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杉本 多恵

日本在住/ライター

ワインや料理、アートや茶道など、幅広いジャンルで編集、執筆。JSA公認ワインエキスパート、SSI公認唎酒師。イタリア好きが高じて、イタリアでホームステイをしながらイタリア家庭料理を学び、料理教室も主宰。スパークリングワインが大好き。

2023.10.24
column

日欧商事主催、第14回IWSSイタリアワインセミナー開催 JET CUP本戦は11月15日!

通算14回目、オンライン開催では3回目となったIWSSイタリアワインセミナーが、6月14日(水)、21日(水)の2回にわたり開催された。年々内容の進化が感じられるが、今回も個性あふれるイタリアワインとその魅力、イタリアワインを扱うソムリエに求められる知識や技術について、深く掘り下げたセミナーであった。

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今年の大きなテーマは「イタリアにおける土着品種と国際品種」。昨今の土着品種ブームにおいては、とても興味深い内容だ。

総合司会は、イタリアワイン・ベストソムリエ・コンクール(以下JET CUP)第9回優勝の 若原美紀氏(アンティカ・オステリア・デル・ポンテ)。イタリアワインの概論とトレンドを解説する第一講義の担当はワインジャーナリストの宮嶋勲氏。第二講義のテイスティングとワイン解説は、1日目が第14回JET CUP優勝の林憲二氏(株式会社アッカ代表取締役)、2日目が第13回JET CUP優勝の瀧田昌孝氏(パレスホテル東京 グランドキッチン アイススタントマネージャー/ソムリエ)、そしてワインサービス実技は、第3回JET CUP優勝の本多康志氏(資生堂パーラー ザ・ハラジュク店長)が担当した。

ここからはプログラム別に内容を紹介していく。

[第一講義]
■1日目:テーマ「イタリアワインにおける土着品種」

イタリアワインにおいては土着品種の数が多いのが特徴であり、またそれはよく知られているところである。しかしなぜイタリアだけが土着品種が多く、衰退せずに現在もその存在が受け入れられているのか? まずはその背景を以下の点から探っている。

・地理的要因
⇨南北に長い半島、三方が海、標高、アルプスとアペニン山脈の存在、風と昼夜の温度差など。

・歴史的要因
⇨支配されてきた様々な国の文化的影響を受けている。

・食文化的要因
⇨ワインは食品・食事の一部であった、地域の食文化の違いがワインの多様性(土着品種)に反映。

続いて、黒ブドウではサンジョヴェーゼ、ネッビオーロ、アリアニコ、ネレッロ・マスカレーゼ、コルヴィーナ、プリミティーヴォ、白ブドウではヴェルメンティーノ、グリッロについての品種解説。

このほかに、ここでは書ききれないが、近代醸造学の発展、質より量の時代から質のよさを重視する方向へシフトした背景、温暖化の影響とクローン選別、最新クローンBBS11についてなど、多方面から土着品種への影響や関連性、また土着品種の今後の課題も取り上げられた。

これらの内容を踏まえ、土着品種に関して「グラスの先に何かが見えること、私たちをその土地に連れて行ってくれるのが魅力」と、宮嶋氏らしく笑いも交え、ロマンあふれる表現で締めくくられた。

■2日目:テーマ「イタリアワインにおける国際品種」

宮嶋氏によれば、1980年代のスーパータスカンブームにより、イタリアにおける国際品種に注目が集まるようになったが、じつは北イタリアにおいては、近隣王国や貴族の交流により、19世紀までにもさまざまな国際品種がイタリアに持ち込まれていたという。

シャルドネはもともとイタリアにもあり、またピノ・グリージョ、ピノ・ブラン、ソーヴィニヨン・ブランなどは150年以上も前から栽培され、すでに土着品種ともいえる存在になっている。またメルロも早くからポピュラーであり、カベルネ・ソーヴィニヨンも昔からあちこちで植えられていたそうだ。

近年、ワインを取り巻く環境・経済の変化により急速な品質向上が求められてきた。そこで行なわれたのが、国際品種の導入と醸造技術の革新で、これにより現在までに、目覚ましい発展を遂げている。

たとえばスーパータスカンは、イタリアの土着品種にはない魅力(果実味やふくよかさ)をもったメルロの導入で成功し、またシチリアではプラネタの尽力により、国際品種によりシチリアにおけるワインのポテンシャルが引き出された結果、土着品種の評価にもつながった。

しかし昨今、温暖化がもたらす劇的な環境変化により、比較的涼しい産地が多いイタリアにおいても、暑さに強い品種への関心が高まっている。

2日目も宮嶋氏から多くの解説があったが、最後に国際品種とテロワールに言及。「土着品種と国際品種を対比させて語るのではなく、それぞれの特徴を生かし、テロワールをいかに表現させるかという点に引き続き注視していきたい」とまとめた。

[第二講義]
■イタリア土着品種ワインテイスティング

第二講義は、1日目を林憲二氏が、2日目を瀧田昌孝氏が担当。両日ともに、以下のプログラムで進んだ
(※受講者へは事前に、試飲用のワイン4アイテムが送付されている)。

・動画によるワイナリー紹介
・テイスティング
・料理とのペアリング(ペアリングの方法論と今回のワインと合わせる料理)
・オーナーファミリー出演の現地からのライブ中継

