• Top
  • Column
  • ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティンでのコラボ・…

塚本悦子

日本在住/ワインライター・コーディネーター

ワインライター・コーディネーター。ワインスクール講師を経て、現在はフリー。ワイナート本誌では8号より執筆。産業能率大学通信講座「ワイン資格受験コース」監修。著書に「30日間ワイン完全マスター」(美術出版社)など。

2018.12.28
column

ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティンでのコラボ・ディナー、共演シェフにインタビュー!

  • facebook
  • twitter
  • line

東京・銀座「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」で毎年開催されるコラボレーション・ディナー「Epicurea(エピクレア)」。エグゼクティブシェフのルカ・ファンティンと、世界で活躍するトップシェフとが織り成す、当日限りの料理が満喫できる魅惑のイベントだ。

4シーズン目となった今年のテーマは、「IN & OUT」。ルカ・ファンティン同様、出身国から遠く離れた異国で活躍するシェフにフィーチャーし、ゲスト・シェフとルカの双方がお互いのレストランを訪れ、IN (日本)とOUT(海外)でコラボ・ディナーを開催。11月初旬、「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」では、シンガポールのミシュラン一つ星レストラン「JAAN(ジャーン)」からイギリス人シェフ カーク・ウエスタウェイが来日し、共演となった!

「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のエグゼクティブシェフのルカ・ファンティン(左)と、シンガポールの「ジャーン」ヘッドシェフのカーク・ウエスタウェイ(右)。

3年間ヘッドシェフを務めるカークは、イングランドでの子供時代を想起させる自然なフレーバーに深く根付いた、革新的な料理を構築。“英国を再発明する”という哲学のもと、季節感を重視した現代的で軽やかな英国式ダイニングを体現している。

「イギリス料理とイタリア料理という、一見異なるように思える料理のコラボは、とても好評でした。いま、イギリスではカークのように新たなスタイルを打ち出すシェフが多く登場してきて、イギリス料理自体に対する見解も変化していると思う」とルカ。

一方カークは、「確かにイギリスではいま、モダン・ブリティッシュが増えている。でも、国外に出ると、まだほとんど認知されていない。だから僕はシンガポールで、再構築したイギリス料理を発信しているんです」と話す。

そんな想いのカークが、今回どうしても盛り込みたかったという一皿が、“フィッシュ&チップス”。「半分ジョークなんだけど、イギリス料理で誰もが思い描くフィッシュ&チップスのイメージに対抗したい、との意味を込めたんだ(笑)。使っているデボンチーズは、僕の出身地のもの。デボンは乳製品の産地として有名で、今回バターもデボン産を持ってきました」。

フォラグラと黒トリュフのマカロン、デボンチェダーチーズと蕎麦粉のパンケーキ、フィッシュ&チップスのタルト(by Kirk Westaway)



サンマのブルスケッタ(by Luca Fantin)



トリュフの米粉クロッカンテ(by Luca Fantin)

「カークとは、すでに何度か会っていたから、コラボ・ディナーもスムーズだったよ。今回のメニューを作るにあたり、ふたりでフォーカスしたいと話したのは、日本の季節感や食材。たとえば、カークがロブスターを使う料理を提案したんだけど、ちょうど伊勢海老がおいしいシーズンなので代わりにどうかと勧めたんだ。カークは日本の食材を知らなかったから、すごく喜んで使ってくれたのが嬉しかったな」とルカ。

Eggs in an egg…… (by Kirk Westaway )



ラヴィオリ プッタネスカソースと鮪のタルタル(by Luca Fantin)

「日本の伊勢海老は初めて扱ったけど、皮の中にパンパンに身が詰まっていて、味わいもクリーンでエレガント! 素晴らしい食材だなあと思ったよ。シンガポールでも、今後使ってみたい」とカークも微笑む。

伊勢海老、カボチャ(by Kirk Westaway)



軽くスモークしたエゾ鹿のサルミ 人参のコンシステンツェ(by Luca Fantin)

ワクワク感が半端ない、独創的な数々の料理とともにペアリングで供出されたのは、イタリア各地のワイン。輸入元の協力もあり、ふたりの料理を引き立てるバックヴィンテージも盛り込んだそう。

「実際に今回のコラボを経験して、スタイルやフィロソフィなど、お互いに近いものがあるなと思った。出身地やバックグラウンドが違っても、フレッシュで素晴らしい食材を使い、一緒に作業し、食に対する情熱をコラボ・ディナーの中に共存できたことは素晴らしい経験だった」とカークは熱く語ってくれた。

ふたりのシェフの料理は、上質な食材同士の調和がとれた相互作用を重視し、食材本来の完璧さを尊重した再構築スタイル。だからこそ、イタリア料理やイギリス料理という壁を超え、無理なくストーリーあるコースが誕生したのだろう。

Text:Etsuko Tsukamoto