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2022.06.23
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古典的スタイルでソアーヴェの真価を示す

名門ベルターニ社は伝統的スタイルのアマローネで知られるが、ソアーヴェの造り手としても100年の歴史を誇り、古典的スタイルのソアーヴェは高い評価を得ている。COO兼統括エノロゴのアンドレア・ロナルディに話を聞いた。

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3種のソアーヴェにみる
先駆的ワイナリーの矜持

フランスで最先端のワイン造りを学んだベルターニ兄弟が故郷ヴェローナに戻り、ベルターニ社を創設したのは1857年のこと。1860年に当時としては画期的な辛口赤ワイン「セッコ・ベルターニ」をリリース、大成功を収めた。ヨーロッパ諸国だけでなくアメリカにも輸出され、高品質ワインとしての地位を固める。その功績が認められ1923年にサヴォイア王家から王家の紋章をボトルに記してもよいという許可を得た。

ベルターニ社を代表するもうひとつのベストセラーがソアーヴェだ。1930年代にすでに国際的名声が高く、映画「英国王のスピーチ」で有名なイギリス国王ジョージ6世の戴冠式(1937年)の昼食会に唯一のイタリアワインとして使われるなど、こちらも破格の扱いを受けていた。

 

イタリアワインが英国王室の戴冠式に使われることは稀で、
ベルターニのソアーヴェが高い名声を誇っていたことがわかる。

 

「当時はまだアマローネは知名度が低く、ソアーヴェとセッコ・ベルターニがワイナリーの顔でした。ベルターニ社はソアーヴェを瓶詰した最初の生産者のひとりで、いまでも力を入れています」と話すのは、COO兼統括エノロゴのアンドレア・ロナルディ。「ソアーヴェは石灰土壌と火山性土壌が複雑に混ざる優れたテロワールです。イタリアらしい偉大な白ワインが生まれる産地なのです」。ベルターニ社のソアーヴェは古典的スタイルで、テロワールが鮮やかに浮かび上がる。

 

アンドレア・ロナルディ / Andrea Lonardi
ベルターニ社のCOO兼統括エノロゴ。1974 年ヴァルポリチェッラ生まれ。
ボローニャ大学卒業後、モンペリエビジネススクールで博士号取得。
ワシントン州、ソノマ、ラングドックで経験を積む。2012年からベルターニ社で腕を振るう。

 

「3種類のソアーヴェを造りますが、それぞれが明確な個性をもっています」とアンドレア。

ソアーヴェ2021はフレッシュで、勢いのあるワイン。青リンゴ、柑橘類、ピーチの香りが爽やかで、飲みやすく、後口に残るかすかな塩味がとても心地よい。「毎日楽しめるように、あえてシンプルで、飲みやすいワインに仕上げていますが、平凡ではありません。快活な果実味、イキイキとした酸、適度の塩味というソアーヴェの個性をちゃんともち合わせています」。アペリティフにも最高だし、ヒラメやカレイなど白身魚のカルパッチョ、生ハム、サラミなどにもよく合うだろう。

ソアーヴェ〝セレオーレ〞2020は柑橘類のニュアンスがさらに強くなり、レモンやライムを感じさせる。シャープな味わいで、塩味が強い。「畑はモンテ・トンド区画にあり、ちょうどソアーヴェ城の南に位置しています。ソアーヴェ・クラシコ丘陵地帯の南端で、白い泥灰土の土壌です。シャブリに似た塩っぽい、鋭角的なワインが生まれます」。白い花を想起させるフローラルなアロマがとても優美だ。エビ、カニなどの甲殻類との相性が抜群で、魚介類のサラダ、鮨、天麩羅とも最高である。石灰土壌のソアーヴェを代表するワインである。

〝ソアーヴェ・ベルターニ〞ヴィンテージ・エディション2020はまったく異なる個性をもつ。より熟した果実を感じさせる香りで、黄桃、アプリコット、黄色い花のアロマが魅力的。口中でもボリュームがあり、丸みのある豊かな味わいだ。「このワインにはソアーヴェ・クラシコ丘陵地帯の西端にあるコステッジョーラの畑のブドウを使います。伝統的ペルゴラ仕立ての古木です。土壌は黒い玄武岩で、火山性土壌がより凝縮感のある、濃厚な味わいを生みます」。

