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吉田恵理子

フランス在住/ライター・エッセイスト

ライター・エッセイスト。フランス、パリ在住。 HEG(美食に関する最先端研究機関)卒、WSETアドヴァンスト、SSA酒ソムリエ。著書『ランチタイムが楽しみなフランス人たち』(産業編集センター)、『ワインを飲めばすべてうまくいく 仕事から恋愛まで起こる10のいいこと』(インプレスICE新書)。

2018.07.20
column

人気シェフ、ヤニック・アレノによる「シャンパーニュと高級パティスリー展示会」

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7月8日(日)、9日(月)の2日間、シェフのヤニック・アレノが提唱者となっている試飲会「Salon des Champagnes et des pâtisseries fines」が行なわれた。バカンスシーズンが始まったばかりのパリ。住人は長期バカンスに出かけるため街並みは徐々に静かになり、しかし中心部は世界各国からの観光客でより一層にぎやかになる。フランスではワインの試飲会は収穫が終わった晩秋から晩春にかけて行なわれることが多いので、夏の試飲会は比較的珍しいと言えるだろう。

ヤニック・アレノといえば、パリの「パビヨン・ルドワイヤン」、クールシュヴェルの「オテル・シュヴァル・ブラン」でミシュランの三つ星をもち、フランス国内のみならず中東やアジアでもレストランを展開する超有名シェフ。先月「パビヨン・ルドワイヤン」の中に日本人の寿司職人が握るモダンな寿司バー「ラビス」を開店。また、来月8月末にはワインショップ併設のビストロをパリ7区に開くという。フランスでは『ヤム・マガジン』というシェフ向けのハイレベルで美しいビジュアルの料理雑誌も刊行している、名実ともにフランス料理界のトップランナーである。


試飲会は、アレノのメインレストランである「パビヨン・ルドワイヤン」のイベントスペースで行なわれた。シャンゼリゼにほど近いにも関わらず、別世界のように静かな環境。高級店はさすがにインテリアも美しく、試飲もエレガントな気持ちで楽しめる。

今回の試飲会の特徴は、中央のブースで人気パティシエ10名のデモンストレーションがな行われていたことである。ワインに関してはシャンパーニュに特化されており、グランメゾンからRMまで33メゾン、165銘柄が出展された。

シャンパーニュ フィリップ・ゴネのシャンタル・ゴネ


ジョゼフ・ペリエのクレール・ジェネスタル

来場者に関しては、初日が一般客用、2日目が酒類・レストラン業界プロ用となっていた。来場者数は合計で1800人との発表。一般客の入場料は35ユーロ(約4,600円)と決して安くはないが、人気パティシエのお菓子が食べられ、シャンパーニュが(試飲ではあるが)飲み放題となれば、その価値はある。なお、デモンストレーションを行なったのは大御所のピエール・エルメを筆頭に、ヤン・クーブラーやカフェ・プーシキンのニナ・メタイエ、KLパティスリーのケヴィン・ラコットなど菓子業界で注目される人気パティシエが揃っていたので、お菓子マニアの来場も多かったのではないかと想像できる。


私が会場にいたときには「オテル ル・クリヨン」のパブロ・ジクエルがデモを行なっていた。ターンテーブルでデコレーションをするのはフランスのメディアで最近流行りのプレゼンテーション。実際のキッチンの現場で使われているのかどうかは不明である。


会場ではお菓子のイラストを得意とする水彩画家のキャロル・ジロットが、デモで作られたばかりのお菓子のイラストを即興で仕上げていくパフォーマンスを行なっており、イベントに華を添えていた。ジロットは日本にも店を構えるフォンテーヌブローのパティスリー「フレデリック・カッセル」のカタログイラストも手がけている。

ワインの試飲会にパティスリーのデモを加えるのはエンターテインメント性が出て楽しい半面、ずっとイベントが行なわれていて騒がしいためシャンパーニュの試飲に集中できないという面も否めないと感じた。ただ、一般向けにはワインのみだと来客層が限られてしまうため、異分野の組み合わせはよいアイデアだ。この企画は今後も続くそうで、取り上げるワインのアペラシオンを変えて行なっていくそう。次回は、いかなる組み合わせで来場者を楽しませてくれるのだろうか。

Text:Eriko Yoshida
カバー画像:Salon des Champagnes et des pâtisseries fines