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柳忠之

日本在住/ワインジャーナリスト

ワインジャーナリスト。ワイン専門誌記者を経て、1997年からフリー。専門誌のほか、ライフスタイル誌にもワイン関連の記事を寄稿する。ワイナート本誌ではおもにフランス現地取材を担当。

2024.12.23
column

環境再生をアーティスティックに解決する
ペリエ ジュエの革新的取り組み

ペリエ ジュエが10年前から取り組んでいるリジェネラティヴブドウ栽培(環境再生型ブドウ栽培)が新たなフェーズへと踏み出した。世界的なクリエーターの力を借り、美的要素も取り入れて環境再生の取り組みを図る。そのアートプロジェクト「コアビターレ(Cohabitare)」とはなにか?

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創業当初から自然とアートと深い関わりをもち、アール・ヌーヴォーの巨匠エミール・ガレがメゾンの最高峰「ベル エポック」のボトルに描いたジャパニーズ・アネモネ(秋明菊)がそれを象徴するように、つねに自然とアートの融合を意識しているペリエ ジュエ。アートとの結びつきは今日も続き、2012年以降はアーティストたちとのコラボレーションを通じて自然に対するビジョンを実現する。今回、そのパートナーに選ばれたのは、ミラノを拠点に活動するデザインデュオ「ファルマファンタズマ」。アンドレア・トレマルキとシモーネ・ファレジンのふたりが、「コアビターレ(Cohabitare)=共生」をテーマにプロジェクトを推し進めている。

メゾンが所有するブドウ畑の面積は65ヘクタール。24年現在、環境再生型ブドウ栽培を実施中の区画は28ヘクタールで、30年には全面積を転換の予定でいる。そもそも環境再生型ブドウ栽培とはなにかというと、ブドウ栽培というモノカルチャーにおいても、動物相、植物相の多様な生態系を維持することで、気候変動等に起因するあらゆる困難に対し、レジリエンスを発揮する仕組み。具体的には、益虫の棲家となり、土壌の団粒化などに寄与するカバークロップの利用や、鳥などを呼び寄せる生垣や雑木林の植栽などである。

今回は環境再生型ブドウ栽培を実験中のアンボネイの区画で、コアビターレ・プロジェクトを実施。今後数年かけて完成する複合施設は、「バイオダイバーシティ・アイランド(生物多様性の島)」「アセンブリー・グランジ」「観測タワー」からなり、まずは最初に生物多様性の島がお披露目された。

これは複数のブドウ畑の間をさまざまな動物が行き来できるようにした。植物による緑の回廊で、人はその中に入れず、周囲を円筒型のポールがフェンスのように取り囲んでいる。このポールのデザインをしたのがファルマファンタズマ。ポール(彼らはモジュールと呼ぶ)はセラミックで出来ており、中は空洞で表面に小さな穴が空き、花粉を運ぶ昆虫などの棲家や隠れ家として機能する。ただそのような機能面だけではなく、アートとしての美的外観を伴う点が、このプロジェクトの特徴といえるだろう。

プロジェクトの発表に続いて、「バンケット・オブ・ネイチャー by フォルマファンタズマ」と題した、一夜限りのディナーを開催。リストランテASOの沖太一氏がメニューを手がけ、ペリエ ジュエのシャンパーニュとのペアリングを楽しんだ。

そのラインナップは「ベル エポック ロゼ 2013」から始まり、「ベル エポック ブラン・ド・ブラン 2014」「ベル エポック 2015」、そして「ベル エポック フロレサンス 2015」とベル エポックづくし。ロゼからのスタートとは珍しいが、これは料理がオマール海老なうえに、13年という繊細なヴィンテージのため。

ラストの「ベル エポック フロレサンス 2015」は日本限定発売のアイテム。8代目シェフ・ド・カーヴのセヴリーヌ・フレルソンが開花をイメージして造ったロゼで、「クチナシ、菩提樹、バラ、ストロベリー、アプリコットなどの香りがする」とセヴリーヌはいう。

セヴリーヌによれば、24年は春の雨によるベト病のリスクや南部コート・デ・バールの霜害など厳しい年だったが、9月10日から10日間続いた晴天によって救われたそうだ。明らかに気候変動の影響で、「環境再生型ブドウ栽培を推し進めていけば、このようなむずかしい天候の年でも困難を克服できるようになるでしょう」と希望を語った。

[お問い合わせ先]
ペルノ・リカール・ジャパン株式会社
TEL:03-5802-2671
https://www.perrier-jouet.com