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谷宏美

日本在住/フリーランス ライター

エディター/ライター。ファッション誌の美容エディターを経て、2017年よりフリーに。渋谷のワインバー「ローディ」で店の仕入れや現場でのサービスをやりつつ、ワイン&ビューティの分野で取材・執筆を行なう。J.S.A.認定ワインエキスパート。バタークリームとあんこは飲み物。

2023.09.19
column

カタルーニャで愛されるカバ「ロベジャ」とスペイン料理のペアリング

スパニッシュレストラン「月島スペインクラブ」で、カバの生産者ロベジャのメーカーズディナーが開かれた。スペインワインファン30名が集まり、ロべジャのオーナー、ジョゼップ・カルドナ氏によるプレゼンテーションとともに、4種のカバのペアリングを楽しんだ。

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■500年続くカバのボデガの当主が来日

「ロベジャ」はスペインのカタルーニャ州アルト・ペネデス地方で500年の歴史をもつカバのボデガ。3代目当主のジョゼップ・カルドナ氏が来日し、本場スペインの食文化を30年に渡って発信し続ける「月島スペインクラブ」でメーカーズディナーが開催された。

カルドナ氏がボデガの歴史と自社のカバ造りをプレゼンテーション。55haの自社畑はすべて有機栽培。パレリャーダ、マカベオ、チャレッロ、ガルナッチャ、シャルドネ、メルロを栽培し、収穫はすべて手摘み。ボデガは500年前に建てられた歴史的建造物で、モダニズム様式の美しい庭園も擁している。

ユニークなのは、ロトンダと呼ばれる、地下12メートルに6本の放射線状に広がる熟成庫。距離にして1.8キロメートルにも及ぶこのユニークな形状の熟成庫は世界で唯一の様式で、年間を通して約13度に保たれ、スパークリングワインの二次発酵もここで行なうという。

■カバ4アイテムのペアリング

ディナーのために用意されたのはロベジャのカバD.O.カバ4種類。いずれもゾーン名の「コムタッツ・デ・バルセロナ」が記載される。

1. ロベル・ブリュット・レセルバ N.V.
2. ロベジャ・ロゼ・ブリュット・レセルバ 2018
3. ロベジャ・ブリュット・インペリアル 2019
4. ロベジャ・グラン・レセルバ 2013

小松﨑 涼ソムリエが「ロべジャの哲学やその歴史を紐解きながら、食事と合わせて楽しんでいただきたい」と冒頭で挨拶し、ペアリングを解説。

○ワイン1
ロベル・ブリュット・レセルバ N.V.
×
魚介のカクテルとカブのブランマンジェ
レモンヴァニラヴィネグレット

3つのブドウ品種をバランスよくドライに仕上げたスタンダードキュヴェは、酸もキリッとして食欲をそそる。柑橘の風味を効かせた魚介の冷前菜とともに至福のディナーがスタート。

クリーミーなカブのブランマンジェの上に甘みのあるタイラガイ、肝の苦みも楽しめるホタルイカ、そしてさっぱりした水ナス。コンソメのジュレをあしらって塩レモンのヴィネグレットソースでまとめ、さまざまな食感や味わいを楽しめる爽やかな一品。瓶内熟成24カ月以上という長期熟成で生じる乳酸のようにクリーミーなカバの酸味と好相性。

○ワイン2
ロベジャ・ロゼ・ブリュット・レセルバ 2018
×
地ハマグリのカルドッソ

ブドウ品種はガルナッチャ100%、黒系果実のニュアンスがふくよかなロゼに、ダシの豊かなうま味が広がるハマグリのカルドッソ(=炒めた米をスープで調理したスペイン風の雑炊)を合わせた。

ロゼのカバで蒸すことで風味をまとわせた千葉県産の大粒ハマグリは、火入れしてなおプリップリの食感。噛むほどにうま味が増幅する。貝のダシがたっぷりと染み込んだ米とともに咀嚼し、カバを飲む。するとでんぷん質由来の甘みと貝のうま味が交互に押し寄せ、見事なハーモニーを醸し出す。

○ワイン3
ロベジャ・ブリュット・インペリアル 2019
×
ヒラメのヴァポール

マカベオ65%、チャレッロ20%、パレリャーダ15%の比率にこだわったヴィンテージカバ。ほどよい熟成を経てなお骨格のしっかりしたカバに、同じカバを使ったソースでいただくヒラメの蒸し料理がサーヴされた。

身質のしっかりしたヒラメをこのブリュット・インペリアルで蒸しあげ、添えたソースはアサリのダシをベースにカバを惜しみなく使ったブールブラン風。肉厚なヒラメをソースと一緒にに味わってからブリュット・インペリアルを口に含むことで、この上質なカバが層となって何倍も楽しめるペアリングだ。苦みのあるトマトリーフが、アフターにほんのりビターな雰囲気のあるカバとの親和性をさらにアップする。

○ワイン4
ロベジャ・グラン・レセルバ 2013
×
ラム・レセンタル・アサード

真打ちは、2013年ヴィンテージのグラン・レセルバ。これに合わせて、絶妙に火入したスペイン産仔羊のローストで舌鼓。

ラム・レセンタルは、生後約3カ月の仔羊で、同店がスペインから直輸入する希少な羊肉。柔らかくキメ細かな肉質で、とろけるような食感と肉の甘さが特徴。これをミディアムレアに焼き上げ、塩のみでその味わいを堪能。砂糖菓子やクレームブリュレのように甘やかなニュアンスのあるヴィンテージ・カバとのペアリングは、熟成スパークリングワインとフレッシュな仔羊の組み合わせが楽しい。

■カタルーニャのワインツーリズム

カバの生産量のうち70%は海外へ輸出されるが、ロベジャでは80%が国内消費。そのうち65%はカタルー二ャで飲まれているそうで、ロベジャが地元の人たちに愛されているスパークリングワインであることがわかる。

ロベジャではボデガの見学はもちろん、モダニズム様式の美しいガーデンでカバとともに食事をとることもできる。さらにバルセロナ近郊アルト・ペネデスの観光スポットやレストランを紹介するなど、エノツーリズムにも積極的。「日本のお客さまは歓迎します。皆さん、ぜひスペインにお越しいただき、私たちのボデガでカバを楽しんでください」とカルドナ氏。スペインの文化にも関心の高いある月島スペインクラブの顧客たちは、カバと料理のペアリングを楽しみながら、美しいカタルーニャの風景とそのプレゼンテーションに熱心に耳を傾けていた。

月島スペインクラブ
住所:東京都中央区月島1-14-7 旭倉庫1F
電話(予約受付):050-5284-1448
火曜定休
https://spainclub-tsukishima.com

Photo & Text:Hiromi Tani