このほか1日目には、テイスティングの基本的な内容の復習も行なわれた。JAS(日本ソムリエ協会)のテイスティングフォームに則って今回のテイスティングワインを評価、またWSETのテイスティングフォームでは同じワインをどのように評価するのか、という解説もなされた。さらに林氏は、昨年のJET CUPを例に、ワインコンクールで求められるものを、自身の経験を交えながら解説した。

最後に、昨今流行のペアリングコースについて、林氏の店舗を例に挙げながら、その魅力や注意点が挙げられた。

2日目は、瀧田氏が独自に準備した資料をもとに、Googleマップを駆使し、話題の世界のワイン産地を上空から俯瞰しながら、それぞれの産地の品種特性を解説し、テイスティングワインについて深掘りする講義となった。

・1日目のテイスティングワイン

1)
ピノ・グリージョ “クルベッラ” 2019
リヴィオ・フェッルーガ
Pinot Grigio “Curubella” 2019
Livio Felluga

産地:フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州
格付け:フリウリ・コッリ・オリエンターリDOC
品種:ピノ・グリージョ100%
税込み希望小売価格:11,000円

2)
サッソアローロ 2021
カステッロ・ディ・モンテポ
Sassoalloro 2021
Castello di Montepo

産地:トスカーナ州
格付:トスカーナIGT
品種:サンジョヴェーゼ・グロッソ100%
税込み希望小売価格:5,830円

・2日目のテイスティングワイン

1)
ポミーノ・ベネフィッツィオ・リゼルヴァ2018
フレスコバルディ
Pomino Benefizio Riserva 2018
Frescobaldi

産地:トスカーナ州
格付:ポミーノ・ビアンコ・リゼルヴァDOC
品種:シャルドネ100%
税込み希望小売価格:9,350円

2)
ラマイオーネ 2018
フレスコバルディ
Lamaione 2018
Frescobaldi

産地:トスカーナ州
格付:トスカーナIGT
品種:メルロ100%
税込み希望小売価格:17,600円

■サービス実技

昨年のJET CUPの決勝では、これまでにないシチュエーションの新たな課題が出され、出場者の戸惑いとともに新しさを感じる一幕もあった。今回の講義ではレストランでのテーブルを想定し、本多康志氏が実際にひとつひとつの作業、動作を行ないながら、わかりやすく丁寧に解説した。

■ワイナリーのおうちごはん

IWSS初めての企画として登場した「ワイナリーのおうちごはん」。ワインとともに料理に興味のある受講者にはとても魅惑的な講義であっただろう。

北イタリアから島しょ部まで12の生産者の“おうちごはん”が紹介され、まるでイタリアを旅しているような気分になれたこの企画。紹介されたすべてのワインと料理をリストアップしておきたい。

★トレンティーノ・アルト・アディジェ州
エレナ・ヴァルヒのゲヴュルツトラミネール ヴィーニャカステラーツ
×
サフラン香る手長エビのパスタ

フェッラーリのペルレ・ミレジム
×
スマカファム(ソーセージのフォカッチャ)

★フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州
コッラヴィーニのビアンコ・コッラヴィーニ
×
フリコ(ポテトのチーズ焼き)

★ピエモンテ州
トラヴァリーニのガッティナーラ
×
ゴルゴンゾーラのラビオリ

★エミリア・ロマーニャ州
チェーチのオテッロ・チェーチ・ネロ・ディ・ランブルスコ
×
プロシュート、クラテッロ、パルミジャーノ・レッジャーノ

★マルケ州
ヴィッラ・ブッチのヴィッラ・ブッチ
×
サルシッチャのパスタ白ワイン風味

★モリーゼ州
クラウディオ・チプレッシのマッキアロッサ・ティンティリア
×
鶏肉のリピエーノ(詰め物)

★カンパーニア州
フェウディ・サン・グレゴリオのタウラージ
×
自家製オリーブオイルとトマトソースのスパゲッティ

★バジリカータ州
マストロドメニコのリコス アリアニコ・デル・ヴルトゥレ
×
揚げパン粉とクルスキ(乾燥パプリカ)のフジッリ

★カラブリア州
イッポーリトのマーレ・キアーロ・チロ・ビアンコ
×
塩漬けイワシのスパゲッティ

★シチリア州
プラネタのエルツィオネ1614 カリカンテ
×
スパトラ・アッレ・エルベ(太刀魚のパン粉焼き ハーブ風味)

★サルデーニャ州
シッドゥーラのスペーラ ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ
×
シーフードと野菜のフレーゴラ

※IWSS2023 おうちごはんFINAL
https://youtu.be/x_3o7MyDVS0?si=TZRZxPE5uEWtwu7c

両日ともに3時間前後という長時間に及ぶセミナーではあったが、トレンドを捉えた実用的な内容、またほかではなかなか知り得ない情報を得ることができ、イタリアワイン関係の仕事に従事する者、さらには愛好する者にとっても、貴重な機会となったに違いない。しかもアーカイブやダウンロードをして視聴することが可能で、また申込者に届くテイスティング用のワインは目を見張るラインナップ。なんとも参加者フレンドリーなセミナーである。

■今後の日程

今年も15回目となるJET CUPが開催される。熱い戦いが繰り広げられることを期待したい。

・スケジュール
(9月27日:一次(地方)予選)
10月25日:二次予選
11月15日:本線(準決勝・決勝)

・会場 東京・イタリア文化会館(二次予選、本線)