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2021.12.28
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飲まない理由が見つからない。毎日のテーブルに「バイラーダ」のワインを

ポルトガルの隠れた名産地、「バイラーダ」。いま、あらためて見直され、その魅力が再発見される注目産地のひとつである。個性的な品種から生まれるさまざまなタイプのワインは、いずれもユニークかつフードフレンドリー、つまりセラーに常備しておきたいワインが揃っている。そんなバイラーダのワインを身近に楽しむための知識と実践ペアリングを、ポルトガルの料理とワインのエキスパートのふたりが指南。

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■いま、なぜ、「バイラーダ」なのか?

©Comissao Vitivinicola da Bairrada



いま、世界の著名なワインジャーナリストがこぞって注目する産地、ポルトガル。その中部に位置するのがバイラーダ。日本ではなじみが薄いかもしれないが、知れば知るほど興味深く、飲めば飲むほどハマってしまうワインをたくさん造っている産地だ。その知られざる魅力を、ポルトガルワインを知り尽くす別府岳則氏に尋ねた。

「20世紀のサラザール独裁政権下で国交が希薄だったころ、ポルトガルワインのほとんどは国内で消費されていました」。1974年のカーネーション革命、86年にEC(現在のEU)加盟を経て、ポルトガルのスティルワインは世界市場に出回るようになってから、バイラーダでも醸造や栽培の技術が向上し、品質も飛躍的に上がっているという。

西側に大西洋、東にはブサコ・カラムロ山地、南北はモンデゴ川、ヴォウガ川というふたつの川に挟まれているバイラーダ。その地理的条件ゆえ、粘土石灰質を主としつつ砂質も入り混じる複雑な土壌を成す。大西洋の影響を色濃く受け、気候は温暖で多湿。強い海風が畑を冷やすので高い酸も保持するブドウが生まれる。

近年、注目を集めているのが、バガという黒ブドウ。「小粒で果皮が厚く、酸が高くてタンニンも豊富、そして晩熟、というキャラクターの濃い品種で、全房で発酵させ、コンクリートタンクで熟成させるのが伝統的な造りでした」。そこに一石を投じ、除梗したり白ブドウを混ぜたり、収量制限をしたりする革命的な造り手が現れて以降、そのユニークさとポテンシャルが知られ始めている。白ブドウではマリア・ゴメスやアリントといったアロマティックで果実味のある土着品種が多く植えられている。

バイラーダのワインの最大の魅力は? 「こうした土着品種を主体にしたブレンドで、食事と合わせやすいこと」。さまざまな品種が入り、いろいろな要素を合わせもつことで素材や調理法を選ばず幅広く対応できる。重箱の隅をつつくような相性探しをせずとも、目の前の料理と気軽に楽しむことができるのが嬉しい。また、バイラーダは高品質なスパークリングワインの産地としても知られ、ポルトガルの瓶内二次発酵製法のワインの6割あまりを造っている。いずれのワインも、その品質に比して驚くほどのコストパフォーマンスを誇り、バイラーダのワインを飲まない理由がもはや見つからないほどなのだ。

■おなじみのメニューでペアリングを実践

「肩ひじ張らずに楽しめるバイラーダのワインを、もっと身近に楽しんでほしい」と力説する別府氏。そこでポルトガル料理研究家の柴田奈津実さんに、いつもの食材で簡単に作れるペアリングメニューを考案していただいた。天ぷらやサラダ、煮込みなどおなじみのレシピに、ほんの少しだけポルトガルのエッセンスをプラス。デイリーの食卓にはもちろん、おもてなし料理としても喜ばれる簡単料理を、大西洋の海風を感じながら楽しんで。

【ペアリング1/スターター】

タコの天ぷら&タラのかき揚げ
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バイラーダのスパークリングワイン

日本人の国民食である天ぷらとかき揚げ。このルーツがポルトガルにあることはよく知られている。ポルトガルは日本同様に世界有数の魚介消費国で、大西洋で獲れるタコやタラ、イワシなどが日常的に食べられており、食事の最初にはシーフードの天ぷらがポピュラー。こうした揚げ物に、キリッとした酸のあるスパークリングワインは鉄板だ。

◎作り方/タコの天ぷら
タコ足を開いて、〔塩・コショウ、ニンニクのみじん切り、レモン汁〕でマリネし、小麦粉を薄くつけ、とき卵にくぐらせて揚げる。

◎作り方/タラのかき揚げ
タラに塩を振ってひと晩置き、水分をふきとって適当な大きさにほぐす。粗みじんにしたタマネギとイタリアンパセリとともに、〔小麦粉、とき卵、塩・コショウ〕を混ぜ合わせた衣に入れてまとめ、揚げる。

▼合わせたワイン

マルケス・デ・マリアルヴァ バガ ロゼ ブリュット N.V.
アデガ・デ・カンタニェーデ
Marquês de Marialva Baga Rosé Brut N.V.
Adega de Cantanhede

