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2022.07.27
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シャブリの多様性を音楽表現!
楽曲「シャブリ・シンフォニー」演奏会レポート vol.2

毎年、さまざまな試みでシャブリワインの魅力を発信しているブルゴーニュ委員会。今年は、4アぺレーションが織り成す多様性を音楽で表現。作曲家の松波匠太郎が、ソムリエの近藤佑哉とともに4種類のシャブリをテイスティングし、インスピレーションを受け作曲した楽曲「シャブリ・シンフォニー」の演奏会が開催された。vol.1に引き続き、今回はシャブリ・プルミエ・クリュとシャブリ・グラン・クリュについて、紹介する。

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■シャブリ・プルミエ・クリュ

1967年に政令で制定。総面積は778ヘクタール、シャブリ全生産量の14%を産出する。土壌は、キンメリッジアン期に形成された石灰質土壌の斜面。スラン川右岸、左岸の日当たりのよい40のクリマからなり、シャルドネがクリマごとの多彩な特徴を表現している。

楽曲制作のために松波がテイスティングしたのは、ドメーヌ・ダニエル・ダンプ・エ・フィスのシャブリ・プルミエ・クリュ・コート・ド・レシェ2019。

「左岸のクリマのコート・ド・レシェは日当たりがよく、土壌は粘土が多く程よい保水ができつつも、38度くらいの急斜面で水捌けもいい。ただ、左岸なので日の当たらない時間もあり、寒暖差のコントラストが生まれます。色調はより強めの黄色。白桃、アプリコット、クミン、コリアンダー、花のブーケなど複雑味ある香りです。なめらかで肉厚なテクスチャーながら、酸が一本しっかり通っています」と近藤。

このワインから松波が感じた印象は、丸みやしなやかさ。「より一層スケールが大きくなり、柔らかなテクスチャーが印象的でした。メイン楽器のクラリネットは、音に丸みがある楽器なんです。さまざまな要素が複雑に絡み合う様子を表現したいなと思い、演奏者は大変なのですが、弦をたくさん持って演奏していただいているんです」。

プティ・シャブリのパートの軽快さとは一味違うなめらかで深みある印象が、演奏からも伝わってきた。

料理とのペアリングでは、「低温調理した仔牛のロースト 夏野菜のピューレ 山椒ソース モスタルダ添え」に合わせ、カミーユ・エ・ローラン・シャレーのシャブリ・プルミエ・クリュ ヴォー・ド・ヴェイ2020、ドメーヌ・ジェラー・デュプレシのシャブリ・プルミエ・クリュ フルショーム2018。

「狭い谷の入り口にあり、そこを流れる小川が時折氾濫したため、湿った沼地を意味するヴォー・ド・ヴェイにはフレッシュさがあり、18年のフルショームは華やかさも出ていて、ともにロゼ色の肉とよく馴染むと思います」という近藤の解説に、参加者も皆納得の様子だ。 

■シャブリ・グラン・クリュ

1938年に政令で制定。総面積は101ヘクタールで、シャブリ全生産量のわずか1%の生産量。
スラン川右岸の、おもに南〜南西向きの急斜面の畑で、1日を通して日照を享受できる。シャブリ・グラン・クリュというひとつのアペラシオンの中に7クリマが存在している。

楽曲制作のために松波がテイスティングしたのは、ドメーヌ・ジャン=ポール・エ・ブノワ・ドロワンのシャブリ・グラン・クリュ ヴォーデジール2019。

「グラン・クリュのある右岸は南西向きなので、左岸より日照量が多い。ヴォーデジールは奥まった谷底に位置するため熱が溜まりやすく、もっとも早く飲み頃を迎え、官能的といわれるクリマです。黄金色の色調。香ばしくリッチな香りで、なめらかで優美な味わい。舌をつかむような骨格も感じられます」と近藤。

このテイスティングで松波が受けたインスピレーションは、より深く、輝かしい頂点。「メインの楽器は、落ち着きの中にも威厳があるチェロ。とはいえ、それぞれの楽器が際立ちながらも重合しています。じつは、これまでの3曲が背景として乗っていたりもするんです。溌剌としたニュアンスもありつつ、プティ・シャブリの溌剌とは種類が違い、気品も感じられます」。

グラン・クリュのパートの楽譜の最初には“マエストーゾ”(堂々と!)と載せたそう。ワインとともに演奏を聴くと、さまざまな要素が幾層にも重なり、複雑な余韻へと導かれる堂々たる優美さが、聴覚、嗅覚、味覚から感じられ、まさに至福の官能体験となった!

料理とのペアリングでは、「ホウボウのポワレ 万願寺唐辛子のグリエ 磯香るブールブランソース」に合わせて、ラ・シャブリジェンヌのシャブリ・グラン・クリュ レ・プリューズ2019、ドメーヌ・ウィリアム・フェーヴルのシャブリ・グラン・クリュ レ・クロ2018。

「ミネラリーで凛とした印象のレ・プリューズと合わせると、塩味やミネラルを感じ食材のうま味が引き立つペアリングとなります。一方で、ストラクチャーのあるレ・クロは、ソースを絡めたなめらかな味わいとのバランスが秀逸です」と近藤。

今回のペアリングランチでも、シャブリの多様性と可能性を実感できた。

……vol.3では
楽曲「シャブリ・シンフォニー」にフォーカス!

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楽曲「シャブリ・シンフォニー」の音源は、以下のリンクから視聴が可能。
同ページでは、松波・近藤両氏による、トーク形式の試飲解説付きバージョンも映像で見ることができる。
https://bit.ly/chablis_symphony_link

同コンサート映像版フルバージョン(6分)はこちら:
https://bit.ly/コンサートフルバージョン 

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Text : Etsuko Tsukamoto