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2020.02.10
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【短期連載 第1回】ミラノから車で30分。次に訪れたいのは、フーディ注目のパヴィア

ワイン愛好家にとって、イタリアという国は魅力的すぎる国だ。どこに行っても、何らかの地元ワインにありつけるのだから。 もちろん、人気観光地であるミラノ、ローマ、フィレンツェだってその例にもれません。イタリアの食のトレンド発信地でもあるミラノからほど近いパヴィアの街、そこには美味しいワインと料理、さらに素敵な街並みがありました。連載初回は、米の生産者訪問記をお届けします。

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イタリア経済の中心地ミラノから、南へ40キロ弱。ミラノのベッドタウン・パヴィアは、中世に置かれた大学を中心に発展した街です。アカデミックななかにも若い活気が感じられ、おおらかで居心地のよい雰囲気。じつはいま、このエリアがスローフードなどに関心の高いフーディの間で話題となっているとのこと。そんな情報をもとに、パヴィア市を中心とするロンバルディア州パヴィア県を訪れてみました。

美味しいリゾット、そのワケとは?

 

米どころパヴィアの名物料理、それがリゾット

パヴィアがなぜ、アツいのか? その理由のひとつに「米の生産地であること」が挙げられるようです。同じイタリアのなかでも、南部はパンやパスタなど小麦を原料とする主食がメインですが、北部の人たちは米をよく食べます。いまでこそ、イタリアのどこでも食べられるリゾットですが、もとは北部の料理。その材料となる米は、イタリアではポー川が流れるポー平原で栽培されています。

 

生態系豊かな土地で育まれた、リゾット最適米

ヨーロッパでいちばんの米どころパヴィア県の北西部ロメッリーナ地区は、ブランド米「カルナローリ」の主要産地。栄養価が高く、消化にもよい”ヘルシーな米”として知名度を上げたこの米は、世界の名だたるイタリア料理のシェフに、ご指名でリゾットに使われているのだとか。その生産者のひとつが、サン・マッシモだ。

 

日本の水田のように、水が張られた田んぼ

ここは、ロンバルディア州立のティツィーノ渓谷公園内にある、サン・マッシモ保護地区と呼ばれる特別保護地域。ポー川支流のティツィーノ川がつくる渓谷が育む森林地帯で、2004年からEUの自然環境保護地区に指定されました。区域内にはシカやキツネなど四足動物だけでも500種が生息するという生物の多様性が保持されています。
800haある保護地区は2社で管理されており、そのうちの1社がサン・マッシモ社。彼らの管理する600haのうち、200haを使ってオーガニック農業を営んでおり、とうもろこしや果実などの栽培もする傍ら、「リゼルヴァ・サン・マッシモ」というブランドでカルナローリ米を生産・販売しています。敷地の管理人ディノ・マッシニャーニさんを案内役に、田んぼに出発です。

 

ドライな状態の田んぼ。水がひいてきたら、タイミングを見て引水する

同じ米とはいえども、場所も違えば品種も違うため、日本の栽培方法とはだいぶ異なります。日本では苗を植え付ける田植えが一般的ですが、こちらではドライな状態の田んぼに直接種をまくのだとか。川の水ではなく、さまざまな栄養分の溶け込んだこの土地に湧き出る水を使用。冷たい湧き水(平均水温2度)を広い水路を通すことで、自然に12~17度の水温に上げてから田んぼに引くのだとか。毎年、年明けに田んぼを掘り返し、5月上旬に種まき、生育160~170日くらいで収穫です。目安としては米粒の水分率が30%くらいになったタイミングで、刈り取りが始まります。収穫時の水分率が平均25%とも言われる日本の米よりも、カルナローリ米のほうが、この時点では水分を多く含んでいるとのこと。

 

デリケートな米だけに、パッケージも慎重に。酸化防止のため窒素を充填

このみずみずしい米を1日以内にガス火の乾燥機にかけ、14%の水分量になるまで水分を飛ばします。籾殻を取り、3回の乾燥を経てパッケージング。最終的に水分量を11%まで落とすと、芯の強い米になりリゾットがおいしく炊けるのだといいます。
同社のカルナローリは、100%原種を使用した正真正銘の純正カルナローリ米。非常に繊細な品種で栽培もむずかしい高級ブランド米だけに、類似種も数多く出回っているようで、呼称保護のためDOPも制定されています。

 

イタリア国内だけでも、栽培される米の種類は150品種!

米文化を守ろうと、イタリアでは2015年に“米ソムリエ”なる人材育成と審査機関IRES (Italian Rice Experiment Station)が設立されました。これを立ち上げた栽培家のマッシモ・ビローニさんいわく、43項目の鑑定基準を点数化して官能審査を行うのだとか。米をワイングラスに入れ、見た目、香り、グラスを回して音を聴く、手触りの感触を確かめる。まさにワインのような方法で品質をチェックするというのです。

 

官能検査では、ワイングラスの半分くらいまで米を入れる⁉

ちなみにカルナローリは真珠のような白さで、日本の米よりも少し長め(長さ約7ミリ)。味わいは軽やかな甘みを備えているのが特徴で、「リゾット用としては最高級品だけど、寿司にはまったくダメだね(笑)」とのお言葉でした。

 

リゼルヴァ・サン・マッシモ
https://riservasanmassimo.net

ロンバルディア州立ティツィーノ渓谷公園
https://www.in-lombardia.it/en/visiting-lombardy/natural-parks-in-lombardy/lombard-park-of-the-ticino-valley

IRES
https://www.ires.online/

Photo & Text : Winart
Special thanks to Chamber of Commerce of Pavia & The Italian Chamber of Commerce in Japan