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谷宏美

日本在住/フリーランス ライター

エディター/ライター。ファッション誌の美容エディターを経て、2017年よりフリーに。渋谷のワインバー「ローディ」で店の仕入れや現場でのサービスをやりつつ、ワイン&ビューティの分野で取材・執筆を行なう。J.S.A.認定ワインエキスパート。バタークリームとあんこは飲み物。

2019.08.29
column

旬の食材とローヌワインの相性を探る

ローヌワインと夏の食材のマリアージュを考えるというユニークな試飲会を、ローヌの生産者を多く取り扱うnakatoが主催。厳しい残暑が続きそうな折、旬の野菜やスパイスを使った料理とともに、ローヌワインを楽しんでみてはどうだろう。

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会場となった東京・麻布十番のフレンチ「麻布・れとろ」には、スパイシーで豊かなアロマが特徴的なローヌワインとともに、双川洋利シェフによる料理が並んだ。和やエスニックなどの要素も取り入れた創作フレンチを得意とする双川シェフは、対象のローヌワインを試飲した上で、合うと思うメニューを考案。シェフに伺ったレシピのポイントも参考に、マリアージュを検証してみた。

白ワインは
夏野菜とともに

「ローヌの白ワインは夏野菜と楽しんでもらいたい」とシェフが用意したのは以下の3種のオードブル。みずみずしく、彩りも鮮やかな旬の野菜を、爽やかで清々しいハーブやスパイスと組み合わせた。マルサンヌとヴィオニエを中心とした15種の白ワインとの相性を試してみる。

1. ミントをあしらい、柑橘の爽やかさをもったスイカの前菜には、同様の清涼感をもったワインとのペアリングが考えられる。しかしながら、スイカのみずみずしい甘みにホワイトラムを効かせたこの料理に、あえて厚みのあるマルサンヌを合わせてみるのも一興。カリンや洋梨などストーンフルーツのニュアンスともマッチすることがわかる。

2. 香ばしい焼きナスにさまざまなハーブが香るピーマンのクリーミーで濃厚なピュレには、リッチな樽発酵のローヌワイン。中でも、3種のブドウをブレンドしたシャトーヌフ・デュ・パプの白なら、ピーマンの青っぽさや苦み、バラエティに富んだピュレの味わいを、さまざまな樽で熟成した厚みが受け止めてくれる。

3. 食感も楽しいヤングコーンのフリットは、トッピングの刻み新ショウガがマリアージュのポイント。まず新ショウガの鮮烈な清々しい香りが鼻をくすぐり、口に入れるとピリリと、しかしほんのり甘やかな酸味。これは白ワインビネガーとほんの少量の砂糖を振っているため。こうして味わうスパイシーなフリットには、華やかさと甘やかさを併せもったヴィオニエがいい。

赤ワインが
夏の食欲を増進

「スパイシーな肉料理にローヌワインは王道ですが、調理法によっては魚料理もいいと思います」と双川シェフ。そこでイワシとラム肉に、シラーとグルナッシュ17種を合わせてみる。スパイスとハーブの香りが漂い、食欲もそそる組み合わせになりそうだ。

1. イワシというと白ワインに合わせてもよいのだが双川シェフいわく「白だと流れてしまいがち。積極的にペアリングするならぜひ赤で」。イワシと野菜のレシピながら、フォカッチャを用い、さらにたっぷりのハーブ&ガーリックでボリューム感満載。キレイに仕上げたシラーがぴったりだ。ドメーヌ・コンビエの冷涼な単一畑からくるクローズ・エルミタージュは、うっすらと酸味も感じさせ、この料理にベストマッチ。

2. エスニックスパイスを多用した羊の料理とくれば、スパイシーなワイン。グルナッシュは鉄板の組み合わせ。けれどこのミートボールはたたいてサルサ風にしたオクラが添えてあり、青々とした芳しさや苦みも感じさせる。グリーンのニュアンスがトップに来る洗練されたシラーとのペアリングは非常におもしろい。噛めば噛むほど味わいが増すミートボールの複層的な味わいに、余韻の長いレ・ヴァン・ド・ヴィエンヌのソタナムが美しくペアリング。

品種の個性が強く、いずれもキャラクターがはっきりしているため、白ならクリーミーでコクのある野菜や魚介、赤ならジビエと鉄板マリアージュに走りがちなローヌ。けれど個性的だからこそ、意外性のあるペアリングも実現可能となる。造り方によりさまざまな表情を見せるローヌのワイン。気負うことなく、食材によっても楽しめるのはローヌならではだ。自由な発想でローヌワインの魅力を再発見してみては?

レストラン情報:
麻布・れとろ
東京都港区元麻布3-10-12
Tel:03-3478-2666
営業時間:18時〜24時(L.O.)、日休
http://www.web-kumo.com

Text&Photo:Hiromi Tani