に描かれているキャラクターはマイケルの友人がモデルとなっているそうで、ロゼはイギリス出身のレン、白はオランダ出身のルート、赤は日本出身のユウコという設定。いずれもインパクトたっぷりで場を盛り上げてくれること間違いなし。
■カンヴァス ピンク(写真左)
ガルナッチャ100%のロゼ。チェリーやラズベリー、ハーブのアロマ。横に広がる酸とフレッシュな果実味。軽やかでチャーミングな味わい。
ステンレスタンクで澱とともに2カ月熟成。
■カンヴァス ガルナッチャ・ブランカ(写真中)
ガルナッチャ・ブランカ100%の白。プルタップを開けるとやや還元的なニュアンス、レモンや白桃、アプリコットの香り、飲み飽きることのないスムースな口当たり。
ステンレスタンクでMLFを行ない、澱とともに4カ月熟成。
■カンヴァス ガルナッチャ(写真右)
ガルナッチャ100%の赤。熟した赤系果実のニュアンス、アタックは柔らかく、フレッシュな果実感が口中に広がる。冷やしめで飲みたいフルーティな赤ワイン。
ステンレスタンクで発酵後MLF、3/4はフードル、残りはステンレスタンクで4カ月熟成。
ワインの飲み方に決まりはない、と提案してくれるカンヴァス。さまざまな楽しみ方を見つけてもらいたい。ハイボールやレモンサワーを常飲している人がワインの素晴らしさに目覚めるきっかけになる、そんなポテンシャルも秘めたアイテムでもある。
もう季節は春、これを片手にアウトドアで心ゆくまで語らいを楽しめる日がくることを願う。
ワイン輸入元:モトックス
https://www.mottox.co.jp
Text & Photo : Hiromi Tani