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2022.06.30
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クリーンでフードフレンドリーなワイン、ここに在り! 知っておくべき山ワイン産地、アルト・アディジェとは?

アルト・アディジェといえば、昨今のトレンドでもある「山ワイン」の産地。ユニークな風土と歴史をもつこの産地のワインの魅力を、いま知っておかなければならない理由とは?

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©Alto Adige Wine_Tiberio Sorvillo

雄大なアルプスの麓、南チロルに位置するイタリア最北のワイン産地、アルト・アディジェ。オーストリア、スイスと国境を接し、優雅なリゾート地としても名高いドロミティ渓谷や美しいガルダ湖を有する、イタリアきっての眺望絶佳なエリアとして知られる。

オーストリア領だった歴史が長いこの州は、ゲルマンの文化が色濃く生活に根ざしている。ブドウ栽培の歴史は古く、多くの固有品種が植えられているが、国際品種でも成功している。白ブドウはピノ・ビアンコやピノ・グリージョ、シャルドネなどいずれもクリーンでフレッシュ。クラシックで堅固ながら、キレのよさと華やかさを併せもっているのが特徴。ケルナーやゲヴェルツトラミナーなどのアロマティック品種も高品質だ。黒ブドウは柔らかなタンニンとペッパリーな風味のあるスキアーヴァ、力強いワインに仕上がるラグレインと、タイプの違うふたつの固有品種を知っておきたい。

主要白ブドウ品種はピノ・グリージョ、ゲヴュルツトラミナー、
ピノ・ビアンコ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、
黒ブドウはスキアーヴァ、ラグレイン、ピノ・ネロなど。
©Alto Adige Wine_Florian Andergassen

州の面積の多くは山岳地帯でブドウ畑も標高200〜1000メートルの山あいに広がっている。しかし北側にアルプスを臨むアルト・アディジェでは、冷たい山の風が遮られ、亜地中海性気候のガルダ湖周辺から温暖な空気が流れ込んでくる。さらに年間を通して充分な日照時間があるため、ブドウがしっかりと成熟する環境にある。ブドウ栽培に適した気候と風土に恵まれ、伝統を重んじる勤勉な気質の生産者たちが造るワインは、キレのいい酸と硬質なミネラル、さらに果実味を備えた品質の高さを誇り、あらためて見直されているのである。

アルト・アディジェの年間生産本数は約4000万本。
その98%はDOC(統制原産地呼称)で、
DOC AltoAdige (= Sudtirol) 、DOC Alto AdigeLago di Caldaroなどがある。
©Alto Adige Wine_Florian Andergassen

アルト・アディジェのワインを知っておくべき理由のひとつに、昨今の食のトレンドにマッチするフードフレンドリーな側面が挙げられる。ベーコンを燻製にしたスペックに、柔らかな舌触りでいつまでも飲み続けることのできるピノ・ビアンコでアペリティーヴォを楽しむのが定番。ジャガイモや魚をミンチにしたクネーデルや、オーストリアの伝統料理である仔牛のシュニッツェルなどには、ミディアムボディのスキアーヴァが合う。また、熟成にバリックを使ったラグレインはガストロミックなメイン料理にぴったりだし、素材を生かしたミニマムな味付けで調理されるイノベーティブキュイジーヌにもまた、アルト・アディジェのピュアなワインは見事なマリアージュを見せるだろう。

海外渡航がまだままならない中、風光明媚な情景が浮かぶアルト・アディジェのワインと料理を合わせて、アルプスに思いを馳せてみてはどうだろう。

アルト・アディジェ
ワイン×家庭料理
実践例

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アルト・アディジェのワインをさまざまな料理に合わせて活用するシェフに、
ペアリング例とそのポイントを語ってもらった。

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本格的イタリアンと、誰もが慣れ親しんだ日本の家庭料理を、ワインとともに楽しめる「オトナノイザカヤ中戸川」。国内外のイタリアンで修業を積んだ店主の中戸川弾は、アルト・アディジェを訪れてそのワインに親しんだ経験から、和食とイタリアン双方に合わせられる汎用性の高いこの地方のワインをオンリストしている。「アルト・アディジェというと、まずその美しい山や森の木々、澄んだ湖の光景が目に浮かびます。清々しくて酒質の柔らかな味わいのワインは、イタリア料理にはもちろん、ほっとするような家庭の味にもしっくりくるんです」。

