
谷宏美
日本在住/フリーランス ライター
エディター/ライター。ファッション誌の編集部を経て、2017年よりフリーに。国内外の産地を巡り、ノンアルワインからブランデーまで、酒と食と旅にまつわる記事を執筆。J.S.A.認定ワインエキスパート。バタークリームとあんこは飲み物。

ジェームス・サックリングに訊く──ワールドツアーが映す世界ワインの潮流
ワイン評論家ジェームス・サックリングによるテイスティングイベント「ジェームス・サックリング グレート・ワインズ・ワールド 東京」が2025年11月に開催された。2回目となった東京開催を機に、これまでの世界各地を巡るイベントを通して見えてきたワイントレンドと市場の変化について訊いた。
ニューヨーク、ロンドン、香港など世界のワイン消費地で開催される「ジェームス・サックリング グレート・ワインズ・ワールド」は、高得点ワインを紹介すると同時に、生産者と消費者が交流できる場として賑わいを呈している。2024年に続き2度目の開催となった東京会場には、2,000人を超えるワインラヴァーが来場。サックリングがレビューした92点以上のワイン約260種が並び、世界各国から来日した145ワイナリーの造り手自らがブースに立った。世界各地での参加者を合わせると、年間23,000人がこのイベントに参加しており、ファインワインのイベントとしては世界最大規模を誇る。

(左)100点を獲得した「ローラン・ペリエ グラン シエクル No.26」。
(中)「セーニャ 2021」も100点ワイン。(右)ワールド・ベスト・ヴィンヤード 2025で1位に輝いた
チリのヴィーニャ ヴィック。2022年ヴィンテージは99点をマーク。
ジェームス・サックリングはこうした世界各地を巡る活動を通して、傾向とトレンドをどのように見ているのだろうか。まず、近年のワインの傾向として「ブドウ樹の長期的な健康を重視する生産者の増加」を挙げる。健全で樹齢を重ねたブドウ樹は、より深みと個性を備えたワインを生むという。醸造面では、新樽の使用を減らし、アンフォラやコンクリート、大型の古樽など多様な容器を用いる例が増えている。抽出や人的介入を抑え、アルコール度数を低減する傾向もあり、過度な濃縮よりもバランスと透明感を重視。果実の純度を保ち、畑ごとの個性をよりダイレクトに表現しようとする考え方が背景にあるという。
イベントでワイン愛好家たちに触れる中で消費動向については、「市場や文化が大きく異なるため、世界的な消費者嗜好を一概に語るのはむずかしい」と前置きした上で、世界的にワイン購入量が減少していることを指摘。価格に対する品質への要求は高まり、各国で高品質なワインが造られる現在、消費者の選択肢はかつてないほど広がっている。従来のようにブランドや格付け、ステータスで選ぶのではなく、価格と品質のバランスを見極めながら、自分の好みに合うワインを探す傾向が強まっていると語る。

「東京に戻ってくることができて嬉しい」とスピーチ。
評論家としての評価については「スコアは依然として重要」と語る。一方で購入判断はそれだけで決まるわけではない。価格、入手性、ワインスタイル、生産者の評判、産地の背景など複数の要素が影響する。さらに近年はAIの大規模言語モデルの普及により、消費者がワインの情報を比較し理解しやすくなった点も大きいと指摘。
東京という市場をどう見るかという問いに、「ニューヨーク、ロンドン、香港と並ぶ世界有数のワイン都市」と評価した。あらゆる価格帯で世界各国のワインが揃う市場の厚みは驚くほどだと述べる。さらに印象として、「日本のワイン愛好家や業界関係者は知識が豊富で、敬意と純粋な好奇心をもってワインに向き合っていると感じる。一緒にテイスティングすることで私自身も多くを学んでいる」と語った。妻マリーとともに日本を訪れることを楽しみにしており、今年は北海道のワイナリーを訪問したいという。

賑わう会場を回遊するサックリング。
イベントの終盤では、Y by Yoshikiとして出展していたYOSHIKIがサックリングとともに登壇。ピアノで「Endless Rain」と「Forever Love」の2曲を演奏するというサプライズは粋な演出で、サックリングのホスピタリティが伺える。「ジェームス・サックリング グレート・ワインズ・ワールド」は、各国の市場との対話の場として、今後も重要な役割を担っていくだろう。

YOSHIKIが愛用のクリスタルグランドピアノで演奏を披露し、
イベントの熱気は最高潮に達した。
Text : Hiromi Tani
Photo : Hiromi Tani, JamesSuckling.com

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