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2022.02.07
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イタリア・ヴェネト州の名だたる白ワイン、ソアーヴェ。代表的生産者ピエロパンの軌跡をたどる

ソアーヴェの名門ピエロパンは伝統を尊重しながらも革新を続け、新たな地平を切り開いてきた。世界的名声を築いた父レオニルド亡き後、4代目のアンドレアとダリオ兄弟がさらなる躍進の歩みを進めている。

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初代レオニルド・ピエロパンが、所有していたカルヴァリーノの畑のブドウからワイン造りを始めたのは1860年のこと。ソアーヴェ村の医者であった彼は、当時造られていた飲みやすいだけの軽い白ワインに満足せず、ボディーが堅固で重要なソアーヴェを造ろうとした。そのためにブドウの陰干しを試み、レチョート・ディ・ソアーヴェを誕生させた。

高品質を目指すというピエロパンの哲学は創設時から一貫している。初代レオニルドがワイン造りを始めたのはソアーヴェ村の中心にあるパラッツォ・プッリチで、この15世紀の建物が長年ピエロパンの醸造所兼自宅だった。

ピエロパンの名声を世界的なものにしたのは初代の孫であるレオニルドだった(イタリアは祖父の名前を長男に付ける習慣がある)。コネリアーノ醸造学校で栽培と醸造を学んだレオニルドは在学中の1966年からワイナリーの運営に携わる。

彼はまず優れた区画に自社畑を買い増した。当時のイタリアでは農家からブドウを購入してワインを造る生産者が多かったが、高品質ワインを造るには栽培を自ら行なうことが重要だと考えたのである。おかげでピエロパンは50ヘクタールのブドウ畑をすべてクラッシコ地区(優れたワインが生まれる丘陵地帯)に所有している。

レオニルドは他のワイン産地を訪ねて、知識を深めた。そして、新しい醸造技術を導入し、早飲みのデイリーワインと思われていたソアーヴェを改革する。60年代に摘房を始めたことも当時としては革新的だった。

「当時、白ワインは1年以内に飲みきるものと思われていました。また国際品種がブームだったので、土着品種でしかも長期熟成能力の高いワインを造ろうと考えた父は変人と思われていました」と話すのは、レオニルドの息子で栽培を担当しているアンドレア。醸造担当の弟ダリオとワイナリーを運営している。

兄のアンドレア(右)が栽培を、弟のダリオが醸造を担当する。


ソアーヴェに単一畑の概念を導入したのもレオニルドだ。71年に玄武岩と凝灰岩の火山性土壌の畑カルヴァリーノからソアーヴェ・クラッシコ・カルヴァリーノを誕生させる。78年には石灰土壌の畑からソアーヴェ・クラッシコ・ラ・ロッカが生まれる。ラ・ロッカは当時のソアーヴェでは珍しかった樽熟成を導入し、しかもやや遅摘みをするという新しいスタイルのワインだった。

「いまではソアーヴェを代表するワインとして有名になったラ・ロッカですが、最初は理解されませんでした」と、アンドレア。ただ80年代に入り、イタリアワイン全体が高品質化する中で、ピエロパンのソアーヴェの優美さと驚くべき長期熟成能力に注目が集まり、ピエロパンはソアーヴェを代表する生産者として高い評価を得るようになった。 

99年にはイッラージ渓谷に20ヘクタールの土地を購入して、赤ワインへの挑戦を始める。「ガルゾン山の標高400~500メートルの何もなかった土地にブドウを植えました。南向きの素晴らしい畑にコルヴィーナ、コルヴィノーネ、ロンディネッラ、クロアティーナ・ヴェロネーゼなどを植えて、ヴァルポリチェッラ・スペリオーレとアマローネを造っています。周りの自然を尊重して有機栽培です」。

トレニャーゴ村にある18世紀の屋敷ヴィッラ・チポッラを購入し、醸造所として改装した。「私たちのソアーヴェの特徴である優美さと繊細さを、赤ワインにおいても追求しています」。

残念ながら2018年に亡くなった父レオニルドが強く望んだのが新醸造所の建設だった。「15年にソアーヴェのブドウ畑に囲まれた素晴らしい土地を見つけました。周りの環境に配慮して、地下に埋もれた新醸造所を建てました」 。18年から醸造をしているが、正式なオープニングは22年春になる予定だ。 

第4世代のアンドレアとダリオも革新に取り組み、さらに品質を高めようとしている。醸造と瓶詰め時に窒素補填をし、酸素との接触を避ける還元醸造をすることにより、ワインのアロマがさらに鮮明になった。スクリューキャップの導入など勇気ある選択も行なっている。「新醸造所は広いスペースがあり、機能的な醸造、熟成を行なうことができます」。

優美で、洗練されたピエロパンのスタイルにさらに磨きがかかっていくことだろう。 

■ソアーヴェ&アマローネ

ソアーヴェ クラッシコ ラ ロッカ 2019
Soave Classico la Rocca 2019 

熟した洋梨、パパイア、マンゴーの華やかな香り。味わいは豊かで、なめらかな口当たりだが、酸がしっかりして、ボディーは引き締まり、持続性がある。甘美でありながらも、とてもフレッシュ。ガルガーネガ100%。10月末まで収穫を待ち、完熟したブドウだけを使用。2,500ℓのセメントタンクで発酵。2000ℓと500ℓのオーク樽で、シュール・リー状態で12カ月間熟成。ソアーヴェの新たな可能性を知らしめたワイン。(5,060円)

アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ 2015
Amarone della Valpolicella 2015

ダークチェリー、プラムを想起させる香りにスパイシーなニュアンスが混ざる。清潔感あふれる優美なアロマ。香りも味わいもアマローネにしては涼しげで、フレッシュ。酸がしっかりしている。まさに優美なピエロパン・スタイル。コルヴィーナ60%、コルヴィノーネ、ロンディネッラ、クロアティーナ35%、オセレータ、トゥルケッタ、コルビネッラ5%。長期間ブドウを陰干しした後、23~24℃で発酵。500 ℓ樽で24~36カ月熟成。(8,580円/輸入元:ともにフードライナー)

Text:Isao Miyajima