アルト・アディジェのワインに合わせるメニューとして考えてもらったのは、白魚と乾燥豆を使ったリゾーニ(米の形をしたパスタ)と、シイタケに黒七味をアクセントにしたつくねを詰めた通称〝たぬき焼き〞。和の素材をイタリアの山中で食べられる川魚やハーブに見立てたり、滋味深いの肉をキノコと合わせてスパイシーに仕立てた一品は、いずれも不思議なほど、北イタリアの山のワインと同調する。

日本と北イタリアはともに豊かな自然に恵まれ、アルプスも日本の山も共通する雰囲気があると中戸川は感じている。家庭でアルト・アディジェのワインを楽しむなら、ピノ・ビアンコやソーヴィニヨン・ブランとシンプルな野菜のお浸しや山菜のクルミ和えなどはすごくよく合うし、これからの季節はアユもおすすめだという。ミディアムボディの優しい赤には、出汁で味わうカモの治部煮や、カツオのたたきなどもよいだろう。「山の食文化という点では、自然が芽吹く時期は野草や山菜を使ったり、冬になると保存のために素材を干したり塩漬けするなど、似ている部分も多い。日本の家庭料理にアルト・アディジェのワインはとても興味深いペアリングなんです」。

■ペアリング例_1

ピノ・グリージョ 2019
J. ホフスタッター
Pinot Grigio 2019 J. Hofstätter

白魚とひたし豆の
リゾーニ

白魚のうま味と出汁でもどしたひたし豆のほっくりした凝縮感に、鮮烈な実山椒がアクセント。散らした木の芽のハーバルな香りも相まって、初夏の山の味覚を味わえる。シラスの茹で汁とニンニクを効かせたスープに米でなくパスタを使ったリゾット風料理に、爽快な味わいのピノ・グリージョがマッチする。

About Wine
老舗ワイナリーが手がける清らかでキレのいいピノ・グリージョ。グリーンを感じさせるアロマに柑橘のニュアンス、口に含むと酒質は柔らかく、アフターにほのかな苦みがある。初夏の野山を思わせる素材と好相性。ステンレスタンクで6カ月熟成、アルコール度数13.5%。

■ペアリング例_2

ラグレイン 2018
サン・パウルス
Lagrein 2018 St. Pauls

シイタケのつくね詰め

山芋をつなぎにした鳥つくねを肉厚のシイタケに詰めて焼いた気取りのないメニューに、ブラックペッパーのニュアンスのある濃厚すぎないラグレインを合わせて。つくねにはネギやショウガとともに黒七味を効かせてスパイシーに仕上げ、ジューシーな肉汁のうま味とソフトなタンニンの赤を堪能できる。

About Wine
アルト・アディジェで重要な役割を果たす協同組合が造るラグレイン。黒コショウとともに香る控えめなスミレのアロマ、柔らかなタンニンが優しい飲み心地。樽を使わないクリーンな造りで日常のテーブルにぴったり。

■お話を聞いた人

中戸川 弾/Dan Nakatogawa
「オトナノイザカヤ中戸川 」オーナーシェフ。
イタリアで修業後、都内イタリアン数店のシェフを歴任したのち、
居酒屋をコンセプトにした店を2013年にオープン。
心地よく酔いたい大人の酒場として客足の絶えない店に。


オトナノイザカヤ中戸川
住所:東京都渋谷区上原1-33-12 ちとせビル2F Dan Nakatogawa
TEL:03-6416-8086
OPEN:1:30~14:00(L.O.13:00 土日のみ)、17:00~23:30(L.O.22:30)
※日曜17:00~22:30(L.O.21:30)
月定休、不定休あり
https://www.nakatogawadan.com

※2022年7月31日(日)までの間、アルト・アディジェワインを提供する飲食店向けのプロモーションを
関東・関西の飲食店で展開中。
詳細はこちら → https://winart.jp/29804

Photo : Yosuke Owashi
Text : Hiromi Tani