大メゾンと軒を並べる 事実上のレコルタン
エペルネのアヴニュー・ド・シャンパーニュといえば、銀座の並木通りのようなもの。そこに2010年、ブティックをオープンした新進のメゾンがある。しかもこのメゾン、自社畑のブドウのみ用いる、事実上、レコルタンなのだ!
数々のグランメゾンが立ち並ぶエペルネの目抜き通り、アヴニュー・ド・シャンパーニュ。シャンパーニュ・A.ベルジェールもその一角にブティックとテイスティングルームを構えている。
もともとはエペルネの南、ヴァレ・デュ・プティ・モラン地区のフェールブリアンジュ村に創業した栽培農家。1949年に3代目のアルベール・ベルジェールが初めてシャンパーニュを生産。現在は5代目のアドリアンが指揮をとる。
父アンドレはわずか6ヘクタールだった自社畑を65ヘクタールに拡大。それでもシャンパーニュの生産量は9万本に過ぎず、もっぱらフランス国内の個人に販売していた。しかし、アドリアンに代わって生産量は35万本まで増加。3年後には42万本に達する見込みで、いまでは輸出が50パーセントを占めるという。
お気づきかと思うが、アルベール、アンドレ、アドリアンと歴代当主のイニシャルはすべてA。だからメゾン名はA.ベルジェールが続く。
65ヘクタールの自社畑のうち35ヘクタールがお膝元のフェールブリアンジュとその周辺のコンジィ、エトージュといった村にあり、ほかにコート・デ・ブランに5ヘクタール、セザネに5ヘクタールの畑をもつ。
マルヌの西にも20ヘクタールの畑があるが、そこで収穫されるブドウは大手メゾンにすべて売却している。A.ベルジェールのシャンパーニュはこれら自社畑のブドウのみから造られ、事実上レコルタンだが、一部の畑は親戚の所有となっている関係でネゴシアンを名乗る。
ヴァレ・デュ・プティ・モランは広義のコート・デ・ブランに含まれ、狭義の意味でのコート・デ・ブランの丘向こうに位置する地区。やはりシャルドネの栽培が優勢で、ノンヴィンテージの「オリジーヌ・ブリュット」でも70 パーセントをシャルドネが占めている。この地区のシャルドネはアヴィーズやメニルと比べると、果実味豊かなスタイルという。
アドリアンの旧友にして販売マーケティングを担当するマキシム・ピエルロによれば、アドリアンの哲学は「泡を造る前に、上質なワインを造ること」だそうで、フェールブリアンジュの醸造施設には、区画ごとに大きさの異なるステンレスタンクやストッキンガーの大樽が並び、造りへの強いこだわりが垣間見えた。
ノンヴィンテージでも最低3年の熟成で、フレッシュネスと複雑みの按配もすばらしい。今後の発展も楽しみなメゾンだ。
■ワイン紹介
写真左)
A.ベルジェール ロゼ・ド・セニエ ブリュット N.V.
A.Bergère Rosé de Saignée Brut N.V.
シャルドネ50%、ピノ・ノワール50%を収穫最終日に摘み、36時間のマセレーション。N.V.だが現行は18年の単一ヴィンテージで、二次発酵前のアルコールは12%。キレイな赤銅色で大きなボリューム感。(9,900円)
中)
A.ベルジェール オリジーヌ ブリュット N.V.(中)
A.Bergère Origine Brut N.V.
シャルドネ70%、ピノ・ノワール20%、ムニエ10%。過去2年分のリザーヴワインを28%アッサンブラージュ。ドザージュは5g/ℓ。フレッシュさと複雑みがバランスよくまとまる。(7,370円)
右)
A.ベルジェール キュヴェ・フルール N.V.
A.Bergère Cuvée Fleur N.V.
花柄のボトルは「人生のお祝いには花束を」とアドリアンの母、ブリジットのアイデア。シャルドネ50%、ピノ・ノワール50%。ドザージュは7g/ℓ。フローラルさに砂糖漬けのレモンピールのアロマが香る。(14,080円)
※年により各キュヴェのセパージュ比率やドザージュに変動がございます。
マキシム・ピエルロ/Maxime Pierlot
1992年、アルデンヌ生まれ。アドリアン・ベルジェ―ルとは、高校の同期。ワイン醸造を学び、ワイン法の修士も取得。2016年断るも、18年に再び請われ入社。販売マーケティングを担当する。
[お問い合わせ先]
株式会社都光
TEL:03-3833-3541
http://www.toko-t.co.jp
Photo : Masahiko Takeda
Text : Tadayuki Yanagi