品種:バガ100%

マルケス デ マリアルヴァ ブラン・ド・ブラン ブリュット N.V.
アデガ・デ・カンタンニェーデ
Marquês de Marialva Blanc de Blancs Brut N.V.
Adega de Cantanhede

品種:ビカル60%、アリント40%

いずれもスター醸造家オズヴァルド・アマドが手がける瓶内二次発酵のスパークリングワイン。バガのほろ苦さがアフターにくるロゼ、酸がシャープなブラン・ド・ブランともに泡はおだやかながらイーストの味わいが感じられ、完成度の高さがわかる。

【ペアリング2/前菜】

鶏肉とパイナップルのサラダ
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バイラーダの白ワイン

鶏肉をヨーグルトで味付けし、パイナップルを添えた彩りもキレイなごちそうサラダ。ブレンドされたバイラーダの白ワインは、みずみずしくてアタックが柔らかく、飲み疲れることのない優しい味わい。さらにアルコール度数の低いものも多く、サラダに限らず、あらゆる種類の前菜やスターターに寄り添ってくれる。

◎作り方/鶏肉とパイナップルのサラダ
〔ヨーグルト、ハチミツ、マスタード、オリーブオイル、レモン汁〕をよく混ぜ、茹でてから手で割いた鶏胸肉にあえる。ベビーリーフを敷いた皿に盛り付け、5ミリにスライスしたパイナップルをあしらい、クルミをトッピングする。

▼合わせたワイン

キンタ・ド・ヴァルドエイロ ホワイト 2019
カーヴェス・メシアス
Quinta do Valdoeiro White 2019
Caves Messias

品種:アリント、ビカル、シャルドネ
アルコール度数:11.5度

白い花やカリン、アプリコットのアロマ。アタックは柔らかく、すっきりとフルーティな果実味。

アリアンサ バイラーダ レゼルヴァ ホワイト 2020
Aliança Bairrada Reserva White 2020

品種:マリア・ゴメス、ビカル
アルコール度数:13度

キンモクセイの華やかなアロマ、ハーブの爽やかさ。心地よい酸とアフターの塩味のバランスが秀逸。

【ペアリング3/メイン】

ラムの赤ワイン煮
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バイラーダの赤ワイン

ニンニクとハーブとスパイスでマリネしたラムに赤ワインを加えて、オーブンに入れるだけ。手間いらず&見栄えよしでおもてなしにもぴったりのレシピ。滋味深く、複層的な味わいの煮込みは、さまざまな品種がブレンドされた赤ワインと好相性。ハーバルなアロマと収斂性、柔らかな果実味を合わせもつ赤ワインで寒い夜をホットに過ごそう。煮込み料理の付け合わせに、ゆでた菜の花とジャガイモを添えるのがバイラーダ流。

◎作り方/ラムの赤ワイン煮
ラムを食べやすいサイズにカットして、〔ニンニク、タマネギ、クローブ、イタリアンパセリ、ローリエ、パプリカパウダー、赤ワイン、塩・コショウ〕で一晩マリネする。厚手の鍋に入れて蓋をし、160度のオーブンで3時間加熱する。。皿によそい、ゆでた菜の花とジャガイモを添える。

▼合わせたワイン

アリアンサ・バイラーダ・レゼルヴァ レッド 2020
Alianca Bairrada Reserva Red 2020

品種:バガ60%、ティンタ・ロリス30%、トウリガ・ナシオナル10%
アルコール度数:12.9%

濃いガーネットの色合い、熟したベリーやヤマモモのニュアンス、コショウやクローブのスパイスにコーヒーのアロマ、キレのいいタンニンと豊かな果実味。

別府 岳則/Takenori Beppu
WIne in Motion代表。レストラン、輸入会社、ワインショップを経て独立し、ポルトガルはもとより世界各国の産地の協会や生産者のプロモーションに携わる。ワインスクールほか各所でのセミナー講師もこなし、豊かな知識と経験に基づくレクチャーや差配に定評がある。WSET®Level 4 Diploma、AWMBオーストリアワイン大使、ポートワイン・コンフラリア カヴァレイロ 、J.S.A.認定ソムリエ。



柴田奈津実/Natsumi Shibata
ポルトガル料理研究家。大学卒業後、フードコーディネーターのアシスタントを務めながら
ポルトガルに通い、郷土料理を学ぶ。兵庫県有馬のポルトガル料理レストラン「A COMILONA 堂加亭」のシェフを経て、ポルトガル料理をベースとした料理のケータリング、レシピ提供、料理教室などで活動。2018年に再びポルトガルに渡り、レストランで働きながら料理と文化の研鑽を深める。
公式ブログ:http://veronica82.exblog.jp
Instagram:https://www.instagram.com/veronica723

Photo:Tetsuo Kitagawa
Text:Hiromi Tani