シャープで鋭角的なセレオーレとは対照的に、包み込むような豊潤な味わい。スズキなど脂ののった魚のロースト、鶏肉料理、ウサギの煮込みなどによく合うだろう。「複雑なので、しっかりした食事と一緒に楽しんでほしいワインです。大きめのグラスで、温度も12 度ぐらいまで上げてもいいと思います」。熟成が進むとリースリングを想起させるペトロール香が出てくるそうだ。こちらは火山性土壌のソアーヴェを代表するワインで、テロワールの違いが鮮やかに表現されている。

このヴィンテージ・エディションはジョージ6世の戴冠式の昼食会に出された1930年代当時のスタイルを再現したワインでもある。「あの時代のイタリアでは白ワインも3日~1週間ほどマセラシオンするのが普通で、ベルターニでもそうしていました」。いまはワインの酸化を避けたいので、全体の40パーセントは普通の白ワイン醸造を行ない、残りの60パーセントは発酵前に3~5度という低温で、3、4日間クリオ・マセラシオンを行なう。「ガルガーネガはアロマティック品種ではないので、果皮からさまざまな要素を抽出することによりワインは複雑になります」。ただ「伝統のよい部分は復活させますが、そのまま真似るのではなく、つねに現代的視点で見直す必要があります」とも話す。ベルターニ社の確固たる伝統は、たゆみなき革新に支えられている。

「ベルターニ社は1930年代にふたつの異なるスタイルのソアーヴェを造っていました。シャブリ・スタイル(現在のセレオーレ)とラインガウ・スタイル(現在のヴィンテージ・エディション)で、すでに石灰土壌と火山性土壌の異なるテロワールを表現していたのです」。

 

村の中心にあるソアーヴェ城。
その南に位置する丘陵は白い泥灰土の土壌で、
シャープで、塩味の強いワインが生まれる。

ベースのソアーヴェはフレッシュで気楽に楽しむことができる爽やかなワイン。セレオーレはシャープで、清冽なソアーヴェである。ヴィンテージ・エディションは豊かで、ふくよかなソアーヴェだ。それぞれが産地のもつ可能性を見事に示す。

「ソアーヴェは偉大な潜在力をもつ産地で、まだまだ伸びていくでしょう」とアンドレア。ベルターニ社のワインはまさにソアーヴェの真価を示している。

 
 

■ワイン1

Soave 2021
ソアーヴェ 2021

ガルガーネガにトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェをブレンド。ステンレスタンク発酵後、同じくステンレスタンクでシュール・リーの状態で約4カ月熟成。フレッシュで、軽やかで、活気あふれる若々しいソアーヴェ。すっきりとして爽やかなワインなので、アペリティフ向き。前菜とも最高。(参考価格 2,198円)
https://lamoitalia.com/shopdetail/000000000701/ct750/

 

■ワイン2


Soave “Sereole”2020
ソアーヴェ“セレオーレ” 2020

ガルガーネガ100%。7500ℓのフレンチオークの大樽で発酵、シュール・リー状態で翌年の3月まで熟成させる。引き締まったワインを造るためバトナージュはしない。シャープで、厳格で、強く塩味を感じさせるソアーヴェ。余韻の長さが印象的。甲殻類、鮨、天ぷらなどとの相性が抜群。(参考価格 2,662円)
https://lamoitalia.com/shopdetail/000000000702/ct750/

 

■ワイン3

“Soave Bertani”
Vintage Edition 2020
“ソアーヴェ・ベルターニ”
ヴィンテージ・エディション 2020

40%のブドウは9月に収穫、白ワイン醸造を行なう。残り60%は10月初めに収穫、発酵前に3、4日間低温でマセラシオン。熟した果実を感じさせる豊かな味わいは火山性土壌のソアーヴェの特徴。しっかりとした料理と時間をかけて楽しみたい。( 参考価格  4,587円/7月上旬入荷予定)
https://lamoitalia.com/shopdetail/000000001401/ct750/
 

[お問い合わせ先]
モンテ物産株式会社
TEL:0120-348-566
https://www.montebussan.co.jp/

 

Text : Isao Miyajima