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2020.09.30
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秋の夜長にじっくり味わいたい、アルチザンのシャンパーニュ

シャンパーニュには、1万6000軒の栽培農家、360軒のメゾン(ネゴシアン)、2500軒の協同組合生産者、2000軒のドメーヌがある。日本へのシャンパーニュの輸出量はこの10年で倍になり、2019年には輸出国第3位となり、市場には大手メゾンのラグジュアリーアイテムをはじめ、数多の魅力的なシャンパーニュが並んでいる。ますます悩ましくなるワイン選びだが、だからこそ、真のシャンパーニュ好きが見逃してはならないのが、アルチザンのシャンパーニュである。

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テクニックから
テロワールの追究へ

長い瓶内熟成が、澱からのうま味成分を引き出し、ワインに複雑味をもたらすため、近年はより長く熟成させたシャンパーニュの人気が高い。時間と手間をかけ、ブレンドテクニックを駆使したシャンパーニュは素晴らしいものがある。

しかし、熟成とテクニックに頼るだけではなく、シャンパーニュの土地そのもののテロワールを表現したワインを目指す生産者もいる。その代表格が、90年代に頭角を現したレコルタン・マニピュランのジャック・セロスやエグリ・ウーリエである。彼らは、当初は革新的生産者といわれたが、いまや世界中で取り合いになる存在になってしまったのは、ご承知の通りである。

00年代に入ると、ジャック・セロスやエグリ・ウーリエらに刺激を受けた意欲的な若い生産者が次々と現れた。彼らは、ブルゴーニュのドメーヌのようにシャンパーニュの土地のテロワールを最高の形で反映したワインを造ろうと、志を同じくするグループを形成して情報交換を行なっている。

その中でもとくにテロワールの追究にストイックな職人気質をもつ生産者たちがいる。彼らこそが、アルチザン-Artisans(フランス語で「職人」)と呼ぶにふさわしい職人的栽培醸造家である。

アルチザンたちは、畑のテロワールを最高の形でワインに表現するためにブドウ栽培に心血を注ぎ、長期熟成やアッサンブラージュに頼り切らない、その地ならではのワイン造りを行なっている。すでに実力も人気も兼ね備えた若きアルチザンたちは、第一世代のセロスらのように、またたくまに手の届かない存在になってしまうかもしれない。押さえるなら、いま、である。

 

知っておきたいアルチザン
4生産者

若手アルチザンの中から、世界が注目する4生産者を取り上げる。

1)
シャルトーニュ・タイエ
Chartogne Taiillet

本拠地メルフィはランスの北西に位置する小さな村で、現在の知名度は低いが、18世紀にはグラン・クリュ同等の最高ランクでブドウが取引されていたクオリティの高い土地である。チョークの下層土の上を、砂質を主体に、海抜によって砂岩、粘土、石灰などが厚く覆う。この多様性のある土壌がメルフィの特徴である。

セロスで修業を積み、06年に実家に戻ったアレクサンドル・シャルトーニュは、この地の土壌の多様性に注目した。土壌の専門家に分析を依頼して土壌と品種の適合性を探り、祖先の日記や古い文献からすぐれた畑を割り出すなど、テロワールを尊重した、土地のエネルギーにあふれたワイン造りを行なっている。

アレクサンドル・シャルトーニュ

<おすすめアイテム>

シャルトーニュ・タイエ キュヴェ・サンタンヌ ブリュット N.V.
Chartogne Taiillet Cuvee Sainte Anne Brut N.V.

