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綿引まゆみ

日本在住/ワインジャーナリスト

会社員を経て、フリーランスのワインジャーナリストへ。ワイナート本誌のほか、ライフスタイル誌、オンラインメディアなどに執筆。ビアソムリエ(JBSA)、チーズプロフェッショナル(CPA)、コーヒー&ティーアドバイザー(ADRJ)。公式ブログ:https://blog.goo.ne.jp/may_w/

2022.11.04
column

日本ワイン×フレンチ、フランスワイン×日本料理 6種の日仏ペアリングを楽しんだ「隠れ収穫祭」

2011年の初開催から今年で12回目を迎えた日本最大級のフランス料理イベント「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2022」。9月23日(土)から10月16日(日)までの期間で開催されたが、それに先駆け、8月31日(水)に日本とフランスのワインと食を楽しむ一般消費者対象の「隠れ収穫祭」が、東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルにて開催された。

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「日本の食文化を応援!トレ・ボン 日本のテロワール」をテーマに開催された今年の「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2022」。「隠れ収穫祭」も同様で、両国のペアリングが多数登場した。日本ワイン×フランス料理のペアリングでは、山梨県の甲州種の白ワインとマスカット・ベーリーA種の赤ワインと、ワインではないがシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵方式で発泡させたスパークリングの日本酒も登場。フランスワイン×日本料理のペアリングでは、シャンパーニュ、ボルドーの白と赤各1種ずつがお目見えし、トータル6パターンのペアリングを楽しんだ。

ワインについては、フランス南部ルシオン出身で現在は関東在住のアカデミー・デュ・ヴァン講師フレデリック・カユエラ氏が、日本ワインの基本知識のプレゼンテーションからスタートし、それぞれのワインのプロフィール、特徴、楽しみ方などを紹介した。

料理は、セルリアンタワー東急ホテルの総料理長・福田順彦シェフ、同ホテルのプロヴァンスレストラン「タワーズレストラン クーカーニョ」キュイジニエ・熊谷友宏シェフ、同ホテルの日本料理店「Japanese Cuisine 桜丘」調理長・鶴田敬シェフが腕を振るった。

(左から)フレデリック・カユエラ氏、福田順彦シェフ、熊谷友宏シェフ、鶴田敬シェフ。



前半の4皿は日仏のスパークリング、ボルドー地域の赤白ワインとのペアリング。
(上左)甲州地どりの酒蒸し プラムとチーズの白和え添え あられ唐墨
×マム グラン コルドン N.V.(シャンパーニュ)
(上右)山葵とフォアグラのプレッセ~富士からの水の恵み~
×アラン・デュカス スパークリング サケ(山梨県)
(下左)すっぽんの玉締めと山梨夏っこきのこのお吸い物
×レ・フィエフ・ド・ラグランジュ 2014(ボルドー赤)
(下右)3種の味わいのお刺身
×レ・ザルム・ド・ラグランジュ 2020(ボルドー白)


乾杯はシャンパーニュ「マム グラン コルドン N.V.」で。ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエをバランスよくブレンドした、メゾン・マムの代表的存在。うまみ、コク、複雑味のあるシャンパーニュが、しっとりやわらかな甲州地鶏と、ゴルゴンゾーラと唐墨の濃厚な味わいと絶妙にマッチ。

「アラン・デュカス スパークリング サケ」は、アラン・デュカス氏とアラン・デュカス パリのエグゼクティブシェフソムリエであるジェラール・マルジョン氏のコラボにより、山梨県の造り酒屋「七賢」が瓶内二次発酵で造った米の発泡酒。ドザージュゼロ、アルコール12%。酸を意識した造りが、ねっとり濃厚なフォアグラと溶け合い、熊谷シェフの出身地である静岡産のワサビの清涼感がアクセントに。

「レ・フィエフ・ド・ラグランジュ」は、ボルドー・メドック格付け3級「シャトー・ラグランジュ」(サン・ジュリアン村)のセカンドラベル。カベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、メルロ、プティ・ヴェルドをブレンド。2014年は雨が多く日照が少なかったが、収穫前に天候が回復したおかげで、フルーティでまろやかな、バランスの取れた赤ワインに仕上がっている。赤ワインのやわらかさ、ジューシーさに、すっぽんの出汁にショウガの風味を利かせた茶碗蒸し的な、汁気たっぷりのやさしく滋味な料理がよく合い、嬉しい驚きだった。

「レ・ザルム・ド・ラグランジュ」はシャトー・ラグランジュの白ワインで、ソーヴィニヨン・ブラン主体に、セミヨン、ソーヴィニヨン・グリをブレンド。50%をステンレスタンクで、50%を樽(新樽50%)で熟成させている。花、爽やかな柑橘の風味に、樽熟成させたしっとりとした落ち着きが加わりエレガントな味わい。ペアリングの刺身は、酢〆のアジ(+酢味噌)、山梨県産「富士の介サーモン」の低温調理(+塩昆布、紫蘇、クレソン)、マグロ(+ウニの味噌ソース)の3種。ボルドー白ワインとだけでなく、これまでに注がれたワインとのペアリングにチャレンジしても楽しめた。

5皿、6皿めは、山梨県産ワインとフランス料理のペアリング。
白ワインは、勝沼で4代続く白百合醸造の「ロリアン 山梨甲州 2020」。
赤ワインは、同じく白百合醸造の「ロリアン 山梨マスカット・ベーリーA 2008」。
このイベントのために用意された非売品のため、エチケットラベルは貼られていない。



「山梨甲州 2020」と合わせたのはホロホロ鳥の胸肉のローストに、ホロホロ鳥のソースを添えたひと皿
「フランス産パンタードのロティ 茸とファーロ麦添え ソース ジュ・ド・パンタード」。
みちっとキメ細かい肉質のホロホロ鳥に、和の柑橘のニュアンスのある、
ミネラリーでフルーティな味わいの甲州を合わせた、洗練されたペアリング。



フィナーレを飾ったのは、「山梨マスカット・ベーリーA 2008」と
「カカオに閉じ込めたショコラの軽いムースとヘーゼルナッツのアイス ヴァローナのショコラソース」。
12年の熟成を重ねつつもフルーティさを残し、
カカオのほのかなニュアンスのある複雑な味わいのマスカット・ベーリーAの赤ワインと、
外側の器までチョコレートできている夢のようなデザートとの組み合わせは、
なんとも甘美なマリアージュだった。


日本ワインとスパークリング サケが山梨県産だっただけでなく、料理の食材にも山梨県産の地鶏、サーモン、キノコ、野菜などが多用され、山梨のテロワールをコース全体で楽しめる内容になっていた。和食の繊細美や美食の国フランスのエスプリを映した、目にも華やかな皿が次々と置かれ、日仏の上質ワインが注がれる贅沢なひととき。山梨のワイン&酒とフランス料理、フランスのワインと日本料理という、スペシャルなペアリングディナーを、参加者は心ゆくまで堪能した。

Text & Photo: Mayumi Watabiki