
シャブリの多様性を音楽で表現! 楽曲「シャブリ・シンフォニー」演奏会レポート vol.1
毎年、さまざまな試みでシャブリワインの魅力を発信しているブルゴーニュ委員会。今年は、4つのアペラシオンが織り成す多様性を音楽で表現。作曲家の松波匠太郎が4種類のシャブリをテイスティングし、インスピレーションを受け作曲した楽曲「シャブリ・シンフォニー」の演奏会が開催された。

「シャブリ・シンフォニー」の会場となったのは、東京・池袋にある自由学園明日館。1921年、フランク・ロイド・ライトの設計により建設され、現在は国の重要文化財指定を受けている瀟洒な洋館で、窓から視界に入る前庭の緑が美しい。まるでピュアなシャブリの雰囲気とリンクするかのような清々しさだ。
まずはホールで、松波匠太郎の楽曲作成のためにテイスティングナビゲーターを務めた銀座レカンのシェフソムリエ、近藤佑哉によるシャブリセミナーからスタート。その後、場所を講堂に移し、世界で活躍する4人の演奏家による演奏を、4つのアペラシオンのシャブリをテイスティングしながら鑑賞。さらに食堂では、各アペラシオンのシャブリと料理のペアリングランチを満喫。さまざまな方向からシャブリの魅力を体感した。
そこで、当日の様子を3回にわたりレポート。vol.1では、プティ・シャブリとシャブリに的を絞り、紹介する。
■プティ・シャブリ
1944年に政令で制定。標高230〜280メートルの丘陵斜面の高地台地に畑が存在している。総面積は1230ヘクタールで、シャブリ全生産量の19%を占める。土壌は、ほかのアペラシオンとは異なるポートランディアン期の石灰質土壌。硬い石に覆われ根が深くまで入り込めないため、フレッシュ感ある若飲みワインが誕生する。
楽曲制作のために松波がテイスティングしたのは、ドメーヌ・ビヨー・シモンのプティ・シャブリ2019。
「色調はグリーンがかった淡い黄色。もぎたてのレモンや青リンゴ、ハーブの香り。フレッシュな酸とイキイキとした果実味で、チャーミングな印象です」と近藤。
このワインをテイスティングした松波が最初に感じた印象は、溌剌さや軽快さ。「軽やかで明るく、若々しい溌剌さが魅力です。楽曲のメインの楽器はバイオリン。溌剌さを表現するために、ピッチカーブやスタッカートを多く取り入れました」。
説明を聞いた後、ワインを飲みながら改めてプティ・シャブリのパートの演奏を聴くと、まさに溌剌としたプティ・シャブリの個性を体全体で感じとることができた。
その後の料理とのペアリングでは、「五島イサキのマリネ イチジクとシトラスのジュレ・エディブルフラワー」に合わせ、アルベール・ビショ―、ドメーヌ・セギノ・ボルデの2020年のプティ・シャブリが供された。
爽やかさの中に凝縮感ある恵まれたヴィンテージだけに、添えられたイチジクとのバランスも絶妙だ。
■シャブリ
1938年に政令で制定。総面積は3712ヘクタールで、シャブリ全生産量の66%と生産量はもっとも多い。大部分はキンメリッジアン期の石灰質土壌の斜面。数年間の熟成ポテンシャルもある。
楽曲制作のために松波がテイスティングしたのは、ドメーヌ・ラロッシュのシャブリ・サンマルタン2019。
キュヴェ名の「サン・マルタン」は、当時シャブリに派遣された修道士がワインを醸造し、その名声を築くのに大きな影響を与えた修道院「サン・マルタン・ドゥ・トゥール」にちなんだ名前。
テイスティングで松波が感じたのは、普遍性。「バランスよくオーソドックス。親近感があり普遍的。プティ・シャブリより優美で柔らかいのと同時に、ピュアさも感じられました。メインの楽器はピアノです」。
ワインを飲みながら生演奏を聴くという、贅沢な時間を満喫。楽曲で感じられる柔和さと、ワインの風味が混然一体となり五感を刺激する、いままでにない体験だ!
料理とのペアリングでは、「茄子のテリーヌ 蝦夷アワビのコンフィ」に合わせ、ドメーヌ・デ・マランドのシャブリ アンヴェール・ド・ヴァルミュール、ジャン=マルク・ブロカールのシャブリ・サント・クレール ヴィエイユ・ヴィーニュ。いずれも2020年。
柔和で程よい凝縮感あるワインと、ナスの食感、アワビのうま味が見事に融合した。
……vol.2では
シャブリ・プルミエ・クリュとシャブリ・グラン・クリュについて、ご紹介!
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楽曲「シャブリ・シンフォニー」の音源は、以下のリンクから視聴が可能。
同ページでは、松波・近藤両氏による、トーク形式の試飲解説付きバージョンも映像で見ることができる。
https://bit.ly/chablis_symphony_link
同コンサート映像版フルバージョン(6分)はこちら:
https://bit.ly/コンサートフルバージョン
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Text : Etsuko Tsukamoto