
柳忠之
日本在住/ワインジャーナリスト
ワインジャーナリスト。ワイン専門誌記者を経て、1997年からフリー。専門誌のほか、ライフスタイル誌にもワイン関連の記事を寄稿する。ワイナート本誌ではおもにフランス現地取材を担当。

クラウディ ベイのテクニカルディレクター ジム・ホワイト来日記念ペアリングディナー@とうふ屋うかい
ニュージーランドのクラウディ ベイから、テクニカルディレクターのジム・ホワイトが来日。俳優のとよた真帆や一ノ瀬颯をゲストに招き、東京・芝の「とうふ屋うかい」にてペアリングディナーが開催された。

昨年11月から発売が開始されたクラウディ ベイの「ソーヴィニヨン ブラン 2024」。クラウディ ベイこそニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランを世に広めた先駆的ワイナリーであり、ソーヴィニヨン・ブランのベンチマークとして、いまなお揺るぎない地位を占めている。設立は1985年なので今年で創業40年。2024年は40回目の記念すべきヴィンテージとなった。
「40年前はニュージーランドでワインが造られていることすら人々は知らなかった。しかし、オーストラリアのマーガレット・リヴァーでワインを造っていたデヴィッド・ホーネンがこの地を見出した。彼の記憶に残るソーヴィニヨン・ブランを再現できる土地を探して求め、たどり着いたのがニュージーランドのマールボロだ。いまでは世界ナンバーワンのソーヴィニヨン・ブラン・ブランドとなった」と、ジム・ホワイトは語る。
さて、その記念すべき2024年だが、これが一筋縄ではいかないむずかしい年だったらしい。というのも記録的な乾燥に見舞われ、シャルドネとピノ・ノワールは恩恵を受けた一方、適度な水分を要求するソーヴィニヨン・ブランにはストレスがかかりすぎ、綿密な栽培管理と適度な灌漑を最適なタイミングで与えることが必要になったという。
そのようなむずかしい年でもいっさいブレのないワインを造り上げるところに、ナンバーワンブランドしての矜持が感じられる。グレープフルーツやパッションフルーツのシトラス系のアロマに、熟した有核果実のニュアンス。しかし、あたらトロピカルに陥ることなく、清々しいハーブの香りとピュアな酸味がフレッシュ感を盛り上げる。
この日の舞台は「とうふ屋うかい」というわけで、まずはうかい名物の寄せとうふとのペアリング。ソーヴィニヨン・ブランの繊細さが、国産大豆の豆乳と伊豆大島のにがりからシンプルに作られた豆腐に自然とマッチしたのは言うまでもないが、ジムは「テ ワヒと豆腐の相性はすばらしい」と絶賛した。「テ ワヒ」はセントラル・オタゴのピノ・ノワールから造られる赤ワインで、マールボロのピノ・ノワールよりも力強い。そのようなピノ・ノワールとマッチした背景には、一見軽やかに見える豆腐が、じつは濃厚な味わいをもつことによるのだろう。
さらにサプライズとして、ジムが持参した謎のワインがゲストに振る舞われた。その正体は「クラウディ ベイ ソーヴィニヨン ブラン 2006」。2006年は24年とよく似たヴィンテージだとジムは言う。これほど熟成したニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランは未体験。いざ味わってみると、18年の歳月が信じられないほどのフレッシュさを保ちつつ、アーシーな複雑さを重ね合わせたフレーバーに驚きを隠せない。若さを愛でてこそと思われがちなニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランだが、上級キュヴェの「テ ココ」ならともかく、クラウディ ベイのスタンダードなソーヴィニヨン・ブランが熟成ポテンシャルを秘めていることに感心したし、そういう楽しみ方があることにも気づかされた。もちろん、クロージャーはスクリューキャップである。
このイベントを機に「東京 芝 とうふ屋うかい」では、寄せとうふやあげ田楽といった同店の名物料理とクラウディ ベイのワインとのペアリングを展開中だ。
東京 芝 とうふ屋うかい
https://www.ukai.co.jp/shiba/
クラウディー ベイ
https://www.mhdkk.com/brands/cloudy-bay