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塚本悦子

日本在住/ワインライター・コーディネーター

ワインライター・コーディネーター。ワインスクール講師を経て、現在はフリー。ワイナート本誌では8号より執筆。産業能率大学通信講座「ワイン資格受験コース」監修。著書に「30日間ワイン完全マスター」(美術出版社)など。

2019.05.10
column

【潜入レポート】イタリアワインの巨匠・内藤和雄ソムリエ、東北ワインが集うイベント「東北ヴァンダジェ2019」参戦!

イタリアワイン通ならご存知であろう東京・西麻布のイタリアン、ヴィーノ・デッラ・パーチェのディレットーレ兼ソムリエ内藤和雄さん。内藤さんの「日本のワインをもっと勉強したいんだよね」のぼやきから、この日本ワインイベント襲撃計画が始まったのでした。

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冷たい雨が降りしきる3月3日(日)、ちょうど東京マラソンの当日。ランナーたちが次々と銀座の街を駆け抜けていくのを横目に見ながら、会場のreDine GINZAへ。エレベーターの扉が開くと、熱気に包まれた光景が!

東北ヴァンダジェは、東北6県のワイナリーが一堂に集結したワインテイスティングイベント。今年は、34ワイナリーから111種類のワインと東北各地のフード6種類がずらりと並びました。

「もともとは山形の生産者たちの勉強会から発展し、イベントとしては山形ヴァンダジェとしてスタートしたんです。昨年から東北6県へと拡大しました。生産者の方々を含め、東北の風土は本当に温かみがあるので、この空気感を消費者に伝えたかった。だから、ホテルとかでサービスを任せるのではなく、すべてを自分たちで創り上げようと。会場内では生産者が自ら造ったワインを注ぎ、参加者の方々とコミュニケーションを大切に考えています」と、運営スタッフの鈴木純子さんは話す。

早速、内藤ソムリエとともにワインブースへ。せっかくの機会だから、34ワイナリーすべて制覇しようと、内藤さん、気迫がみなぎります!

山形県南陽市でナチュラルワインを造るグレープリパブリックの藤巻一臣さん。頰かむり姿の藤巻さんのイラストがラベルにあしらわれている「Amphora Rosso 2017」は、スペイン産アンフォラを密封し、硅砂の中に埋めて熟成。



青森県八戸市にあるリストランテ澤内のシェフが醸造家を務める澤内醸造。ランブルスコならぬ「南部ルスコ ドライ 赤スパークリング 2017」はキャンベルを自然発酵。



岩手県九戸郡野田村の海が見える丘にワイナリーを構える涼海の丘ワイナリー。野田村産の山ブドウからキレイな酸味のロゼと赤ワインを造る。



宮城県仙台市の秋保ワイナリーの「シレンツォ ロッソ2016」は、イタリアのヴァルポリチェッラで陰干し技法を学んだワインメーカーが造るアマローネスタイルの赤ワイン。



山形県鶴岡市にある月山山ぶどう研究所の阿部豊和さん(右)と兵藤奈央さん(左)。「ソレイユ・ルバン 甲州シュールリー」の澄んだおいしさには定評あり。新商品「マスカットベーリーAペティアン」もすっきりドライでキレイな造り。



テイスティングを通じて見えてきたのは、東北ならではの涼やかさとともに、生産者ごとの個性がじつに豊かだということ。ペティアンや攻めたスタイルのワインなど、自由度にもあふれ、東北地方の造り手たちのエネルギーが否応なしに伝わる。そしてなにより、みなさんが見せる満面の笑顔が印象的でした!

会場を埋め尽くした多くの参加者たちが個性豊かな東北のワインを満喫し、楽しそうに盛り上がっているなか、内藤さんはいつも業界の試飲会で見せているような鋭い眼光で、黙々とテイスティング。その甲斐あって、無事全ワイナリーを制覇完了! テイスティングを終えた内藤さんを直撃すると……。

「ヨーロッパとは違う優しいミネラル感が印象的でした。素直な造りで口当たりがよく、飲み手に馴染みやすい。ワインの完成度の高さにも驚きました。かつての日本ワインは醸造テクニックが前面に出ている感がありましたが、ブドウそのものがより明瞭になり、ブドウ品種やテロワールの個性が見えるようになりました。ヨーロッパのワインに比べると重心が軽く、後半は弱いけど、でも楽しい余韻に出会うとなかなかおもしろいなあ。重心の軽やかさは、日常の食卓に合わせやすいですね。そして、東北のワインは山梨とは違うチャーミングさを感じました。でも、飲み手はまだまだ重いワインを求める傾向が多いんですよね……」。

「印象に残ったワインは?」とうかがうと、「そうだねえ……」といろいろワインを挙げていただきました。

T.W. サン・スフル ルージュ 2016 タケダワイナリー(750ml 2,160円)
「凝縮感があって、タンニンもキメ細やかできちんとした造り。日本人ならではの勤勉さが感じられました」。



Fattoria AL FIORE Ohno Field Blend 2017 ファットリア・アルフィオーレ(750ml 4,104円)
「ミネラルがしっかり伝わってきました。重心が真ん中にあり、食事とのペアリングが期待できるフードフレンドリーなワイン」。



名子山 2017 酒井ワイナリー(750ml 4,320円)
「果実の余韻は甘やかなんだけど、ブドウの質のよさが伝わる健全さがありました。素直に楽しめるワイン」。



Faucon ベーリーA 2018 モンサンワイン(720ml 1,700円)
「気軽に買える価格帯ながら、単にカジュアルというだけではなく、日本ならではのメロウな感じがいい」。



蒼—あおー N.V. くずまきワイン(720ml 2,571円)
「昔ながらのゆるい日本ワインの感じを残しながらも、意外とキレイなワインで、余韻がおもしろかったです」。



などなど。

東北ワインの魅力を改めて再認識した内藤さん。最後にお気に入りワインを2本購入されてお帰りになりました。さて、何を買ったのか? ……それは、秘密です(笑)!

Text & Photo : Etsuko Tsukamoto