メルフィのさまざまな土壌タイプの畑のワインをブレンドすることによりメルフィのエッセンスを昇華させ、土地を総合的に表現したキュヴェ。シャルドネ45%、ピノ・ノワール45%、ピノ。ムニエ10%。瓶熟成24カ月。ドザージュ5、6g/ℓ。(6,930円)
https://firadis.net/item/146.html

 

2)
ピエール・パイヤール
Pierre Paillard 

若きアントワーヌとカンタン兄弟が率いるピエール・パイヤールは、ブジーで8代続く名門のレコルタン・マニピュランである。栽培と醸造を担うアントワーヌもアルチザンのひとりとして注目されている。

ピエール・パイヤールの特徴は、グラン・クリュでもっとも力強いピノ・ノワールの産地であるブジーにすべての畑11ヘクタールを所有していること、シャルドネの栽培比率が例外的に高いことである。骨格のしっかりした濃密でパワフルなブジーのワインに、シャルドネがもたらすフレッシュさと上品さが加わることで、グラン・クリュならではの複雑な香りや奥深さをエレガントに表現したシャンパーニュを生み出している。

アントワーヌ・パイヤール

<おすすめアイテム>

ピエール・パイヤール レ・パルセル グラン・クリュ N.V.
Pierre Paillard les Parcelles Grand Cru N.V.

イキイキとした微細な泡、ふくよかな果実味と細かな酸があり、力強さとエレガンスを備えた、ブジーのグラン・クリュらしさを堪能できるシャンパーニュ。ピノ・ノワール70%、シャルドネ30%。瓶熟成42カ月。ドザージュ1.8g/ℓ。(7,920円)
https://firadis.net/category/CHAM_ARTISAN/281.html

 

3)
ジャン・ルイ・ヴェルニョン
J.L. Vergnon 

ル・メニル・シュールオジェ村を本拠地に5世代続く家族経営生産者。02年に醸造責任者に就任したクリストフ・コンスタンにより栽培・醸造の根本的な改革が行なわれて以来、じわじわと品質を上げ、近年は大きな注目を浴びている。

クリストフが目指すのは、メニルのシャルドネの鋭い酸と硬いミネラルを抑えるマロラクティック発酵を一切行わないが、完璧に熟したブドウを使用することで、早い段階からおいしく飲めるシャンパーニュである。ドザージュを最小限に抑え、美しい酸とミネラルを最大限に引き出した、ピュアで力強いクリアな味わいが魅力で、メニルの気品を感じさせてくれる。

クリストフ・コンスタン

<おすすめアイテム>

ジャン・ルイ・ヴェルニョン コンベルサシオン ブリュット N.V.
J.L. Vergnon Conversation Brut N.V.

直線的な酸から来るよい緊張感のあるイキイキとしたアタック。グレープフルーツの心地よいほろ苦さ、シャープかつシルキーなミネラル感の長い余韻がある。シャルドネ100%(メニルとオジェ主体、アヴィーズも使用)。瓶熟成36カ月以上。ドザージュ5g/ℓ。(8,140円)
https://firadis.net/category/CHAM_ARTISAN/140.html

 

4)
ドント・グルレ
Dhondt Grellt 

アヴィーズの東端に86年に創立したドント・グルレの2代目アドリアン・ドントは、12年に21歳でワイナリーを継ぎ、仲間との交流を通して独学でワイン造りを学んだ人物である。彼の哲学は、土壌を活かすこと、完熟したブドウを収穫すること、樽を用いた醸造、控えめなドザージュである。

自然酵母でアルコール発酵を行ない、全キュヴェでマロラクティック発酵を実施。二次発酵前の糖の量を抑えることで、鋭角的な酸とミネラルを失うことなく、ワインに溶け込むなめらかな泡を生み出している。若くしてシャンパーニュ専門誌でヴィニュロン・オブ・ザ・イヤーを受賞したアドリアンは、売り切れ必至のアルチザンである。

アドリアン・ドント

<おすすめアイテム>

ドント・グルレ ダン・ザン・プルミエ・タン エクストラ・ブリュット N.V.
Dhondt Grellt Dans Un Premier Temps Extra Brut N.V.

口当たりは非常にクリアでフレッシュ。クリーミーな泡とリッチで力強い果実味が重なり合う奥深い味わい。セザンヌのシャルドネ50%、アヴネイ・ヴァル・ドールのピノ・ノワール30%、キュイのピノ・ムニエ20%をブレンド。瓶熟成20カ月以上。ドザージュ5g/ℓ。(6,930円)
https://firadis.net/item/796.html

 

輸入元:(株)フィラディス
http://www.firadis.co.jp

Text:Mayumi Watabiki